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日々の破片

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2015-12-01

_ 大人の社会科見学(ポプラ社倉庫見学会)

翔泳社の岩切さんが、ポプラ社の倉庫についてやたらと感心していたので、見学したいなぁとか言っていたら、社会科見学会が開催されることになった。で、参加した。

(背景事情:翔泳社の未来戦略の一環としてロジスティクスの見直しがあって、そこでポプラ社のロジスティクスを利用(実際には法的な問題で倉庫管理会社を別立てすることになったらしいが)することになったというのがあるらしい)

(別の背景事情:物流という切り口から出版の未来を考えるというテーマが参加者に求められていたようだ)

今回知った大人の事情:国土交通省の規制で、ある会社の自社倉庫を他社に利用させることはできない(税務関係かと思ったが、どうも安全のほうの理由らしい)

-以下、覚え書き

数は忘れた。5000種10万冊かな?

大まかな仕組み:製本所から入庫された書籍は次のランクに分離される。

・現時点の超売れ線(ばかすか出て行くのでそもそも倉庫にしまわない)

・Aランク(大量に入って大量に出て行く)-木製コンテナごと倉庫に入れる(取り出し位置には1つ)

・Bランク(それなりに出る)-オリコン(プラスティック製の折りたたみコンテナをこう呼ぶということを知った)に移し替えて倉庫に入れる(取り出し位置に3段。高い位置のコンテナからも取り出せるようにオリコンの手前と奥の面は取り外して横のフックにかけられるようになっている)

・Cランク(あまり出ない)-バーコードラベル付きの位置が決まった棚に積む

・Dランク(ほぼ出ない)-短冊管理

AとBは庫内-出荷所までは自動移動:出荷所でオリコンに集める-オリコンはベルトコンベアに乗りソーターにかけられて出荷先ごとに分離され、それを集めて出庫する

Aランクの出荷用コンテナを見るとなるほど感があった。

ねずみくんのチョッキ (ポプラ社のよみきかせ大型絵本)(なかえ よしを)

とか

クリスマスのおばけ (せなけいこのえ・ほ・ん)(せなけいこ)

A~Cはバーコードリーダ付きハンディターミナルで位置と商品、状態を管理。

出荷指示には書名を使わない。書名は似たものや上、中、下など紛らわしい。A、Bはコンテナの取り出し位置、Cは棚位置で管理。(棚管理を厳密に実施することの重要性。複数個所に同一商品があると、手近な位置から取り出すため、数が合わなくなる)。移動を最小にする順序を指示。

・入庫から出荷用の取り出しまでの速度向上が特に大きそうにみえた。奥の保管庫から出荷位置までのコンテナ移動による補充は高速。

・ソーターが実は肝となっているとのこと

(ソーターは約100口持つ。もっとも日販、東販クラスは1000口以上持つので規模感が全然違うらしい)

ソーターから取り出し用の滑り台は本が傷まないように緩い傾斜となっている(結果として分岐すぐに止まっている本があったりして、なんとなくルーレットでディーラーがチップを集めるのに使う棒を彷彿させる棒を利用して作業していた)

ソーターの作業が一番殺気立っている雰囲気がある。

返品された本は必要となるまでコンテナのまま置いておく。出荷に回すことになった時点で面取りしたり、カバーの架け替えを行う(カバーは補充品としてこれまた大量にある)。

人間が一番いっぱいいて作業しているのは、カバーの架け替えやカバーの汚れ落としの作業所(汚れ落としは特にピンク系が褪色しやすいので熟練の技が必要)。一日5000冊をさばくと言っていたような。

・受注-出荷のターンアラウンドをいかに高速にするか。

・ポプラ社の本は親が子どもに買ってあげるものよりも、子供が自分で小遣い持って書店に買いに来るタイプが多い(ゾロリがそうらしい)。したがって、常に店頭に無ければならない。

きえた!? かいけつゾロリ (かいけつゾロリシリーズ)(原 ゆたか)

・書店の棚は空けることができない。売れたらすぐに補充できなければ他社に取られてしまう

・システム構築はJFE。工場系なので入庫から倉庫入れまではバッチリだったが、出庫のところで意見が合わず、最初ソーターなしの設計だった→ソーターの必要性を力説して実装(正解だった)

・コンテナは極めて高いところまで積んであるため、えらく伸びるリフトを使って降ろすことになる。一番高いところにあるコンテナはフォークを刺す箇所が目視できないので名人芸が必要

・学校図書納入用の本によっては特に頑丈に製本した特別製を用意している(価格に驚いた)。

・冊数確認は目視。重量を登録して量りで数量確認を自動化できるようにしなかったのは残念(日販は刷り毎に重量登録して自動化している)

・3.11のときは高いところでコンテナから飛び出した本があって、コンテナへ戻す作業が大変だった(人間が直接作業することを想定していないコンテナ庫となっているからだ)

その他聞いた話

・木製コンテナのプラスティックコンテナに対する良さ:フォークが間違って刺さっても裂けた時点でわかる。斜めになっても止まりやすい

・図書館について聞いた話: 新刊の購入をスライドさせるというのが正しいとは思わない。その本の存在を図書館で知ってもらうことは重要だ(これはわかる。ポプラ社の本はシリーズでやたらと多いものがある。ゾロリが50巻以上だが、おれが子どもの頃はホームズやら少年探偵団やらが何十巻もあった。すべては買えないから特に気に入ったのは買って、残りは図書館で読んだ。読んでも買うものは買う。そういうことだろう)。むしろ図書館の予算をどう使うかで、地元の書店、出版社から購入するエコシステムが重要ではないか(その考えからいくと、ベストセラーを10冊購入というのはあまり望ましいことではないなぁと思った)。すると司書も地域密着型であるべきではないか。

・ドイツは再版価格維持を国家レベルで守らせている。日本の場合は取次との契約として維持している。ドイツのようにあるべきではないか。

・国会図書館のデータベースの分類キーは国会図書館で閉じている。国家レベルで利用して、その結果として海外への広範な流通を実現すべきではないか(これもドイツはそうなっているというようなことだったような)

#それはそれとしてつるとはなを買ってみた。

つるとはな(つるとはな編集部)


2015-12-04

_ なぜ機械学習といえばPythonなのか

TDでmrknから機械学習の話を聞く会に参加。

家に帰ってからスルーしてはいかんなぁとWEB+DBを買うことになった。

WEB+DB PRESS Vol.89(佐藤 歩)

いろいろ聞いて、どうやらPythonが機械学習のフルスタックを持っている点が大きいということがわかる。

ちょうど、最初にWebアプリケーションのフルスタックを用意したのがRailsだったというのにちょっと似ているのかなと思った。

特に、Array(忘れた。Sequenceかな?)のAPIによる統一が大きいとのこと。それによってCとのインターフェイスが標準化されてモジュールが集まりやすい。

RubyであればNArrayがその役回りを持つのかも知れないが、NArrayは標準ライブラリではないとか。

統計のあれこれが揃いまくっているのが大きくてRが使われているというような話もあった。で、そこまで揃えるのは大変なので、他の言語への移植がされずにRが使われ続けて不幸である(とまでは誰も言ってなかった)。


2015-12-06

_ 新国立劇場のファルスタッフ

舞台がおもしろい。

1幕~2幕は回転する2つのT型の壁の組み合わせで宿屋、井戸端、宿屋、フォード家を表現する。演出家による、シェイクスピアの時代の室内の様子などがわかるのは、フェルメール一派の画しかないので、それを借りるというコンセプトなのだが、実に不思議な雰囲気で実に良い。

