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日々の破片

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2017-05-03

_ 歓び組

図書館に行ってトイレに行こうと入り口を出たら多目的ホールの前に黒地波線が見えて、お、と思ったらまさにジョイ・ディヴィジョンの映画をやると書いてある。時間はあと30分で開場だから、これは見たいと、妻に言おうと戻ろうとすると、向こうから手に何かを持った妻がやってくるのが見えた。

はい、これと持っている紙を手渡されると、まさにジョイ・ディヴィジョンの映画のお知らせだった。

プッチーニやジョルダーノと同じくらいジョイ・ディヴィジョンが好きだということを覚えていてくれたのだった(かって、クリスマスジョイ・ディヴィジョンというふざけたブートレグや、イタリアで出たアングラ歌詞集とかプレゼントしてくれたことがある)。

というわけで文句なく観ることになった。

しかし並んでいるのが全員、単に暇つぶしに映画でも観るかという感じの近所の老人たちで、なんでこの客層に対してジョイ・ディヴィジョンなんだと不思議になる(が、もちろん彼らの青春の音楽だった可能性もあるわけなのだが、本当かなぁ)。

以前、元奥さんのデボラカーティス版の映画のビデオを観たことがあったが、こちらは奥さんのほうは引用だけで、そのかわりベルギーのパンク記者やトニーウィルソン、ピーターフックなんかのインタビューがばんばん入るので、ちょっと雰囲気が異なり、どちらかというとイアンカーティスの自殺の原因を癲癇の発作や、クローザーのすべての原因を自分に求める悲鳴のような詩などに求める感じとなっている。

墓にLove Will Tear Us Apartと銘打たれていることを初めて知ったが、今聴いてもやはり素晴らしい。

こちらの映画のほうがシーンを描いているので、マンチェスターというかって産業革命の地が荒廃してそこから新たな文化が生まれるというストーリーを背景において、有名になりたいチンピラバンドが、あまりのチンピラっぷりにクラブに出させてもらえず、しかし腐らずに練習しまくっているうちに、ベースの低音が良く聞こえない(耳のせいか、練習場のせいかはわからなかった)から高音域を鳴らすことにして、それによって新しいサウンドを持つことができたとか、マーティン・ハネットの異常っぷりによるノイズ混入など(アンノウンプレジャーのシーズロストコントロールのスネアの異様な音はジョイ・ディヴィジョンではなくマーティンハネット由来なのだな。他にもギギギーというエレベータ(と知った)の音も)いろいろ初めて知るエピソードが満載でおもしろかった。

特に異彩を放つのがピーターサヴィルで、アンノウンプレジャーのあの優れたアートワークは、単に音楽のジャケットなんだから波だろうと適当になんかの本からぱくって作って、その時点では聴いてもいないし聞く気もない(が、あとから無理やり聞かされてしびれまくった)とか、同じくクローザーでも適当にぱくって作って(あとから墓碑にしたことを悔やんだり)実におもしろい。というか、どうもピーターサヴィルはルックスがデプレシャンの常連のマチュー・アマルリックみたいで好感が持てる。

ファクトリーレコードを最初に買ったのはパイドパイパーズハウスで、確かその時はデュラッティコラムで、次にアンノウンプレジャーだったから(クローザーはニューヨークに遊びに行ったときに買った)、えらく遠い話だ。

ピーターフックが、やたらとマーティンハネットの音をくさすので、なるほど、おれがニューオーダーをまったくおもしろいと思わないのは、こいつらはジョイ・ディヴィジョンの音をおもしろいと思っていなかったからなんだな、と納得してしまった。

JOY DIVISION (デラックス・エディション) [DVD]

その後、千駄ヶ谷のほうへ回ってOKストアだかに行くと、まるで美術館のように順路が決められていてなんか妙な気分になった。スーパーマーケットは現代の美術館だという言葉があったなぁと思い出したが、誰の言葉だったかは思い出せない。

追記)多分クレプスキュールの前身だと思うが、ヨーロッパで発売されたミニLPをDJ(誰か忘れた)がEPで再生して、それが延々と流れる奇妙なシーンがある。トランスミッションかそのあたりの曲だと思う。明らかにおかしいのだが、その極端なツンノメリ感が映画として必要だったのだろう。で、いけないいけない、ヨーロッパの連中はEPのサイズでLPを出すんだと言って回転数を直す。

かってBEFのマキシEPを最初EPとして再生してあまりの極端な速度にこれは間違ったと考えてLPでずっと聴いていたことがあった。それを友人のN君が回転数が違うと指摘してくれたことを思い出した。


