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日々の破片

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2022-05-21

_ 新国立劇場のオルフェオとエウリディーチェ

楽しみにしていたオルフェオとエウリディーチェ。

楽しみにしていたが、予想通りに退屈した。音楽が様式的だからなのだが、ロマン派を通り過ぎた耳にはいやでも退屈なのはしょうがない。そうは言っても2幕1場の永遠に続くようにすら感じる復讐の女神とオルフェオの掛け合いでオルフェオの歌は変わらないのに復讐の女神が折れてしまうところはおもしろい。

もともと興味の対象は勅使河原三郎の演出にあるわけで、こちらは堪能した。

踊り手を4人使う。意味づけはあるのだろうが緑のパンツと青(いかん、すでに忘れている。本当かな)のペアと白の2人組。

最初は傾いた皿の上にオルフェオとおそらくエウリディーチェの亡骸。周りを黒衣の羊飼い。

アモーレが魔笛のパミーナだった三宅。

2幕1場は奥に茨のような木が2本あって門になっている。2場では白いユリで、途中から黄色が入る。2幕は省力化音楽というか、とにかくループする。特に2場の「彼女は来る」を延々とやってから「彼女は来た」になって奥からエウリディーチェ登場で暗転。

3幕は2幕2場よりも明白な(形がきちんとある)百合を背後に皿が復活。

それにしてもエウリディーチェが「こんなことなら死んだままのほうが良かった」とまでは言い出すのにはオルフェオではなくても混乱するが、エウリディーチェとしてもいきなり永い眠りから叩き起こされて化粧されて(というようなことを2幕2場で説明している)なんか顔も見せずについて来いと命令されたら不安になるのも当然だろうな。

で、オルフェオは破れかぶれになり(ここで切々と歌うのがハ長調なので、この時代はまだ短調と長調の性格付けは曖昧なのかな)抱擁する。

アモーレが出てきて、お前の誠実さは明らかだから生き返らせるよ、で大団円。

それにしても「白百合は純粋性をあらわすというが、そこにこそ人間への皮肉が煌めく」と勅使河原三郎が書いているのはどういうことなのだろうか。

アモーレがパミーナということもあって、いろいろ考える。

おそらくシカネーダはこのオペラを観ていたかも知れない。であれば、この無言の行で暗闇をついて来いというのは馬鹿げていることは感じただろう。

それで魔笛の最後はなんでも理解しているパミーナがむしろタミーノを先導するし、会話を番人は許可する設定にしたのかも知れない。そのほうが遥かに良い。

いずれにしてもおもしろかった。


2022-05-07

_ 変身動物園

話はアネットにさかのぼる。そのとき、友人にサハリン島を貸したときのことだ。

「分厚いな。重いからいらん」と言い出す。

まあそういわずに、おれが借りている『先に寝たやつ相手を起こす』と『死都ブルージユ』の担保として取っておいてくれ。と無理やり押し付けた。

「そういえば」と友人が言う。「お前から借りた妙なサーカス……ではなく、動物園の本は返したよな?」

「は?」

まったく記憶にない。「サーカスと言えば『ラーオ博士のサーカス』だが、貸した覚えはないな」

「いや、サーカスは間違い。動物園だ。」

でもまったく記憶にないので、その話はそこで終わった。

さて、連休も終わりに近づいたので、積読を少し消化するかと、母親の家から持ち帰った本の上のほうにあった、『変身動物園』という見慣れぬ本を手にした(そう、動物園なのだがまったく上のやり取りは忘れていた)。中に、母が書いたらしい登場人物の名前メモが入っていたので、ははあ、ややこしい話っぽいな、とか思いながら読み始めた。