ガグニーゼは声も演技も良いのだが、3幕冒頭の独白とか、いまひとつ感動的ではなくちょっと肩透かしを食ったような。なんか、以前すごく良いものを観たのかも知れない。もしかしたら、もっと年寄りが演じるほうが良いのかも。

1幕は比較的退屈なのだが女声重唱は美しい。2幕のどたばたはおもしろい。フォードを先頭に匍匐前進で衝立を襲おうとするところとかうまいものだ。

3幕の婚礼のところは右に列、左に列を作って新郎新婦入場とか構成が好きだ。とにかく、舞台の作りが実に良い。

ラッキーなことにバックステージツアーに当選した。床の幾何学模様が実に丁寧に描かれていることがわかって感心した。小道具も水差しや瓶などはフェルメールの画に合わせて作ったものだそうだ。カゴは今は廃業してしまった籐屋の手作りだそうで30万円とか言っていた。大事に使っているのだろうな。

先週はヴァ・トスカで、今週はヴァ・サージョンだった。


2015-12-12

_ LINQの途中で列挙分を出力する

周回3つ分くらい遅れでLINQをいろいろ試しまくっているのだが、途中で列挙中の内容を見る方法を考え付いた(先日誰かも言っていたので普通に考え付くことらしいが、そこが周回遅れたるゆえんだ)のでメモ。
using System;
using System.Linq;
class Test
{
    static void Main()
    {
        var array = new int[] { 1, 2, 3, 4, 5 };
        Console.WriteLine(array
                  .Where(e => !(Console.WriteLine("elem:" + e) is object))
                  .Where((element, ind) => ind % 2 == 1)
                  .Sum()); 
    }
}

voidはobjectではないというのはおもしろい。ただコンパイル時にわかってしまうからwarning CS0184を喰らうのは嬉しくない。

次に以下のように変えると、LINQが単純に1つずつ関数呼び出しを処理しているのではないことがわかっておもしろい。

        Console.WriteLine(array
                  .Where(e => !(Console.WriteLine("elem:" + e) is object))
                  .Where((element, ind) => ind % 2 == 1)
                  .Where(e => !(Console.WriteLine("elem:" + e) is object))
                  .Sum()); 

単純に関数を1つずつ呼び出せば、elem:1, 2, 3, 4, 5と出力してからelme:2, 4と出そうなものだが、実際には

elem:1
elem:2
elem:2
elem:3
elem:4
elem:4
elem:5

となり、関数呼び出しを一気通貫している。余分な中間リストを作らないように最適化されているのだろう(というか、個々のメソッドは普通にメソッドとして定義されているのだからコンパイル時(かどうかはILを見ればわかるがまだ見てない)にばらしている(のかJITがいきなりそうしているのかは未確認)ということは、属性をうまく使っているということなのだろうか)(さらにJITが走ることを考えると、LINQは相当最適化されているのではなかろうか、というかされているだろう)

_ C#のVoid

なぜC#ではtypeof(void)が問題なく記述できるのだろうか。

でも、System.Voidと書くと、「System.Void は C# から使用できません。void 型オブジェクトを取得するには typeof(void) を使用してください」と怒り出す。

怒るので、上の例だとConsole.WriteLine("elem:" + e) is voidと素直に書くことができない。

しかも、var value = Console.WriteLine("elem:" + e);とも書けない(まあvoidだし)。書けないからtypeof(Console.WriteLine("elem:" + e))とも書けない(追記:いやtypeofはインスタンスには利用できないからそれは当然書けない)。

ではtypeof(void)は一体何の役に立つのだろうか?

というか、そこまでコンパイラでVoidを特別扱いしなくても良いような気がするんだよなぁ。(nullと区別がつかなくなって厄介なのかも知れないけど、JavaScriptですらundefinedとnullを区別したり区別しなかったり(仕様が無駄に複雑になっている気がしてきたから、そういうのを避けるためかな)している)

で、typeof(void)は何のためにあるんだろうか? (isやasがVoidを特別扱いで無視しているんだから、typeof(void)も無視で良いと思う)

ベルセルク コミック 1-37巻セット(三浦建太郎)

_ 無駄な定数定義

asとisをいじくっているうちに、厳格なSIerが作りそうなヘッポコ定数定義クラスを思いついた。
namespace Great.SIer;
//たくさんのusing
public static class NullConstants
{
    public static readonly string NullString = null as string;
    public static readonly ArrayList NullArrayList = null as ArrayList;
    public static readonly List<string> NullStringList = null as List<string>;
    // あと5000行くらい続く
}

で、裸単騎のnullの利用は禁止で、必ず上から適切なnullの利用を強制する。

C#言語仕様の7.10.11 as演算子には次の記述がある。

型がdynamicではない場合、演算E as Tの結果は次の式と同じになります。
E is T ? (T)(E) : (T)null

だが、:の後ろの式の(T)は不要で、E is T ? (T)(E) : nullで問題なく動作はする。仕様書なので厳密に定義したのだろう。

これにヒントを得て、nullの代入に必ずキャストを必要とすると、相当な手間となる。

それで、上のような素晴らしく厳格な定数定義が生まれることになった。


2015-12-13

_ アンジェリカの微笑み

オリヴェイラが102歳だか103歳だかのときの作品。

いつもどういう映画が出てくるかどきどきしながら観るのだが、こいつもびっくりものだった。

大雨の通り。写真館の看板。向うから車が来る。停まる。ヘッドライト点けっぱなし。傘をさして初老っぽい男が出てくる。傘さしてないのと同じくらい濡れているように見える。写真館の呼び鈴。ちょっと離れて窓を見る。何も起きない。呼び鈴。ちょっと離れて窓を見る。何も起きない。呼び鈴。窓の電気が点く。ゆっくりと近づく人影。窓があいておばさんが見える。忘れた名前館から来た。奥様が写真を撮ってほしいと言っている。今かい? もう遅いよ。今だ。ちょっと留守にしててね。帰ってからで良い。今ポルトに行っているから帰るのは明後日だよ。

ここまでほとんどひいて長回し。いきなり映画が全開で面白すぎる。

会話に割り込む男。写真家がいる。石油会社に勤めているが趣味で写真を撮る(それでいいのか? と思いながら見ているのだが、どうも写真が普及していないようだが、時代感覚はどこにもない)。それで良い。

車走り出す。ショパンが流れている。多分例によってピリスだろうなぁと思うと、エンドクレジット見ていたらやっぱりピリスだった。

下宿屋以外の何ものにも見えない部屋。若い男が机に向かってすごいピーガー音の中で作業している。ラジオを作っているのかなぁ。ときため楽音が流れるが基本的にホワイトノイズが流れ続ける。下宿のおばさんが入って来て、写真を撮って欲しいと言っていると告げる。断る。時計。(そうだ、ここで3時過ぎだとわかる)なんとか家は大きな家でどうしたこうしたとおばさんがポリティカルなことを言い出すので承諾する。でっかなカメラケースを肩から下げて出て行く。

