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日々の破片

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2025-04-05

_ エミリア・ペレス

豊洲でエミリア・ペレス。

最近、虎ノ門からトンネルを通って晴海まで進む方法を覚えたのでトンネル通って行く。トンネル抜けた後は夜の未来感と違って極めて現実的な都市風景だがそれほど悪くはない。豊洲への陸橋から見える桜が美しい。

ミュージカルとしか知らずに行ったので、いきなり廃品回収車の脚韻踏みまくりのアナウンスになんじゃこりゃと思う。ある意味廃品回収の物語なのだなと今になって気づく。

法科卒業の写真の後に、彼女の現在が映し出される。明らかに暴力的な妻殺しの夫の弁護を引き受けたらしく文句を垂れながらスクリプトを書く。書きながら文句を垂れて買い物してといううちに歌となり、歩く彼女の後ろから大勢ぞろぞろ歌いながらついてくる。で、ちょっと上から全体を映す。おおー、ちゃんとミュージカル映画になってるじゃん。それも、さあ歌いますぞ! という演出ではなくぶつくさ文句を垂れているのがそのままナンバーになるのは抜群だ(と思ったら、基本そういう調子で、シーンの内心の説明が歌に繋がる作りとなっていて、ミュージカル映画新世代という印象を受けまくった)。

当然彼女が主人公のエミリア・ペレスだと思ったらリタという名前なので??と思いながら観続ける。

当然のように極悪人の夫に対する弁護(が、彼女が喋るのではなく喋るのは見るからに白人の男で、彼女はスクリプトを指し示しながら控えている)は成功し無罪を勝ち取る。

終わった後、会場(記者会見の会場か、無罪モラトリアムの祝賀会場かは知らん)で隣にいる多分あかの他人の女性からタンポンをもらってトイレへ行く。生理用品のトイレへの設置の話がXで炎上しているので、なるほど大変であるなぁと思って見ていると、携帯に着信がある。

「見事だった。が、喋ったのは君ではなく、当然賛辞を浴びるべき君は会場ではなくトイレにいる」

段々彼女(リタ)の立ち位置が明らかになる。極めて優秀な(どう見ても妻殺しの暴力夫を無罪にする)弁護士ではあるが、女性で色が黒いために弁護士事務所の脚本書きとして安い給料でこき使われている。そのため不満が鬱積している。

電話の主に誘拐される。とんでもない嗄れ声の男から、腕を見込まれて依頼を受ける。報酬はケイマンだかジブラルタルだかの秘密口座に200万ドル、経費支払い用にVISAの限度無しカードを渡される(というカードが見えるのはバンコクへ飛ぶためにファーストクラスを注文するところ)。

依頼者は、麻薬王なのだが、本来の自分と冷酷な野獣の自分の二人が存在して、野獣の自分を殺して本来の自分を取り戻すために本来の自分が自認する性へ変わりたいと依頼する。

リタはバンコクで医者から性転換に必要な技術を教わり(ここの歌は快調)、最終的にテルアビブの医者に目を付ける。医者はそんな手術は意味がないことを悟ったからやめさせろと(Ladyと呼びかけながら)歌い、リタは自分が変われば社会が変わる、社会が変わればすべてが変わると(Doctorと呼びかけながら)歌う。この曲、素晴らしい。リタは凄腕のスクリプターだから人を言葉で説得するのは得意という設定が生きている。

リタは麻薬王の元に医者を連れて来る(最終面接?)。そこで麻薬王の妻から何をしているのか? と聞かれる。その後でリタは家族と実に仲良くしている麻薬王の姿を見る。

麻薬王の家族をスイスへ逃がし(妻は最後まで抵抗するが説得する)、麻薬王は抗争で死んだこととなり、手術を受ける。

それから4年後、ロンドンで仕事中のリタは隣に座ったメキシコ人女性が、元麻薬王と気づく。今やエミリア・ペレスとなった元麻薬王は彼女に再び仕事を依頼する。スイスの家族をメキシコへ連れ戻して欲しい。

金持ちになった(とはいえ2億円くらいか?)らしいし、ロンドンでの仕事っぷりを見ても以前よりは満たされているような(ロンドンのほうがメキシコよりは差別的な扱いは受けにくいのかも)リタは、最初は仕事があると抵抗するのだが、結局は折れてメキシコでエミリア・ペレスの生活と付き合うことになる。

