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翔泳社の岩切さんが、ポプラ社の倉庫についてやたらと感心していたので、見学したいなぁとか言っていたら、社会科見学会が開催されることになった。で、参加した。
(背景事情:翔泳社の未来戦略の一環としてロジスティクスの見直しがあって、そこでポプラ社のロジスティクスを利用(実際には法的な問題で倉庫管理会社を別立てすることになったらしいが)することになったというのがあるらしい)
(別の背景事情:物流という切り口から出版の未来を考えるというテーマが参加者に求められていたようだ)
今回知った大人の事情:国土交通省の規制で、ある会社の自社倉庫を他社に利用させることはできない(税務関係かと思ったが、どうも安全のほうの理由らしい)
-以下、覚え書き
数は忘れた。5000種10万冊かな?
大まかな仕組み:製本所から入庫された書籍は次のランクに分離される。
・現時点の超売れ線(ばかすか出て行くのでそもそも倉庫にしまわない)
・Aランク(大量に入って大量に出て行く)-木製コンテナごと倉庫に入れる(取り出し位置には1つ)
・Bランク(それなりに出る)-オリコン(プラスティック製の折りたたみコンテナをこう呼ぶということを知った)に移し替えて倉庫に入れる(取り出し位置に3段。高い位置のコンテナからも取り出せるようにオリコンの手前と奥の面は取り外して横のフックにかけられるようになっている)
・Cランク(あまり出ない)-バーコードラベル付きの位置が決まった棚に積む
・Dランク(ほぼ出ない)-短冊管理
AとBは庫内-出荷所までは自動移動:出荷所でオリコンに集める-オリコンはベルトコンベアに乗りソーターにかけられて出荷先ごとに分離され、それを集めて出庫する
Aランクの出荷用コンテナを見るとなるほど感があった。
ねずみくんのチョッキ (ポプラ社のよみきかせ大型絵本)(なかえ よしを)
とか
クリスマスのおばけ (せなけいこのえ・ほ・ん)(せなけいこ)
A~Cはバーコードリーダ付きハンディターミナルで位置と商品、状態を管理。
出荷指示には書名を使わない。書名は似たものや上、中、下など紛らわしい。A、Bはコンテナの取り出し位置、Cは棚位置で管理。(棚管理を厳密に実施することの重要性。複数個所に同一商品があると、手近な位置から取り出すため、数が合わなくなる)。移動を最小にする順序を指示。
・入庫から出荷用の取り出しまでの速度向上が特に大きそうにみえた。奥の保管庫から出荷位置までのコンテナ移動による補充は高速。
・ソーターが実は肝となっているとのこと
(ソーターは約100口持つ。もっとも日販、東販クラスは1000口以上持つので規模感が全然違うらしい)
ソーターから取り出し用の滑り台は本が傷まないように緩い傾斜となっている(結果として分岐すぐに止まっている本があったりして、なんとなくルーレットでディーラーがチップを集めるのに使う棒を彷彿させる棒を利用して作業していた)
ソーターの作業が一番殺気立っている雰囲気がある。
返品された本は必要となるまでコンテナのまま置いておく。出荷に回すことになった時点で面取りしたり、カバーの架け替えを行う(カバーは補充品としてこれまた大量にある)。
人間が一番いっぱいいて作業しているのは、カバーの架け替えやカバーの汚れ落としの作業所(汚れ落としは特にピンク系が褪色しやすいので熟練の技が必要)。一日5000冊をさばくと言っていたような。
・受注-出荷のターンアラウンドをいかに高速にするか。
・ポプラ社の本は親が子どもに買ってあげるものよりも、子供が自分で小遣い持って書店に買いに来るタイプが多い(ゾロリがそうらしい)。したがって、常に店頭に無ければならない。
きえた!? かいけつゾロリ (かいけつゾロリシリーズ)(原 ゆたか)
・書店の棚は空けることができない。売れたらすぐに補充できなければ他社に取られてしまう
・システム構築はJFE。工場系なので入庫から倉庫入れまではバッチリだったが、出庫のところで意見が合わず、最初ソーターなしの設計だった→ソーターの必要性を力説して実装(正解だった)
・コンテナは極めて高いところまで積んであるため、えらく伸びるリフトを使って降ろすことになる。一番高いところにあるコンテナはフォークを刺す箇所が目視できないので名人芸が必要
・学校図書納入用の本によっては特に頑丈に製本した特別製を用意している(価格に驚いた)。
・冊数確認は目視。重量を登録して量りで数量確認を自動化できるようにしなかったのは残念(日販は刷り毎に重量登録して自動化している)
・3.11のときは高いところでコンテナから飛び出した本があって、コンテナへ戻す作業が大変だった(人間が直接作業することを想定していないコンテナ庫となっているからだ)
その他聞いた話
・木製コンテナのプラスティックコンテナに対する良さ:フォークが間違って刺さっても裂けた時点でわかる。斜めになっても止まりやすい
・図書館について聞いた話: 新刊の購入をスライドさせるというのが正しいとは思わない。その本の存在を図書館で知ってもらうことは重要だ(これはわかる。ポプラ社の本はシリーズでやたらと多いものがある。ゾロリが50巻以上だが、おれが子どもの頃はホームズやら少年探偵団やらが何十巻もあった。すべては買えないから特に気に入ったのは買って、残りは図書館で読んだ。読んでも買うものは買う。そういうことだろう)。むしろ図書館の予算をどう使うかで、地元の書店、出版社から購入するエコシステムが重要ではないか(その考えからいくと、ベストセラーを10冊購入というのはあまり望ましいことではないなぁと思った)。すると司書も地域密着型であるべきではないか。
・ドイツは再版価格維持を国家レベルで守らせている。日本の場合は取次との契約として維持している。ドイツのようにあるべきではないか。
・国会図書館のデータベースの分類キーは国会図書館で閉じている。国家レベルで利用して、その結果として海外への広範な流通を実現すべきではないか(これもドイツはそうなっているというようなことだったような)
#それはそれとしてつるとはなを買ってみた。
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