大雨の町の中を車が走る。労働者の像(最後のダッシュにも出てくる)。坂。屋敷。

尼僧が迎える。妹が死んだ。母が写真を求めている。

イザクと名乗ると困惑される。家はキリスト教で。その姿が尼僧だということはわかる。宗教は気にしない。それは良かった。

抱きかかえられてアンジェリカの夫が向うから来る。

アンジェリカの化粧を整えている母親。

ケースから取り出したカメラは小さな2眼レフ。暗いから電球を取り換えろ。

女中が取りに出て行く。

女中が戻って来て電球を渡す。イザク電球を取り換えようとシェードの中に手を入れる。手を引き離す。ポケットからハンカチを出してそれを使って取り出す。暗くなる。ハンカチごと女中に渡す。電球を替える。電気がつく。カメラを構える。ここまでほとんど1ショット。シャッターを切る(フラッシュを焚かないのだが……)えらい集中力。

ファインダー越しにピントを合わせる。

何枚目かで、ピントが合うといきなりにこりと微笑むアンジェリカ。ホラーだったのかと初めてわかった。

驚くイザク。しかし回りは気付いていない。

写真を次々と取って(それまでと違ってピント合わせに時間をかけない)、いきなり立ち去る。(どこかで女中がハンカチを返し、それをしまう)

翌朝。現像した写真を干している。1枚の写真を見ているとアンジェリカがいきなり微笑む。窓を開けると、向うの丘を耕す農夫が見える。

下宿のおばさんが食事を持ってくる。

農夫の写真を撮って来る。なぜ? 鍬で耕している。今は機械の時代よ。だからおもしろい。(その前におばさんに対して、このへんの農作業は鍬なのか? というような質問をしている)

音頭取りが先に畝の先に行き、おれのシャツは白いが臭いみたいな歌を歌う。他の農夫がくさーいというように合いの手を入れながら耕して進む。

イザクがやって来て写真を撮る。最後、丘から降りてくる農夫を一人ひとり写す。その都度、農夫たちがポーズを取るかのように映画は表現する。

ここまで、すべての映像がかっちり決まり、映画として表現されている。すばらしい。(そしてこの後もそうだ)

鐘の音で向うの教会に気付く。教会の入り口に乞食がいる。神のご加護を。ポケットから小銭を出して与える。アンジェリカが礼拝堂に置かれている。出てくる。乞食が無心する。さっき渡しただろうと怒ってどかせる。神の報いを。

夜。窓辺に立つと、アンジェリカが上から降りてくる。二人でそのまま飛び上がっていく。背中を合わせた状態で空を飛んでいる。池の上すれすれを飛んでいるところで手を伸ばし花を取る(この花はその前にどこかで手に入れたものに似ている。どこのシーンだったか?)。花を背中越しに渡す。浮遊シーンはモノクロ。背中合わせの浮遊は、シャガールの誕生日の画を思わせる。

ベッドの上で目を覚ます。

立ち上がり、こちらを向いて「あれが話に聞く絶対空間というものか」

(なんだそれは。でもこれで納得したらしい)

農夫の写真も現像してアンジェリカの写真の次に吊られていく。

イザクはどんどんやつれていくらしい。映像では良くわからないが、朝食を取る下宿人たちの食堂での会話からそう表現される。食堂には鳥籠があり、小鳥がいる。おばさんがアンジェリカの写真の横に汚い農夫の写真があるのはおかしいと他の下宿人に愚痴を言う。イザクを執事に紹介した右手前の博士がイザクを弁護する。

イザク入って来る。おはようみなさん。コーヒーカップを取り、カメラに近づき、こちらを向いたまま(つまり食卓には背を向けて)コーヒーを飲む。異様な構図だが、この後何度も出てくる。花瓶の花が浮遊中に摘んだ花だと気付く。

下宿人の1人の仕事仲間が入って来る。他の下宿人と含めて、反物質の話となる。

イザクはそれを聞いているが、背を向けて立ったまま(つまりこちらを向いたまま)進行する。

他の下宿人は食堂を出て行く。あの人変わっていると、仕事仲間が言う。

イザク、見本の写真を封筒に入れて館を訪問する。まず教会へ行く。乞食に金を渡す(ここはずっとロング)。出てくると乞食、近寄ろうとするがやめる(最初のときとの連続性)

(追記:このあたりのどこかで、アンジェリカの写真が農夫の写真の間に吊らされるように位置が変わっていることが示される。そのため、埋葬(もちろん土葬)の写真のように見えなくもないし、映像的な違和感を生む)

玄関。呼び鈴。出て来ないのでちょっと外す。女中頭が戸を開ける。誰もいないので閉める。イザク戻って来てまた呼び鈴。女中頭が憤慨して出てくる。入ろうとするのを押しとどめてつっけんどんに封筒を受け取る。戸を閉める。

農夫のトラクター作業の撮影。

ベッド。いきなりアンジェリカと叫ぶ(ここだっけかな?)

窓を向くと誰もいない。こちらを向くとアンジェリカが降りてくる。2回繰り返し。

執事が写真の注文が決まったと言ってきたと下宿のおばさん。食事を摂らずに出る。

門から中へ入ろうとするが、アンジェリカの夫を認めて左へ去る。

呼び鈴。こちらを向いてアンジェリカと叫ぶ。

別の門に掴まってアンジェリカと叫んでいると女中が忘れた封筒を持ってやってくる。

小鳥が部屋の中を飛ぶ。

食堂。小鳥が死んでいる。おばさんが大騒ぎしながら布にくるむ。

イザクが入って来る。みなさんおはよう(これは3回目。2回目はローザとおばさんしかいないのに、みなさんおはようと言うので、ローザにみんなはいないとたしなめられる)。鳥籠が空なのに気付く。小鳥は? 死んだ。小鳥が死んだ! 唐突に駆けだす。猛ダッシュで町を走る。労働者の像の横を走る。教会の脇を走り去る。乞食が近寄ろうとしたときには去っていくので定位置に戻る。走る。車1台分の坂を走る。途中で休んでいる農婦があたまがおかしいようだと話す。いつものブドウ畑のところだと思うがで倒れる。子供の歌声。集団登校中の子供たちが気付く。大変だ。知らせてくるから落ち着けと大きい子供。

救急車。

モノクロで下宿の室内。入口方向から窓へ向けてカメラ。右がベッド。イザクが寝かされている。

なぜ病院に連れて行かなかったのかと医者をなじるおばさん。ここで良いのだよ、わたしがちゃんと見るから、と医者。何か世話することは? 専門の看護婦を呼んだから戻ってくれ。おばさん、いやそうに消える。

イザク起き上がる。窓にアンジェリカが来ている。医者がベッドに戻そうとするのを突き飛ばす。医者のメガネが吹っ飛び、医者は床に屈んでメガネを探す。イザク窓に近寄り、崩れた倒れる。そのまま幽体は歩いて窓に近づき、アンジェリカと共に今度は普通に抱き合って上昇していく。

看護婦がやってくる。遅くなってすみません。遅かったよ。

下宿のおばさんと看護婦で白い布をかける。おばさん、十字架を上に乗せる。

最後、農夫の歌でおしまい。(その後はショパンとなる)

後期ショパン作品集(ピリス(マリア・ジョアン))

抜群におもしろかった。とにかく構図が映画で、これが長回しというものだという動きがあり物語が進む映画で(雰囲気の長回しではない)、映画を観る楽しさに満ち溢れている。満足した。

・おれは牡丹灯籠のような幽霊においでおいでされる話だと思って見ていたが、一緒に見ていた友人は、幽体離脱中に埋葬されてしまう悲劇と解釈していて、そこもおもしろかった。確かに、そうとも読めるなぁ。

・乞食、食堂、おばさんの文句など常に同じ繰り返しで描く日常(なので、記憶に基づいて再構成してみると2回目のシーケンスで起きたのか1回目のシーケンスで起きたのかわからなくなっている箇所がある)

・繰り返しを突然断ち切る「アンジェリカ」という叫び(あまりに唐突に入るので笑ってしまうのだ)

・イザクという名前

・シャガールの結婚

・絶対空間ってなんだ?