月の上を風が吹く。こんなことがあると、1年は不吉なことが起きる。おい、お前たち、おれが留守の間は良い子にしているんだぞ。お母さんに心配かけないようにな。

と、少佐が娘姉妹に言う。少佐はこれから1年、危険な任務のために外国へ行くのだ。

「無理」と姉が言う。

「無理」と妹が言う。

「悪い子のほうがおもしろいから、悪い子になるわ」

「そうそう、そのほうが絶対いいから」

……なんじゃこりゃ? と本気で読み始めた。

読んでいると、子供が幼いころに寝る前に話したクマのクータンの冒険物語が随所で思い出されて来た。

行き当たりばったりの展開。目についた素材の援用、古典の教養、物理学の理論、悪いほう悪いほうに、できるだけ説教くさくならないように気をつけて、でも美とか自由とか本当に人生に重要で必要なものについてはしっかり話しながら、うければ何度でも飽きるまで繰り返し……

この本、まともな児童文学ではないな。むしろ、子供を喜ばせることだけを目的とした法螺話だ。

そして読了して(一か所、本当に重要な友人との2回の別れ、そのうち1回はもちろん「死」なのだが、さすがに悲痛な思いは残っているわけだが)呆れ果てている自分がいた。これは、変な本だ。

で、続けて訳者あとがきを読みだすと、まさに8歳と6歳の娘のために話した物語を本にしたとか書いてある。おそらく、推敲はしただろうが、きちんとプロットなどを練り直すことなく、そのまま出版社に渡してしまったのだろう(作者はどうも職業作家のようだ)。

しかし、手元の晶文社のは1992年の刊行だし、アマゾンでの購入履歴もない。古本屋の票や鉛筆書きの価格もない。新刊として書店で買ったものだ。記憶にない以上、これはおれの本ではないな。

そこで母親にメールで、「なんでこんな本を買ったのか?」と質問したら、「お前が貸してくれたんじゃないか」と返事が来た。

全然記憶にない。しかし、冒頭の友人との会話を思い出した。

どうやら、子供用に買ったものの、子供が読まなかった(読むべき本は山ほどあるので、ここまで手が回らなかったのだろう)ので、しかしなぜか自分で読む気も起きず、友人や母親に貸したようだ。おそらく感想次第で読むつもりだったのだろう(キュレーションを厳選したキュレーターにやらせる作戦)。が、誰も何も教えてくれなかった。

それはそうだ。

空っぽの本なのだ。

おもしろいは抜群におもしろい。友人との別れは感動的で心が揺り動かされる。強くて大きな獣は戦いの中で死ぬのがふさわしい。だが、無内容なのだ。

まさに奇書と呼ぶにふさわしい。

あまりの衝撃に、子供の本ミートアップのネタにしてしまった。

そのため、あらすじと子供に話す話のパターンランゲージ(用のメモ)を作ってしまった。

変身動物園のあらすじを示す。


二人の姉妹ダイナとドレンダは悪い子になろうと決めて、毎日母親と家庭教師があきれるほど食べまくり風船のようになる。病院へ行く途中で悪い子キャサリンにそそのかされた子供たちに針で突かれて復讐を誓う。ダイナだけが会える森の魔女に頼んで変身薬を入手しカンガルーに化けて村人たちを驚かせ、子供たちを蹴りまくる。が、サー・ランカスターの投げ縄に捕まり動物園へ入れられしまう。

サー・ランカスターの動物園で、かって探偵だった頭が悪いキリンのパーカー、ランカスターから盗んだ新聞を読むのが日課の熊のベンディゴ、フランス帰りの気取り屋のラマのマリールイズなどと知り合う。パーカーの駝鳥のレディ・リルの卵泥棒の捜査を手伝いながら、本物の野生動物のグリーンランドのシルバーハヤブサ、ブラジルのゴールデンピューマと一緒に脱走計画を練る。

一方、村ではキャサリンにそそのかされてダイナとグレンダを覗きに行ったまま生垣にはまり込んで抜けなくなったミセス・テイパーが泥棒で有罪か無罪かの裁判が行われていた。12人の陪審員のうち6人の男性は無罪、6人の女性は有罪を主張して譲らないため、判事のランプルは全員逮捕していた。