2017-05-13

_ コルタサルを読んだ

1970年代に、世界文学に対する御一新と呼べるものがあって、まだ少年だったおれはえらく影響を受けた。

今では昭和の遺物のように思えるから、知らない人も多そうだが、かって、世界文学全集という30冊とか50冊の書籍の塊を居間に並べる文化があった。で、意外ではあるが、それは読まれるものっだったのだった。おれも読んだ。

で、そこにあるのは、セルバンテスやユゴーやドストエフスキー、ポー、メルヴィル、コレット、シェークスピア、モーパッサンといった人たちの作品で、それらは古典ともいうべきものだが、仏と英を中心に独がなぜか少なく、露がそれなりに多く、米もそれなり、伊と西が一緒になって南欧とされ、同じく北欧と一括り、中国が阿Qで、それが世界なのだった。

それは悪くないのだが、そういうのが各出版社から出ていた。

そこに1970年代に殴り込みをかけてきたのが集英社だ(当時は小学館のマンガ雑誌部門みたいな印象で、文学の香りはなかったわけだ)。青い天地の箱に入ったそれは全然違った。

南米がいきなり花ひらいたのだ。

おれは少年だったので、全集を買うわけにはいかないから、そこから選択して数冊を買ったが、驚いた。

ドノソは題からして文学だった。

世界の文学〈31〉ドノソ/夜のみだらな鳥 (1976年)(ホセ・ドノソ/鼓 直)

ボルヘス、マルケス、出るわ出るわ、知らないうちに世界は大きく変わっていたのだ。

イギリスだってもうシェークスピアではない。シリトーだ。長距離走者は孤独に華麗に門出だぜ。

そんな中でフランスも、すでにモーパッサンやコレットやユゴーやバルザックではない! と宣言されていた。死をクレジットで購入だ(ちょっと時代が遡った)。すごい衝撃(でもなくて、先行して夜の果ては旅していた)。とにかくカミュやサルトルですら、古い。今はロブグリエだ。

で、読みまくり(図書館もあるわけだし)世界の広さと近代というか現代の多様性に衝撃を受けまくる。

その中に「石蹴り遊び」という作品があり、えらく面白そうなのだが、なぜか敬遠してしまった。

おそらく、マラルメの賽子の仕組みで、チャプター間で石を蹴って飛び先を決めるような作品を想像してしまったらしい。何しろ読んでいないからわからない。

あるいは、コルタサルという名前から、南米とフランスというこの全集で再発見されまくっている大陸の悪いどこ取りのような想像をしてしまったのかも知れない。

いや、発売時期が折悪しく高校受験と重なっただけなのかも。

というわけで、それから40年がたち、先日本屋で見かけた秘密の武器を手にして、初コルタサルとなった。

秘密の武器 (岩波文庫)(コルタサル/木村 榮一)

映画だ。

すげぇ。

追い求める男には衝撃を受けた。もうなんかすぐに、シンバルが投げ捨てられて転がる。チャーリーパーカーだ。なぜ、バードしか知らないのに、わかるのだろうか? おれの名前はアロイシュ・パーカー、チャーリーだったら良かったのに。だってそれならチャーリーパーカーなんだぜ。

パーマネント・バケーション (字幕版)(ジム・ジャームッシュ)

(キルミープリーズを並行して読んでいるのだが、そちらとの奇妙な同期もあって、よりおもしろい)

秘密の武器は最上級のリヴェットとシャブロルだ。

悪魔の涎はあまり感心しなかったが、にもかかわらず、これに影響を受けてブロウアップされたというのはわかる。

意識の流れと無限文章と人称の自在な切り替えを使って、その結果、異様な客観性が生まれることで、映像的な文章が生まれる。

翻訳も良いのだと思うが、圧倒的だ。

くそ、少年時代に読んでおきたかった。


2017-05-21

_ 汐留に行く

妻と飯食いに出かけたら、目当ての店が改装中でしまっていた。

では神保町でロシア料理でもくおうかと思ったら、駐車スペースが空いてない。

では汐留はどうか? と妻が提案する。中国飯店のカジュアル部門が入っていて、それなりに美味しい(中国飯店のクラシック部門にやたらと好きな店があるのが前提としてある)。

では行くか、と行ったらさっぱりどこに停めれば良いのかわからない。

結局、首都高の駐車場に入れたら、驚いた。4箇所ある出口がすべて右側(車道は下り側)にしかない。だが、汐留のタワー群は左側なのだ。

しょうがねぇなあと面倒だがそのうち一つから出たら、番地がない中華料理店があった、と妻がはしゃぐ。しかし、おれはそれは見損なった。

地上に出ると、異様にさびれていてびびる。はて、これが汐留なのか?