・浮遊しているところは横にして画面全体が二人の姿になるようにしている。

_ 追加

・背中合わせなのは、死霊と生霊で、それが博士の物質と反物質につながるんじゃないか?

・なぜ下宿のおばさんは、女中頭との仲を疑ったのか。

・浮遊シーンに一切カタルシスが無かった。ここでは引かないからだ。


2015-12-15

_ 明治神宮不思議の森

タモリ倶楽部の録画を見ようとして、ふと妻が録画して残していたらしきNHKスペシャル明治神宮 不思議の森というのに目がいった。

で、見た。

おもしろかった。

知っているところもたくさんある。

作られたのは大正年間。当時は単なる荒地で、そこに植林して森にしたとか、そういったことだ。あと、立ち入り禁止になっている(参道以外は)とか。

が、大正時代の日本らしい壮大な計画があったことはまったく知らなかった。

森の設計をしたのは本多静六を中心としたプロジェクトチームで、何を考えたかというと、放置することで150年後に原生林を創り出すというものだ。

最初は針葉樹(荒地に強い松とか)を中心に、常緑広葉樹を混ぜておく。50年後には常緑広葉樹が増え、寿命が短い針葉樹が勢いを減らす。150年後には針葉樹はほぼ消えて常緑広葉樹の森になる。そのためにはどういう間隔でどう種類を植えるか計画する。

そこに大隈重信が待ったをかける。

「厳かで美しい。なんといっても杉に限る」

それに対して本多静六が戦いを挑む。

「杉では100年、200年と残る森は生まれませんが、それで明治の大帝に対して閣下の面目がお立ちになるのですか? よろしいのですか? 後世の人に、あの干からびたすかすかの荒地は大隈公の御指示だそうだと言われますよ」(いんちきだ)

多分、大隈重信は言ってみただけなのだろう。杉をあきらめた。かくして都心のど真ん中にスギ花粉症の巣窟が生まれることは阻止されたのだった。

日本全国から集めた10万本の木(巨木あり、並の木あり)と、義援団が入り、植樹をしまくる。すべて本多博士たちの設計図通りに配置される。この植林団を見て、(みな嬉々として力仕事をしているわけだが)ピラミッド建設ってこうだったのだなと思った。

さて、100年の間にどうなったか調査が入る。前回は1970年代だったらしい。

蜘蛛、魚類、菌類、哺乳類、昆虫などの学者が入って調べまくると出るわ出るわ希少種、準希少種、絶滅危惧種がどばどば出てくる。都内ではほぼ絶滅したはずのヤマトタンポポが群生している。キノコもたくさん、こんなのがいるなんてと驚きの声があがりまくる。

タヌキがポンポコしている。

手入れをしないことを信条としているが、唯一人手をかけているものがあって、それは秋に掃いて集めた落ち葉は森へ戻すことで、ここだけが唯一人手で自然に介入するところらしい。当然のように腐葉土となり、森の成長を促す。

樹木を一本一本調査する(3年かかるらしい)といろいろわかってきた。まず巨木が着実に減っている。が、それは針葉樹の類で、そのかわりに常緑広葉樹が日を受けることができるようになって増えている。成長もしている。

まさに計画通りだ。というか、計画の150年後の状態がほぼ100年にしてできている。

最初のころに観察された鳥がいなくなって(キジとか)、代わりに森に棲む鳥が見られるようになった。

その象徴として、オオタカが写し出される。巨大な青大将がヒナを狙って近づいたり、いろいろな映像が入る。

オオタカって美しい。

かくして、世界でも類を見ない、完全に計画された人工の、原始林がそこにはあるのであった。


2015-12-20

_ デプレシャンのあの頃エッフェル塔の下で

年末になって、この10年で最大の傑作を観られることになるとは思わなかった。たった2時間しかなくて残念だ。

オリヴェエラの映画がどれだけ映画だろうが、黒衣の刺客がどれだけ魅力的だろうが、マッドマックスがいかれていようが、さらば愛の言葉よが驚異に満ちていようが、デプレシャンの若い頃の3つの思い出の足元にも及ばない。

50がらみの外交官ポールに扮したドルメールが、パリへ戻ると言う。現地で知り合ったらしい恋人がスカートなしの姿で運送業者の手配をしたりする。もう思い出さないよね?とか言いながらベッドでごろごろしていると、souvenirという言葉がトリガーとなり、子供時代を思い出す。

ホラー映画の手法となる。

階段の下から病院を抜け出て来た母親が昇ってこようとするのを、武器を手にして阻止しようとする子どものポール。夜はふけて二人とも階段の上と下で寝ている。妹が毛布をかけてくれる。ポールは家出をして伯母の家に行く。画を書かせてもらう。伯母の恋人のロシア人のおばあさんがやってくる。夫の外交官はモスクワに召還されるが、同行を拒否する(1964年と言っていたかな? ブレジネフ体制への変わり目かも)。男は仕事だから仕方がないというのよね。夫は処刑される。

母親は死ぬ。

空港でポールは職員に取り囲まれる。パスポートがおかしい。ポール・デュダメルは他にいる。

おそるべき地下室にいる。いかにもな中年の査察官がやって来る。ほー、外務省へお勤めですか。なかなかよい職場ですな。そこで別人のパスポートを見せられる。1987年にベイルートで発行されたものだ。それにあなた、パスポートを一度紛失している。

高校生のポール。ミンスクへ修学旅行へ行ったところで、ユダヤ人のエクソダスに協力する。サスペンス映画の手法となる。魂を救えを2作目で撮っただけあって、実にうまい。猥雑な列車の中での東ドイツ国境でのパスポート提出(教師に渡す)、美術館からの脱出。訪れた家から出てくるおそらく無関係な老婆。あるいは地元のユダヤ人グループとの面接場面、帰りの薄暗い駅構内での兵士による誰何。とっさの機転で顔をぼこぼこにする。

その友人は? と地下室に戻る。マルエセイユへ引っ越してその後は音沙汰がない。

そこで第3の回想となり、あの頃エッフェル塔の下での映画になる。

コヴァルキという友人が運転する平たくてでっかな中古のキャデラック(か、それのフランス版かはわからないけど)に乗って広場へ行く。薬学科のほうが美人が多いとコヴァルキ。妹は成長している。みんな立ち去った後、妹の同級生のエステルが残る。2年前に後をついてきていたでしょ。碁をやろうと誘う。

パーティー。スペシャルズのアイキャントスタンドイットが流れ出した。最初テリーホールの声でファンボーイスリーかと思ったが(スカのリズムではないからだ)、でもジェリーダマーズの優しい眼差しが浮かんで、スペシャルズだと思い出した。まさに1980年代だ(でも、アイキャントスタンドイットは名曲だがシングルカットされたとは思えないし、なぜ、この曲をデプレシャンは選んだのだろう? おれにとってはおそろしいほどの効果があったが不思議だ)。

突如クラシックに変わり(映画の中の世界ではなく、映画の映画として)スローモーションでエステルと恋人のうち3番目が入って来る。ポールはただ見ている。そのただ見ているポールのカットでまた同じ曲となる。

