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2024-09-23

_ プロジェクト・ヘイル・メアリー

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』読了。

八木さんと多分カネゴンさんかなぁ何か取り囲まれて読め読め言われたのでつい買って読んでしまったのだった。いやぁ、素直な性格で良かった。そうでなければこんなおもしろい作品を読まずに人生を終わらせるところだった(囲まれて読め読め言われたので感謝の念より自分の素直さのほうをより重視しているな)。

おもしろかったし相当胸熱。それっぽい科学仕掛けでたった1人で果敢に誰かを助けるために立ち向かう(アンチ・ロマンではないから当然成功するに決まっているからネタバレでもなんでもない)胸熱ものとしては『楽園の泉』に匹敵する(楽園の泉を読んで達成感と書いているが確かにそれが適切だ。要は主人公の心理状態に没入させられるってことだな)。

しかも楽園の泉よりも達成後の状態が不確実過ぎるので、では一体どうなるのか?(ミッションは成功するに決まっているとして)と考えながら読み進めるわけで、なるほど否応なく主人公の思考を辿らざるを得ない。

上巻の中盤あたりはちょっとだれたが、そこを越えると一気呵成だ(序盤が快調過ぎなのかも知れない)。

2作目は読んでないから火星の人としか比べられないが、作家の成長っぷり(著作履歴を後から眺めて楽しめるように意図的に小出しにしたのかも)が筋道立っていておもしろい。

火星の人はなんと言ってもたった一人だから自問自答に皮肉を混ぜてもそれを説明しなければならない。しかし一人だからこそ主人公の思考(というか仮説-検証サイクル)が端的に表出されていておもしろい。しかし論文ではないのだから仮説ー検証を単に書いても意味ないわけだからユーモアでくるみまくる必要があるわけだが、そこに説明が必要となってリズムがどうしても悪くなる。

一方、地球に残った救出作戦側(集団での討論、陰謀、かけひきありの、要は政治)パートは主人公と独立した別コンテキストで進めなければならない。ところがこっちの政治パートもシン・ゴジラ並みにおもしろかったりもするので、ある意味主人公(ユーモア溢れる理屈の人)の不在がもったいない。

という作劇上どうにもならない点をプロジェクト・ヘイル・メアリーでは完璧に止揚して小説として完成させている(しかも抜群におもしろい)のだから凄い手腕(でありアイディアの塊)だ。

というか、火星の人と同じく本質的なおもしろさ=おもしろいネタ(読者の意表を突く(作劇上、次はこういう問題が起きるだろうと予測がついても(そして大体こちらの予想通りに物語は展開する)、作品の性格上、なぜそういう問題が起きるのかと理屈をつける必要がある。ここの理屈のつけ方が抜群なのだ。なるほどそう来たかの嵐である。で、その困難を生じさせる理屈の解決方法としてのメカニズムにそれなりの説得力がある)を次々に出しては問題の発生メカニズムに対して仮説検証、問題への対応方法の仮設検証をユーモアたっぷりに自問自答して行動する(要は実験ノートのメタ・エンターテインメント化だ)のを読むのは楽しい。

堪能しまくった。

プロジェクト・ヘイル・メアリー(アンディ ウィアー)


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