無事脱走に成功した二人はミス・セレンディップの授業にあきあきしてダンス教師のコルボ先生のことを思い出す。コルボ先生は12人の陪審員の一人なので牢獄の中にいた。

二人は知恵のある大人として弁護士二人組(一人は原告側専門、一人は被告側専門で、曜日ごとに勝訴になる側を決めている仲良し)にコルボ先生の釈放を依頼する。

無事コルボ先生(とその他の人々)の解放に成功した二人は、父親の少佐が出張先のボンバルディで専制君主のヒューラグ伯爵によって地下牢に幽閉されていることを知り、救出を決意する。

森の魔女の薬を使って、狩人と猟犬に襲われて危機一髪のピューマを救出した二人は、コルボ先生とピューマと共にボンバルディへ向かう。ハヤブサは空からついてくる。

伯爵の部屋の秘密の通路を見つけた3人と1匹は無事少佐と会えるが、ヒューラグ伯爵によって再び閉じ込められてしまう。

ヨーロッパに取り残された第一次世界大戦の生き残りの工兵二人組によって地下牢を脱出した4人と1匹だが、工兵の好奇心からヒューラグ伯爵に見つかってしまう。ピューマは自分の運命を悟る。

ハヤブサはボンバルディではピューマの記念碑が立てられていることを告げるとグリーンランドへ帰る。二人が森へ行くと魔女はリューマチ治療のために旅立ったあとだった。二人はカッコウ時計をもらうが、カッコウは魔法の歌を途中まで歌ったところで壊れてしまう。修理したが普通のカッコウ時計になってしまった。


見過ごせない点として、最後が中途半端に終わることがある。カッコウは10個だか12個だかの教訓というか魔女の教えを歌うはずが、途中で壊れてしまう。修理するとただのカッコウ時計になる。まさに物語だ。

子供に話す話のパターン(パターンランゲージ化まではしていない)を示す。

間抜けな繰り返し

頭が悪いキリンのパーカー氏の捜査

動物たちが檻から抜け出していることについてのプラム氏の言い訳

陪審員と裁判長のやり取り

面倒なことは省略(ご都合主義をおそれない。気にしたら作れ)

森の魔法使いは登場させない

母親はロンドンへ旅行に行ったことにする

落とした薬を簡単に取り戻す

唐突かつ詳細なトリビアの泉(繰り返しの一種。長引かせるテクニック)

太るために食べたもの

ミス・セレンディップの授業

クマのベンディゴのボクシング技術の説明

主人公は悪い子だが良い人(それは重要)

ダイナとグレンダはお互いに尊敬しあっている

言葉遊び(ダブルミーニング)

弁護士たちが裁判長にかける罠: 変えないのは不潔

自由こそ最高で美しい(真の価値とは何か)

ハヤブサとピューマ

美しいものは美しい(絶対とは何か)

ピューマとハヤブサ

どうしようもないことにはモラトリアム(わからないことはわからない)

ピューマが家畜を襲っているので二人はまずいと考えるが、説明不能なので無視する

その選択はなに?(目についたものを利用する)

動物園の動物たちがむちゃくちゃなのは、家にあるぬいぐるみや、そのへんにいる家畜、連れて行ったことがある動物園で子供が興味を持った動物などを適当に選んだのでは?

逆にした繰り返し(上をやったら下、右をやったら左)

風船の次はマッチ棒(ただし足が二本←わざわざ言うまでもないことをちゃんと言う)

いざとなったら古典を利用(自分の知識をフル動員)

間違いなく地下牢からの脱走は、モンテクリスト伯とファリア神父の邂逅を援用している

本気の理屈と論理(考えるとは何か)

「あと二年して、今のわたしの年になったら、そう思わなくなるわよ」「いいえ、思うわ。あなたは、やっぱり二歳上だから、年上風をふかせて、とくなことをするにきまっている」……「でも、二人ともうんと年をとったときのことを考えてごらんなさいよ。あなたが90歳になれば、わたしは92歳。92歳っていえば、もう臨終の床についていても不思議はないわ。でも、あなたは、たったの90歳だから、パーティーへも行けるし……」「そうね、でも長い間がまんしなくちゃならないんだわ」

変身動物園―カンガルーになった少女(エリック リンクレイター)