恋人のクラブへ行こうという誘いを断り、1人残る。ポールは朝になった街を送っていく。扉のところでキスをする。

家の前に車がとまっているのを弟のイヴァンと妹が見つける。ポール出て行き、ぼこぼこにされる。

ボーリング場。

週日はパリで過ごす。暇さえあれば勉強している。レヴィストロースを読んでいる。ベナ出身の教授のところを訪問し、リール大学に回されてしまったが先生に習いたいのだと頼み込む。ギリシャ語は? 勉強していない。なぜ? 興味がない。うちの学生はみな勉強熱心よ。では僕が必要だ。無能な学生が一人いれば、みんな安心できる。4次元式の問題に解答して授業を受けることは断られるが個人教授を認められる。

金がないので安宿に暮らしている。毎日、契約しているようだ。イギリス人の団体で満員と断られて図書館で泊めてくれる人を探す。ヒゲと長身の美女のカップルに泊めてもらえることになる。トロッキーが演説している写真。

彼女と再開すると、スカートが落ちる。家に呼ばれると、そこでもスカートが落ちる。そのまま寝る。エステルに報告する。エステルと彼女は電話を通じて知り合う。

田舎町に取り残される恐怖にコヴァルキが泣いたとエステルが手紙を送って来る。

コヴァルキとエステルができたのを知ってパーティーの最中に一室でコヴァルキ、エステルと話し合う。ボブが扉を押さえる役目。

ベナンから来た教授の部屋でヴォルフのレコードを聴く。教授は眠る。唇にキスをする(家族を見ているのだ)。

そういった、細かなシーンが積み重なって、時間が過ぎて行く。

パリでポールはエッフェル塔が見える屋根裏部屋を借りて住みはじめる。

エステルを一度だけ連れてくる。美しいシーン。

ポールは博士課程に進み、フィールドワークのために海外にいる。エステルから電話が来て、別れを告げられる。受け入れる。彼女を世に出せなかったことに対する悔恨。

パリの生活。コヴァルキからの手紙に憤激して返事を書こうとして半分書いたところでやめる。パリでコンサートを聴いている。終って出ようとするとひげをはやしたコヴァルキ夫妻に出会う。ソファがある店で飲む。コヴァルスキに対して、エステルの話を蒸し返して、エステルを周到に誘惑したと責める。鬱憤が晴れて外に出ると、本の切れ端がたくさん舞っている。一枚を拾うとギリシャ文字がある。

エステルがギリシャ文字の読み方をポールに説明している。暗号みたいでおもしろいから勉強したけど、あきてやめた。思い出だ。

ところどころ、ほとんど意味なくアイリスを使ったりストップモーションを入れたり、好き勝手に映画を撮っている。3作目の途中でローザ(おばさん)の幽霊が墓場の後ろから出てきて説教を垂れる。父親と話しなさい(ベナンから来た教授もそう言っていた)。父親は妻の墓のほうにいる。

それにしても、アイキャントスタンドイットでつくづく感じたが、デプレシャンはおれと完全に同じ時代を生きているのだな。それが、この作家がおれにとって特別に特別な映画を撮れる原因なのだろう。

デプレシャンのあの頃エッフェル塔の下で

年末になって、この10年で最大の傑作を観られることになるとは思わなかった。たった2時間しかなくて残念だ。

オリヴェエラの映画がどれだけ映画だろうが、黒衣の刺客がどれだけ魅力的だろうが、マッドマックスがいかれていようが、さらば愛の言葉よが驚異に満ちていようが、デプレシャンの若い頃の3つの思い出の足元にも及ばない。

50がらみの外交官ポールに扮したドルメールが、パリへ戻ると言う。現地で知り合ったらしい恋人がスカートなしの姿で運送業者の手配をしたりする。もう思い出さないよね?とか言いながらベッドでごろごろしていると、souvenirという言葉がトリガーとなり、子供時代を思い出す。

ホラー映画の手法となる。

階段の下から病院を抜け出て来た母親が昇ってこようとするのを、武器を手にして阻止しようとする子どものポール。夜はふけて二人とも階段の上と下で寝ている。妹が毛布をかけてくれる。ポールは家出をして伯母の家に行く。画を書かせてもらう。伯母の恋人のロシア人のおばあさんがやってくる。夫の外交官はモスクワに召還されるが、同行を拒否する(1964年と言っていたかな? ブレジネフ体制への変わり目かも)。男は仕事だから仕方がないというのよね。夫は処刑される。

母親は死ぬ。

空港でポールは職員に取り囲まれる。パスポートがおかしい。ポール・デュダメルは他にいる。

おそるべき地下室にいる。いかにもな中年の査察官がやって来る。ほー、外務省へお勤めですか。なかなかよい職場ですな。そこで別人のパスポートを見せられる。1987年にベイルートで発行されたものだ。それにあなた、パスポートを一度紛失している。

高校生のポール。ミンスクへ修学旅行へ行ったところで、ユダヤ人のエクソダスに協力する。サスペンス映画の手法となる。魂を救えを2作目で撮っただけあって、実にうまい。猥雑な列車の中での東ドイツ国境でのパスポート提出(教師に渡す)、美術館からの脱出。訪れた家から出てくるおそらく無関係な老婆。あるいは地元のユダヤ人グループとの面接場面、帰りの薄暗い駅構内での兵士による誰何。とっさの機転で顔をぼこぼこにする。

その友人は? と地下室に戻る。マルエセイユへ引っ越してその後は音沙汰がない。

そこで第3の回想となり、あの頃エッフェル塔の下での映画になる。

コヴァルキという友人が運転する平たくてでっかな中古のキャデラック(か、それのフランス版かはわからないけど)に乗って広場へ行く。薬学科のほうが美人が多いとコヴァルキ。妹は成長している。みんな立ち去った後、妹の同級生のエステルが残る。2年前に後をついてきていたでしょ。碁をやろうと誘う。

パーティー。スペシャルズのアイキャントスタンドイットが流れ出した。最初テリーホールの声でファンボーイスリーかと思ったが(スカのリズムではないからだ)、でもジェリーダマーズの優しい眼差しが浮かんで、スペシャルズだと思い出した。まさに1980年代だ(でも、アイキャントスタンドイットは名曲だがシングルカットされたとは思えないし、なぜ、この曲をデプレシャンは選んだのだろう? おれにとってはおそろしいほどの効果があったが不思議だ)。

突如クラシックに変わり(映画の中の世界ではなく、映画の映画として)スローモーションでエステルと恋人のうち3番目が入って来る。ポールはただ見ている。そのただ見ているポールのカットでまた同じ曲となる。

恋人のクラブへ行こうという誘いを断り、1人残る。ポールは朝になった街を送っていく。扉のところでキスをする。

家の前に車がとまっているのを弟のイヴァンと妹が見つける。ポール出て行き、ぼこぼこにされる。

ボーリング場。

週日はパリで過ごす。暇さえあれば勉強している。レヴィストロースを読んでいる。ベナ出身の教授のところを訪問し、リール大学に回されてしまったが先生に習いたいのだと頼み込む。ギリシャ語は? 勉強していない。なぜ? 興味がない。うちの学生はみな勉強熱心よ。では僕が必要だ。無能な学生が一人いれば、みんな安心できる。4次元式の問題に解答して授業を受けることは断られるが個人教授を認められる。