二人でカフェにいると、行方不明になった子供を探す女性に、息子の写真を張ったチラシを渡される。リタはまったく興味を示さないが、エミリア・ペレスはチラシを持ち帰る。

ここから彼女の怒涛の行方不明者探索のボランティア活動が始まる。

かっての自分の罪滅ぼしかなぁとか思わないでもないが、家族に対して見せた優しく人情味あふれる野獣ではないほうのエミリア・ペレスの側面が爆発したのだろうと解釈する。だいたい、ヤクザの親分にのし上がれる人間は仲間に対しては人情味あふれた良い奴と相場が決まっているから、その側面が爆発すれば麻薬王時代に築き上げた富の蓄積があればできる相談なのだろう。ちなみに身内には良い奴シーンとして、子供のために買ったアーケードゲーム機をメイド3人が遊んでいるところが後で出て来る。

一方、スイスからエミリア・ペレスの家へ移った家族は別だ。寝付かれない子供にエミリア・ペレスが添い寝すると、子供はパパの匂いだと歌う。この歌も良い。一方妻は檻に入れられた、こうなったら昔の相手と寄りを戻して浮気すると歌う。この不満鬱屈爆発の歌も悪くない。

エミリア・ペレスのボランティアは順調に人を増やし(解決が増えると同時に人手が必要となり失業者に仕事を与えるからだ)有名になってくる。こうなると、自分の富だけですべてをまかなうのは危険極まりない(資金の出所は? と探られたら不味すぎる)から、篤志家からの寄付を募るためにパーティーを開いたりする。控室で、リタはエミリア・ペレスに自分が軽く扱われているように感じる。なぜなら、呼ばれた篤志家が皆、悪人ばかりだからだ。

パーティー会場を見てリタは不満を爆発させる(内心)。かくして、そこにいるのは汚職議員だし、あそこで良い顔しているやつは殺人鬼だし、クソダメだ! と歌いまくるナンバーが始まる。この曲もおもしろい。

エミリア・ペレスはリタを会場で褒め称えるがリタは聞いていない。

エミリア・ペレスは恋に落ちる。行方不明の夫が遺体安置所で見つかったと知らされた女性が、最初笑いだして、次に泣き出して、やっと解放されたと語る、その解放されっぷりに惹かれたのだろう。彼女は夫が生きていたら殺すつもりで隠し持っていた包丁を見せる(最初の登場時には、エミリア・ペレスの正体を知って暗殺しようとしているのかと思った)。エミリア・ペレスはお返しに銀色の拳銃を見せる。

一方、麻薬王の妻はついに浮気相手と再婚することを決意する。それは良いとエミリア・ペレス。だが、子供を連れて行くと言い出したために冷酷な人格が出始める。

新しい夫との家で妻はすべての資産を差し押さえられてカードを止められていることに気付く。

ボランティアの事務所でリタが戸締りをしていると、エミリア・ペレスの恋人がやってくる。エミリア・ペレスが戻るのを待つ間に二人で話していると、お互いにエミリア・ペレスが相手をどう語っているかの話となる。リタはエミリア・ペレスが彼女を愛していることを告げる。一方恋人のほうは、エミリア・ペレスがリタを本当の盟友として感謝していることを告げる。

リタはここで初めて自分が本当に認められていることを知り解放される。このシーンはリタ役の演技がとても良い。それまでの不満たらたらのひがみっぽく内心をしょっちゅう爆発させていたリタが解放されたのがわかる。

が、好事魔多し。パトカーがやってきて、エミリア・ペレスの運転手が殺され、彼女が誘拐されたことを告げる。

追い打ちをかけるようにエミリア・ペレスの指が送られてくる。3000万ドルの身代金を要求される。

リタは誘拐犯からの電話に出されたエミリア・ペレスから従うように言われるのだが、金の用意とは別に電話をかけて凄腕8人を手配する。

ここは良くわからない。誘拐犯は目的達成後に殺すのが当然だから自分の身を守るためなのか、それともエミリア・ペレス奪還には殺人者が必要だからなのか、そもそも凄腕8人を手配できる手配師といつ知り合ったのか(麻薬王時代の仲間? でも基本切っているはずだし、ボランティアで聴き取り調査中に知り合ったギャング?)もわからん。本筋とは関係ないことだが。

誘拐犯の首領は妻の新しい相手だった。いきなり資金を断ったエミリア・ペレスの乱暴さが裏目に出たのだった。

激しい銃撃戦が起きる。リタ、エミリア・ペレス(状態はわからん)、妻、妻の相手の4人が生きていることだけはわかる。エミリア・ペレスは妻に出会った頃の思い出話をする。妻はエミリア・ペレスが夫だと知る。知ってしまえば、愛している(家族にとっては実に良い人間なのは子供のなつき方からわかる)。

が、新しい夫はそんなことは知らないからエミリア・ペレスをトランクへ押し込み、車を暴走させて逃げる。妻は別のことを考えてもみ合いとなり車は横転爆発する。

リタは子供たちに母親が死んだことを告げる。

廃品回収のアナウンスで幕。

傑作だった。


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