2022-05-05

_ ミリオンダラー・ベイビー

プライムビデオでミリオンダラーベイビー。クリントイーストウッドの作品はほぼ観ているのだが、なぜかこれは見逃していた。

過去は短いフラッシュバックだけで済ませて現在を描くいつもの手法。したがって、テンポが速い。しかし現在の中でも特に重要なシーンは退屈寸前までのしつこさで映す。

主人公のフランキー(止血屋兼トレーナー)は過去に何かの因縁があって娘から拒絶されている。

片方のマギーは30を超えたウェイトレスでミシシッピーの極貧の生まれとしか紹介されず過去は描かれない。しかし働いているカフェのお客の食べ残しをアルミホイルでくるむ描写で貧乏がわかる。後でフランキーが自宅を訪れた時、出納メモを見て家族へ仕送りしていることを知る。

なぜかマギーはフランキーをトレーナーとして選ぶがフランキーは拒絶する。半年分のジム費を払ったので追い出すこともできず(ジムには金が無いのだ)放置している。

モーガンフリーマン(スクラップという名前だが、失明して引退した元ボクサーの名前としてもなんかひどすぎるのではないかなぁ)が見かねて教える。フランキーのスピードボールを貸し与えたスクラップの作戦が当たり、最終的にフランキーはトレーナーを引き受ける。(フランキーがスピードボールを奪い返すあたりで印象的な会話があって、それでフランキーは引き返してボールを貸すのだが、どんな会話だったか忘れた)

が、最後まで面倒を見る気はないので別のマネージャを紹介する。が、このマネージャが今後のマッチングを有利にするために一方的な試合を組んだことに激怒して自分が面倒を見ることにする。このあたりの流れもスピーディーだ。

すぐに強すぎるマギーはマッチを組めなくなり、海外へ行く。緑のガウンにアイルランド語というかゲール語の名前を付けているので、観客は大喜びする。なぜかわからないがフランキーはゲール語を学んでイェーツを読んでいるのだ。ヨーロッパを連戦して実力もつき金も稼ぐ。このあたりの流れもスピーディーだ。というか、このスピード感は明日のジョーにも通じるものがある。

結構稼いだことでマギーは母親のために家を買い、フランキーにミシシッピーへ連れて行ってもらう。

ここからはむしろテンポを落として家族関係を示す。フランキーは傍観者として常にいるのだが、立ち入らない。ちょっとニコラスレイの撮り方みたいだ。

マギーの家族は貧すれば鈍するの代表として描かれている。肥満した母親、刑務所をいったりきたりの弟、離婚した子供持ちの妹。母親の口っぷりからは、ボクサーよりも離婚した子持ちでも生活保護費を地道に稼ぐ妹のほうが誇らしいらしい。マギーが入院したときは見舞いに行くと言って4日放置(その間ディズニーランドへ行く)。ディズニーランドで遊びまくってきたということは服とフランキーの嫌味だけで示す。

ラスベガスでタイトルマッチが行われる。行きは飛行機、帰りは車が良いとマギーが言う。

スクラップはついていかずにジムを保守するという。ここで、残念な左フックしか能力がないボクサーが、ハートしかないデンジャーという少しおかしなボクサー見習いをリンチにかける。スクラップは人生最後の試合をKO勝ちする。デンジャーはいつの間にか姿をくらましているのだが、数日後に戻ってくる。スクラップとデンジャーの物語はこれからも続くのだろう。

ラスベガスは砂漠に作られた人工都市ということを思い出させる、医者についてのフランキーの文句。

最後、謎だったゲール語の名前をフランキーはマギーに教える。それは血のつながりを示す言葉だった。ここで初めてフランキーは去ってしまった娘をマギーに投影していたことを言葉で説明したことになる。

ミリオンダラー・ベイビー (字幕版)(クリント・イーストウッド)


2022-05-04

_ たくみと恋

古本屋で買っておいたシラア(それにしても同じ岩波文庫で、シルレルありシラーありシラアありと忙しい人だ)の「たくみと恋」を読了。

この場合の「たくみ」は現在の言葉だと「企み(たくらみ)」だが巧妙に仕掛けた罠の意味。いつから「ら付き」言葉が普及したのか不可思議だ。むしろ「ら抜き」が普及しているのに。