金がないので安宿に暮らしている。毎日、契約しているようだ。イギリス人の団体で満員と断られて図書館で泊めてくれる人を探す。ヒゲと長身の美女のカップルに泊めてもらえることになる。トロッキーが演説している写真。

彼女と再開すると、スカートが落ちる。家に呼ばれると、そこでもスカートが落ちる。そのまま寝る。エステルに報告する。エステルと彼女は電話を通じて知り合う。

田舎町に取り残される恐怖にコヴァルキが泣いたとエステルが手紙を送って来る。

コヴァルキとエステルができたのを知ってパーティーの最中に一室でコヴァルキ、エステルと話し合う。ボブが扉を押さえる役目。

ベナンから来た教授の部屋でヴォルフのレコードを聴く。教授は眠る。唇にキスをする(家族を見ているのだ)。

そういった、細かなシーンが積み重なって、時間が過ぎて行く。

パリでポールはエッフェル塔が見える屋根裏部屋を借りて住みはじめる。

エステルを一度だけ連れてくる。美しいシーン。

ポールは博士課程に進み、フィールドワークのために海外にいる。エステルから電話が来て、別れを告げられる。受け入れる。彼女を世に出せなかったことに対する悔恨。

パリの生活。コヴァルキからの手紙に憤激して返事を書こうとして半分書いたところでやめる。パリでコンサートを聴いている。終って出ようとするとひげをはやしたコヴァルキ夫妻に出会う。ソファがある店で飲む。コヴァルスキに対して、エステルの話を蒸し返して、エステルを周到に誘惑したと責める。鬱憤が晴れて外に出ると、本の切れ端がたくさん舞っている。一枚を拾うとギリシャ文字がある。

エステルがギリシャ文字の読み方をポールに説明している。暗号みたいでおもしろいから勉強したけど、あきてやめた。思い出だ。

ところどころ、ほとんど意味なくアイリスを使ったりストップモーションを入れたり、好き勝手に映画を撮っている。3作目の途中でローザ(おばさん)の幽霊が墓場の後ろから出てきて説教を垂れる。父親と話しなさい(ベナンから来た教授もそう言っていた)。父親は妻の墓のほうにいる。

それにしても、アイキャントスタンドイットでつくづく感じたが、デプレシャンはおれと完全に同じ時代を生きているのだな。それが、この作家がおれにとって特別に特別な映画を撮れる原因なのだろう。

あの頃エッフェル塔の下で(マチュー・アマルリック)

2022/07/16 アマゾンプライムで再見。やっぱり大傑作だな。

弟のイヴァンがなぜ神に祈るのかと思ったが、カラマーゾフの兄弟の引用だというだけだな。

エステルが最後の回想シーンで、あなたなら斧でドアをたたき壊して入ってきても構わないわ、はシャイニングの引用。

何か所かの映像で引用のように見えるものがある。

先生の部屋で取り出したDGのジャケットがどうもストラヴィンスキーのようだと思ったが、おそらく合っている(ヴォルフの詩)。

最後はエステルのストップモーション。

・子供時代、少年時代、青年時代の3つの青春の思い出って、「二十歳の死」「魂を救え」「そして僕は恋をする」だ。


2015-12-21

_ APIデザインケーススタディ読了

RubyKaigiの前日に技評の方からダウンロード版のダウンロード権をいただいたので(ありがとうございます)、最初半分ほど一気読みした後しばらく寝かせて今読了した。

本書はRubyが持つAPIについて(田中さんが修正したり追加したりしたものを中心に、というか全部なのかな?)なぜそうしたのか、そのためにはどういう制約なり考慮があったのか、その結果どうだったのか、といった事例集だ。パターン集のようには抽象化されていなくて、題名通りケーススタディなので具体的だ。

おもしろかったし、教訓にあふれている。

以下の人は読む価値がとてもある。

・Rubyプログラマ (ここで紹介されているAPIのうち、おそらく半分は使わないかも知れない。しかし田中さんのAPIデザインに対する影響力を考えれば、コアAPIや添付ライブラリのAPIを使う場合に、持っていると便利なお約束というか考え方を知ることができる。これはプログラミングにあたって大きなメリットとなる)

・ライブラリ作成者 必読でしょう

・API設計者 必読でしょう

・技術読み物好き 文句なくおもしろい。4章は歯ごたえがある。

・Ruby以外のプログラマ よほどどうしようもないものならともかく、どのプログラミング言語にもその言語やライブラリの設計者がいて、暗黙知として、本書で解説しているようなことを考えて設計している可能性は高い。したがって、読めば役に立つはず。

まず帯の惹句が良い。「想像上ではなく、実際の問題をどう解くか?」だ。ライブラリかくあるべしという理念とか方法論を考えるのはできるが、実際に広く利用されているプログラミング言語の標準あるいは添付ライブラリのAPIにデザインを反映させて、フィードバックを受けたりした結果の考察なので、書いてあることには重みがある。

一部はこれまでのRubyKaigiなどで発表した内容だったりする(例:Unix修正主義)が、あらためて項目別にまとまっていると読みごたえがある(open-uriについてのプレゼンを聞いた覚えがあって、あれも面白かった記憶があるのだが、出ていなかった)。

短いが最初のまつもとさんの前書きでは「楽しいプログラミング」という気持ちの問題をスローガンにしているが、それはまさにデザインの問題で田中さんの貢献の大きさという点に触れている。

続く田中さんの前書きは、「使いやすい」とは何か? についての考察。これはいろいろな考えの種子になる良い前書き。

全体は5章で、1章がIO、2章がソケット、3章がプロセス、4章が時刻、5章が数、文字列。

僕は最初から順に読んだが(でも目次を読んでおもしろそうだったので、というよりもそんなメソッドを知らなかったので5.02のInteger#nonzero?だけは最初に読んだけど)、もちろん読み手に依存するだろうが、その読み方はあまり推奨しない。

3種類のスタンスの読み方があると思う。

・ライブラリ作者のスタンス(なるほどそうデザインするのか→いやおれならこうするor今度はそうしてみようorがーん考えもしなかった)

・ライブラリ利用者のスタンス(なるほどだからそういうデザインなのか→だが使いにくいぞorだから使いやすいのかorなんのことかわからない)

・もう少し抽象度を挙げたインターフェイスデザイナーのスタンス(ふむ→ふむ)

で、まあ、2のスタンスで読むのが楽だし(というのは、引き付けて読んで考察しやすいからだ)、60%はそういうスタンスで読むのが良いと思う(おれはなんとなく、20:30:50くらいのスタンスで読んでいたが、この読み方だとTimeは読んでいていやになる。で、そこでは50:40:10くらいに変えた)。

すると、必然的にライブラリ内部の動きよりも実際に使った場合のことを想像しやすい(というよりも実際に使っていることが多く、しかも内部処理をあまり知らずにすむ)5章の数・文字列を最初に読むのが良いと思う。そして2章に進む。2章はアドレス用のオブジェクトを追加することで、ソケット処理全体がどれだけ一貫性を持つようになったかというわかりやすいストーリーがあるからだ。

3章も勉強になる。Open3には似たような名前で何が違うか良くわからないメソッドがpoepn2とpopen2eとpopen3とたくさんあっておれは避けていたのだが、実はおれが良くわかっていないのはUnixのプロセス生成/実行のお約束であって、なぜそうなのかがクリアに説明されていた。この章は純粋におもしろい。