と、中銀カプセルタワービルが目の前にある。網がかかっている。

おお、こんな間近で観られるとは。

入り口にカフセルタワーヒルと、濁点がすべて落ちた板が埋め込まれている。

張り紙がペタペタと、ここはマンシオンです、ホテルではありません、と主張している。まあ、見学してみたくなるからなぁと通り過ぎる。

ふと振り返ると、上の看板にローマ字でNakaginと書いてあることに気づく。今までずっとチュウギン(なんか中部銀行の不動産部門とか)だと思っていた。

それにしても、さびれきったところだなぁと、どうすれば首都高の向こうのタワー群に行けるのか困る。

結局、歩道橋しかないじゃんということになって進むと、途中、首都高をくぐるために数段下がり、首都高をくぐって数段上がるというアドホックな作りになっている。

いかにも昭和っぽい。

交通安全のために信号を全部撤去して歩道橋を作ろう。

で、作り始めて、おや、歩道橋の法定高度では首都高にぶつかるぞ、では少し下げますか、とかやったとしか思えない。何も考えていないのだな?

で、首都高をくぐって上に戻ると別の世界になっていた。今度は、自転車を押して通れるような広さの歩道橋に変わっているではないか。

すげぇ。線路をまたいだ南北格差とかはたまに見るが、高速道路をまたいだ格差というのは初めてだ。というか、駐車場の出口がすべて片側に寄っているのが過去の栄華ということだな。

で、駅舎の遺構の上に建てた駅舎(地下に降りたら遺構を観られるようにガラスで地下を見せていて、先日テレビで見たアッピア街道終点のベルディ劇場みたいだなと思った)を見学したりしてから飯を食う。

というか、出土品とかいってラムネの瓶とか展示してある(妙な形状で小児用の尿瓶かと思った)のがおもしろい。ポイ捨てしたゴミも100年以上たって掘り出せば興味深い出土品になるのだな。

というわけで、なかなかおもしろかった。というか、首都高駐車場が安くて驚いた。

_ 純粋関数型データ構造

アスキーの鈴木さんから頂いた。

おもしろい。しかも難しい。

難しいのは2点ある。

まず本質的に難しいことを書いてあるから難しい(でも、これはOK)。

次にリストがSMLという全然馴染みがない言語だという点。もっとも付録にHaskellで書いたリストが付いているし、馴染みはなくても言語構造が明確なので読むだけなら読めなくはない。(が、練習問題を書いてみようと思っても書けない)。

前提知識としてO記法(というか、O(n)が線形に時間がかかり、O(1)がデータ構造としては望ましく、O(log n)がわりと良い線程度の知識で十分に思えるが、なぜそれがそうなのかはわかることは前提なのだろう)と基本的なデータ構造を知っていることとしてあるが、本当にそれだけで済むかは怪しい気がする。償却のところは何度か読んでいるうちにおもしろさがわかってきたのだが(が、ここで何がおもしろいのかうまく説明できない程度に理解していないことがわかった)、最初、この人は何を書いているのだろう? と感じる程度にさっぱりわからなかった。

というわけで、まじめにすべて読むのはあきらめておもしろそう/理解可能そうなトピックの拾い読みをするわけなのだが、するとおもしろい。個々の章はある程度独立しているので、拾い読みが可能なようになっている。

本気で読むのであれば、教科書として使ってくれる先生の授業を取るか、それなりのメンバーを集めてガチな読書会とかするのが良いのではなかろうか。その一方で何百人いるかはわからないが、普通に読める人には問題を解くことを含めて相当おもしろいのではないかなぁ(おれはそこまではいかない)。

その一方で、内容は原理から入って十分に抽象化して説明されているから、特定のデータ構造を使うときには普通に役に立つように思える。考え方を流用するだけなら命令形で書くこともできる(が、そこにどれだけの意味があるかは別問題で、実用的なデータ構造はライブラリ化されていることが多い)。

関数型には代入という概念がない(といって良いのだと思う)ので書き換えができない。できるのは置き換えと再作成だ。

でもそれによって、ポインタ更新地獄に落ちなくても済むとして、しょっぱなで赤黒木の実装が示される。これはかっこよい。

抽象的な話かと思うと、これこれの場合はメモ化がはたらくので効率が良いといような実用時の話もあったりして、それはそれでおもしろい。なんでも再帰だが、ある時点で以前に行った呼び出しと同じ引数を見つけるとメモから結果を取り出せるのですべてをくそまじめに計算するわけではないというのはおもしろい。副作用が前提の言語ではそうはいかない(すべてをstaticとして記述すればできなくはないはずだ)。

いずれにしても、店頭から消えたら二度と買える機会はないだろうから、読みたい、興味ある、将来的に必要そうな予感などがあったら、さっさと買うべきだとは思う。

純粋関数型データ構造(Chris Okasaki/稲葉 一浩/遠藤 侑介)


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