シラアだけ見て買ったのだが、表紙カバーの見返しに「階級の違う若い二人の清純な恋」とあって、なんだ恋愛戯曲だったのかと放置してあったのだった。

が、読み始めた。すると、楽師のミラアとその妻が娘の様子について話し合っているシーンで始まる。妻は、玉の輿でウハウハ生活みたいなことを浮かれて言っているが、ミラアはそんなうまい話しがあるわけない。むしろ災難が降りかかると困っている。

リゴレットのマントヴァ公とジルダか? と思うが、見返しだと清純な恋ということだからマントヴァ公ってことはなさそうだ。

と次の場で、男爵(宰相である)の秘書が登場し、娘と結婚したいと言い出す。すると妻が「大事な玉の輿を目の前にして」とか余分なことを口にする。ミラアは直接娘を口説くならともかく親の顔色を伺うとか男の風上にも置けぬカスと罵倒する。

秘書は戻ると男爵にどうもミラアの女房の言葉から考えると、男爵のご子息が平民の楽師の娘に篭絡されていまっせと告げ口する。男爵のほうは、大公の愛妾を息子に嫁がせて権勢を拡大しようとしているので、さっそく陰謀を秘書と巡らせる。

と読み進めてうんざり(ヴィルヘルム・テル群盗のように快男児が「自由!」と叫びながら駆け回る作品を少しばかり期待していたのだった)してきたが、我慢して読んでいたら、これはこれでやはり傑作だった。シラーは良い。

なんといっても、圧倒的なのは、この作品に登場する二人の女性が抜群だ。快男児ではなく、快女児(女性に対する対応する言葉は日本語には無い。女傑になるのかな? 好漢はあるが好女はないし(そういえばホオシャオシェンに好男好女という作品があるが、好漢とその女性版の意味なのかな?))の物語として読めば良かったのだ。

まず、大公の愛妾のミルフォオド夫人というのが、政治のためのトロフィーワイフなのかと思ったら、とんでもない。

スコットランド女王の政争に巻き込まれて両親が惨殺された政府高官の子供が乳母とともに大陸に渡り、あらゆる手腕を駆使して一国の政治を動かすまでにのし上がった女傑で、おそらく本人の述懐通りに暴利暴虐の王を鎮めて国家国民のために福祉に予算を割かせている行政家だった。しかも体は売っても魂の気高さをまったく失ってはいない。

とはいえ当然、自分の立場のアンビバレンツに苦悩しているので、政略結婚のネタにされるくらいならと、(政治的な)恋敵であるミラアの娘のルイイゼとの丁々発止のやり取りで相手の魂の気高さを見極めた上でさっさと国境を越えて逃げ出してしまう。

一方のルイイゼは陰謀に巻き込まれて両親の生命と引き換えに嘘の手紙を書くのだが、魂の気高さはやはり保つ。

ところが、相手の少佐(宰相の息子)は逆上すると、真相を告白しようとする侍従長を殴り倒して耳にせず、一人でいきりたってルイイゼに毒を飲ませて自分も毒をあおぐ愚物。

宰相はそれに比べれば大人な分まともな判断もできるのだが、権力欲にかられているのと持って生まれた平民差別を隠しもしないのでまともな会話が成立しない。

その秘書は、平民に近いだけに最後の潔さはイヤーゴのようで、まあしょうがあるまい。イヤーゴのように獄吏の手に落ちて退場。

ミラアの妻はあまりの俗物っぷりに作者もいやになったのか後半は地下牢に押し込められたまま誰からも忘れられているが、それもしょうがあるまい。

ミラアにいたっては、途中までは子供のためには無償の愛で相手の立場を無視しても一人の人間として戦っているのに、少佐が投げ与えた金貨ザクザクの財布を手にするやコペ転してペコペコし始める(このあたりは、作者の大衆蔑視が透けて見えもする。シラーのくせにアインランドか?)。

かくして大人たちの醜悪な争いの末に子供たちが死んで終わる。

たくみと恋 (岩波文庫 赤 410-0)(シラア)