1章はCのstdio.hとio.hの世界で、バッファの部分は読んでもぴんと来ない人もいそうな気がするが、EOFのあたりは普通におもしろいと思う。この章を読むと、なるほどAPIデザインというのは広範なバックグラウンドと知識を駆使した精緻な作業だなとちょっと感動的になるかも知れない。

で、4章が時刻だ。読んでいて、日本は2~3回、太陰暦と太陽暦の辻褄合わせをしたはずだが、そのあたりはサポートされているのだろうか? あるいはサポートする意味あるのだろうか? とかいろいろ余分なほうに考えが向かった。確か信長が馬を揃えて京都で軍事示威行動したときが変わり目の一つだったような記憶があるのだけど。Bignumがあるので、いくらでも負の方向に日付が遡れるというのはなかなか難しい問題を含んでいるのだなぁというのが正直な感想である。


著者のサポートページ

writeとwirteの誤記を見て、C#の数値サフィックスを思い出した。

0Lはlongの0となるわけだが、0lと書くと警告を受ける。サフィックスは伝統的に大文字小文字両方認めるわけだが、あえて小文字のlを使うのはよろしくないということだ。

warning CS0078: 'l' と 数字の '1' との混同を避けるため、'L' を使用してください。

お節介だとも思うが、Rubyもこのレベルまで踏み込んでも良いのかも知れない(-wとかーvを付けた時は。でも具体的に何について出すのが良いのだろうか。andやorが単体で使われたら&&や||を使えとかかなぁ)

APIデザインケーススタディ ~Rubyの実例から学ぶ。問題に即したデザインと普遍の考え方 (WEB+DB PRESS plus)(田中 哲)


2015-12-25

_ メモ

MingWが0.2betaだったのでいきなりautoconfが古いというエラーとなる。 mingw-get upgrade mingw32がクラッシュする。 アンインストールして最新のmingw-getをインストール。
vcvars64
./configure CC="/home/me/libffi/msvcc.sh -m64" CXX="/home/me/libffi/msvcc.sh -m64"  LD=link CPP="cl -nologo -EP" CXXCPP="cl -nologo -EP" --build=x86_64-mingw64

--buildを指定しないと、i686と認識して生成するアセンブリに.386ディレクティブが 出力されてm64がエラーとする。(同じことを何年も前にもやっていたが、今回のほうが一発で理由がわかっただけ進歩しているらしい)

CXXCPPはドキュメントされていない。PRは出ているが反映されていない。

続き:__imp問題再発。このときはどうしたのか何も書いてないと思ったら、issue登録してた。

--- ffi.h~	Sat Dec 26 05:47:27 2015
+++ ffi.h	Sat Dec 26 11:01:20 2015
@@ -179,11 +179,11 @@
 /* of the library, but don't worry about that.  Besides,  */
 /* as a workaround, they can define FFI_BUILDING if they  */
 /* *know* they are going to link with the static library. */
-#if defined _MSC_VER && !defined FFI_BUILDING
-#define FFI_EXTERN extern __declspec(dllimport)
-#else
+//#if defined _MSC_VER && !defined FFI_BUILDING
+//#define FFI_EXTERN extern __declspec(dllimport)
+//#else
 #define FFI_EXTERN extern
-#endif
+//#endif
 
 /* These are defined in types.c */
 FFI_EXTERN ffi_type ffi_type_void;

面倒だから手パッチだ。


2015-12-26

_ Makeの依存関係

Makefileを書くときの教訓を得たのでメモ。

今、ext.hをincludeしているa.hをincludeしているa0.c, a1.cがあるとして、extという外部ライブラリの関数を陽に呼び出しているのがa0.cだけだとする。

そこで、依存関係としてa0.cについてはext.h, a.hとしているが、a1.cについてはa.hだけを依存関係としてMakefileを書いたとする。

ここでextのバージョンアップに伴ってmakeし直すと、Makefile内でext.hに依存しているのはa0.cだけなので、a0.objは再コンパイルされる。が、a1.cはそのままとなる。

確かにextの関数の変化への追随や陽に使っている定数の値変更とかだけならそれで良い(a1.cを再コンパイルしないからmakeもちょっと速くなる)のだが、ext.hの中でstdioなどのCのライブラリ関数やマクロを再定義しているシンボルがあるかどうかは、別の話だ。その場合は、a1.cもext.hの変更に追随して再コンパイルしなければまずい。

というわけで、includeしているヘッダをすべて把握するか(でも追加されて、それが影響する可能性もあるわけなので)、大雑把に陽にincludeしているヘッダについては常に依存関係があるものと想定してMakefileは書くべきだ。とか、今頃になって気付いていたりして。


2015-12-27

_ Ruby-2.3.0-x64(with ActiveScriptRuby and Rjb)

X64版のRuby-2.3.0のバイナリパッケージ(MSI)を作りました。

ASRのページからダウンロードしてください。

DiceさんのCHM版を同梱しています。

Win32OLE、ASRとRJB以外はほとんど試していないので、どこまで動くかわかりません。おかしな点を見つけたら教えてください。

11:48追記:OLESelfRegの設定がFalseになっていたので修正(1.0.1)

12/29 22:17追記: readline.soを削除(1.0.2)。ムムリクさんありがとうございます。

本日のツッコミ(全13件) [ツッコミを入れる]

Before...

_ arton [まじめに調べたら、その定数は定数なので変える必要がないので見た目はそうなるようですね(openssl)。 実際にはr..]

_ arton [tDiaryが':'で囲まれた文字列をimgタグに書き直しているのかな。]

_ fujita [返信遅くなって申し訳ありません。 暫定的にライブラリ書き換えて対応しました。 また、結局 VirtualBox上の ..]


2015-12-28

_ スカーレットウィザードを読む

本読みの同僚と話していたら、海賊の小説の話になり、おれが知っているのはハーロックとかネコのやつとか言ったら、では茅田砂胡(よくまぁこんな名前を名乗るなぁと思ったが)のスカーレットウィザードを読めということになり、翌日、スカーレットウィザードの1巻を貸してくれた。

で、読んだら、滅法おもしろい。何十年ぶりかで読むスペースオペラじゃん(量子怪盗もそうかな?)。なかなか新鮮だし、続きを読みたくなるタイプつまり優れた娯楽作品だ。

多分おもしろさのうち幾つかは展開のスピード感(最初は追っかけっこだ)にありそうだが、それと同時に「お約束」としか言いようがないギャグパターンが繰り返し出てきてそれがそう悪くない点にもありそうだ。

主人公は、スカーレットウィザードの異名を取る真っ赤な髪で身長190cmの女性(しかも大財閥の跡取りで、宇宙一の大金持ちなので(海賊からは)女王と呼ばれていて、しかも超一流の軍人であり宇宙一の戦闘機乗り)と、追っかけっこに負けて結婚することになった身長196cm(細かな数字は忘れたので違うかも)の一匹狼(ということは腕っぷしも度胸も戦術も操船技術も最高ということだ)の海賊の二人で、最初から何をやっても負けるはずがあり得ない超人コンビだ。ここまで駒が揃っていれば、勝って当然過ぎて物語次第ではおもしろくなるはずがない。

が、財閥の重役たち(のうちの謎のグループが)が本気で財閥の乗っ取りのためにあらゆる政治力と経済力と知力(当然重役をはっているのだから愚かではない、ことになっているのだが、最後のほうになるといささか怪しくなってくるのは都合上しょうがないのかも)を振り絞って殺しにかかってくる(しかも、そのためのゲームの条件がいろいろ設定されていて、その制約も物語構成に一役かっている)から、十分にゲームになる。

あと、都合上からんでくる連中がそれぞれ一癖二癖あって適度に無駄口と軽口を叩くので、当たりはずれがあっても、十分に楽しめる点もでかそうだ。

女王も海賊も価値観(まるでラオール・ウォルシュだが、生き延びることが肝要だ)が比較的一貫しているし、かたや何かあっても金と政治で解決できるし、かたや殺して逃げれば済むので、一致して、他のクルーや社員や仲間と会話パターンが出来ている。そこがギャグになっているらしい。

クルー「~という問題が発生しました」

海賊「何をあわてているんだ? ~すりゃいいじゃん」

クルー「そ、そんな!?」

女王「何がまずいんだ? でもわたしなら~する」

地の文(うさんごろうはそんな調子さ/さすがの海賊も肩をすくめて女王にはかなわないと示した)

ただ、普通に読めば、海賊や女王の意見があまりにも当然な帰結を言っているので、それだけならば大しておもしろいわけではない(ある意味、他のクルーたちを愚か者に描いているような雰囲気すらあるので気分は良くない。が、海賊や女王は超人なので行動基準が全然違うのだからしょうがないということはわかるようになっているので他のクルー目線であれば驚愕の結論なのもしょうがない)が、そういうパターンだと納得して読めば、次々と出てくるのでそう悪いものでもなかった。リズミカルな文章だということだな。

これでは、女王と海賊の二人ですべての物事を決めるしかないので物語が破綻しそうなものだが、海賊船に搭載されている人工頭脳の設定を神レベルにしているので、それを使ってうまく処理している。この人工頭脳が持つユーモアのセンスが実に良い。

さらに、会話に入ると口をあんぐり開けるくらいしか役に立たないクルーや社員(やついでに軍人たちや他の海賊たち)だが、何人かは人格をきちんと与えられているので物語をきちんと回す(魅力的なわけだ)。さすがに、きちんと人格を与えられていないがそれなりに絡みがあるクルーたちがまとめて整理されて悲惨さを演出したのには驚いた。

・対象読者が最初うまくつかめなかったが、どうも、これは女性向けなのだな、と、途中で気づいた。作者が後書きでハーレクインロマンスを書こうとしたと書いていて、なるほどと納得したが、プロトコルが確かにロマンスのパターンになっている(セルフパロディのような映画を観て感想を言い会うシーンが途中で挟まるので、作者が緻密に計算しているらしいのもわかる)。

・というか、良く似た風貌(銀髪の長髪で長身)のコンピュータ潜り屋と海賊の親分が出てくるので、そういう登場人物を常に出したほうが都合が良いと作者が判断しているということは、ターゲット読者は、そのタイプが好みだと考えざるを得ないし、紋切型小説だという点を考慮すれば、ある種の女性読者が対象だと判断するのが妥当だ。

・一方で、スペースオペラの一言で済むことをバイオレンスがどうしたと書いているが、まったくもってバイオレンスが無い。にも関わらず、これをバイオレンスと表現するということは、バイオレンスというものに対する認識が無いことが(作者と読者の間で)前提となっている。

・宇宙間飛行のためにゲートという仕組みを導入して、それを操船技術の目安に利用しているのは、なかなかうまい方法だと思った。

というわけで、あっという間に1巻を読み終わったので、頼んで残り4冊(外伝も1冊あった)も貸してもらって、こちらも一気に読んでしまった。

全巻通して、完全な疑問点が1つだけ残った。

海賊船(の人工頭脳)と海賊の出会いがほのめかされている箇所があって、そこでは海賊が宇宙服だけで遭難だか脱出だかして浮遊している状態で出会ったらしいことが示されている。すさまじい偶然の邂逅だが、そのご都合主義は問題ではなく、その時点の海賊の年齢と経験が問題だ。おそらく10歳か11歳でなければ辻褄が合わない。しかも、宇宙船の操船経験は無いはずだ。海賊船(の人工頭脳)の設定から、乗船させるのは超一流の操船技術の持ち主でなければならない。したがって、この時点の海賊を捕捉する理由はまったくあり得ない。のだが、乗せたことになっていなければおかしい(実際、海賊が操作することになっているのだから)。子供だし度胸はありそうだし体格も良いから、教育しようと判断したという可能性が残るわけだが、さすがに(他の設定と比較しても)無理があり過ぎる(ので、邂逅について、作者はほのめかしで終えたのかも知れない)。

外伝は本編に比べるとちょっときつい。生き残った海賊が子どもの成長を陰ながら見守る物語だが、時が流れているのでお約束のクルーたちはほぼいないし、女王は途中退場(最初はちゃんといて、お約束としか表現しようがない銀髪長髪長身海賊親分とのエピソードが入る)するし、そういう理由でギャグパターンが出て来ないし、海賊船(人工頭脳)もほとんど出て来ない(地上の話だからだ)。たまに人工頭脳と相談しているところがあっても、そうそう無駄口ではなく物語上の必要が最初に立っているから深刻なものが多い。

多分、本編のカタを5巻のうちにつけるために掲載を見送ったエピソードをつなげたのかも知れない。

と言っても、新しい推進機関の開発物語(これはなんか良い話)とか、代わりを務める本物の神の一族との格闘や陰謀(会話)とかもあるので、別に退屈するわけでもなく、意外と新書一冊するっと読めた。

スカーレット・ウィザード 1 (C★NOVELSファンタジア)(茅田砂胡)

_ あれよ星屑の4巻も読んだ

あれよ星屑の4巻が出たので早速購入して読む。

最初は川島(部下を死なせたことの悔恨に苛まされていて鬱屈した日々を過ごしているほう)が出征するまでのエピソードで重苦しい。父親にしごかれている子供時代となり、出来が良さそうに見える兄貴がいやなやつかと思ったら、木の上で果物を寄越すところでそうではないとわかる(それにしても表現が実に良いなぁ)。

キネマ旬報を燃やすところで、一瞬誰が誰かわからなくなり、よくよく見れば生え際が兄貴が星で弟が直線と区別されていることに気付いてちょっととまどった(兄貴の無念を川島が覚えていて回想しているのかと思ったら、そうではなく兄貴に頼まれた言いつけを守り通せなかった川島の無念の回想だったのだった)。

で、その後もうっとおしいエピソード(川島に感情移入して読めばうっとおしくてたまらないという意味であって、読書体験がうっとおしいわけではない。身に迫る沈鬱感だ)が続き、どうなるのかなぁと思いながら読んでいると門松(くまのほう)が川島をストリップに連れ出して、あれよあれよと話が進み、なんかすごく良い感じ(最後の川島の表情が抜群に魅力的だ)で次巻に続くとなった。

・わりとリアリスティックな川島側の人物像とデフォルメされた門松側の人物像の対比がおもしろい

あれよ星屑 4巻 (ビームコミックス)(山田 参助)


2015-12-29

_ ??

C#のボッチ演算子?.を使うようになると、これまで省みられることがなかった(少なくともおれにとっては)??演算子(null合体演算子)がやたらと役立つようになる。ちょっと結合優先順序が気に食わないが。
// 結合優先順位でnull合体演算子がやたらと低い(条件演算子の上、下から3番目)ので
//      V                V  この()が気に食わない。
return ((list?.Count ?? 0) == 0) ? "" : string.Join(",", list);

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