読んでいて途中で気づいたが、ベルディのルイザ・ミラーの原作なのだな。

ベルディだと、ミルフォオド夫人の役回りが消え失せて、ミラアの妻は最初から出もしないし(ミラーは寡夫設定)、男爵と秘書の陰謀による悲劇が強調されて、ルイイゼとミルフォオド夫人の魂を気高く保つという矜持は感じられなかった(むしろ、少佐の苦悶を主題にしてしまっているのだが、シラアでは少佐はどうでも良いただの愚物になっている)。

という記憶だったのだが、オペラでも少佐は愚物だったようだが作品は良かったようだ(ヨンチョバだし)。

ヴェルディ:歌劇「ルイザ・ミラー」(モンセラート・カバリエ)

シラーの原作通りなら、モンセラカバレはミルフォオド夫人にふさわしいが、もちろんルイザなのだろう。


2022-04-29

_ 2つのiFrameをマウスホイールで同時にスクロールする

同時に良く似たページを比較して眺めたいので、方法をいろいろ考えた。 それぞれをスクロール可能なDIVに組み込めば、同じWindow内の要素同士なので、ほぼ何も考えなくても、片側のDIVのスクロール量をもう一方に与えれば良いので簡単だ。 が、それぞれが独自にJavaScriptを読み込んだりするので、htmlタグ全体を読み込みたい。

となると、iFrameを2つ並べてそれを使うしか、ちょっと方法を考えつかなかった。 で、MDNを読むとwheelイベントというWeb標準があるので、それを利用して、片方のiFrameで受信したwheelイベントのdeltaYを親Windowに与えて、親Windowはもう片方のiFrameのwindowをスクロールすれば良い。簡単じゃん。

と、Firefoxで実装したわけだ。おお、ちゃんと同期する。し、(比較したいわけなので)片方を余分にスクロールしたければスクロールサムをドラッグすればそのiFrameだけ動くので具合も良い。

が、残念。

EdgeでもChromeでもwheelイベントのdeltaYは正しいスクロール量ではない。

なんじゃこれ? と、MDNを良く読むと、ブラウザーの実装ではwheelイベントのdelta*を反映する必要はないと書いてある。だから、scrollイベントを使え。

とはいえ、単純にscrollイベントを使うと、移動量を変えたい場合に処理ができない。ということは、スクロールバーを使ったスクロール時は無視する必要がある。

結局、ホイール操作からスクロールバー操作に人間の動作が移る最短時間を500ミリ秒と適当に判断して、以下のような実装となった(Coffeeで記述している)。

 <iframe data-opposite-id="B" src=... ></iframe> <!-- こちらのHTMLは自身をAと認識 -->
 <iframe data-opposite-id="A" src=... ></iframe> <!-- こちらのHTMLは自身をBと認識 -->
# 親Window側
window.addEventListener('message', (e) ->
  try
    msg = JSON.parse(e.data)
  catch e then return
  if msg.command == 'scroll'
    document.querySelector('iframe[data-opposite-id="' + msg.sender + '"]').contentWindow.scrollBy(0, Math.ceil(msg.deltaY)) # Math.ceilは不要だとは思うし、おそらく余分にスクロールする
)  
# フレーム側
wheelTimer = null
currentTop = null
window.addEventListener('wheel', (e) ->
  if wheelTimer
    clearTimeout(wheelTimer)
  if currentTop == null
    currentTop = window.scrollY
  wheelTimer = setTimeout(() ->
    wheelTimer = null
    currentTop = null
    , 500)
  )
)
window.addEventListener('scroll', (e) ->
  if wheelTimer
    id = document.querySelector('body').dataset['myId'] # A or B
    data = {command: 'scroll', sender: id, deltaY: window.scrollY - currentTop}
    origin = /^[^:]+:\/\/[^/]+/.exec(document.location.href)
    window.parent.postMessage(JSON.stringify(data), origin[0])
    currentTop = window.scrollY
  )
)

もちろん、もっとスマートな方法があればそれを知りたいところ。


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