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日々の破片

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著作一覧

2019-05-19

_ 新国立劇場のドン・ジョヴァンニ

べらぼうに歌手が良い。それも全員という驚異的な舞台だ。

特に音楽的にはいなくてもいいなぁと思っていたドンオクタービオの1幕の歌声の美しさはびっくりだ。

が、少なくとも1幕に関しては、指揮が遅すぎて血が立ったまま眠ってしまうくらいに退屈だった。歌手が抜群なのにもったいない。


2019-05-18

_ ハムレット

シアター・コクーンでハムレット。

シェークスピアは本ではがんがん読んでいるが、舞台で見たことない(オペラならオテロだろうがファルスタッフだろうが観ているけど、演劇とオペラは異なるから範囲外)ので子供に誘われてハムレットを観に行った(蜷川のを観たような記憶もあるが、思い出せないので多分観てない)。

というか、演劇を観るのって相当前に三〇〇を観たのが最後で数十年ぶりではなかろうか。

抜群におもしろかった。シェークスピアだからつまらないわけがないのだが、それにしても良い舞台だった。

ハムレットはハムレットだからどうでも良いかなぁと事前の情報をまったく調べずに観始めたのだが、舞台は1940年あたりに設定してあって、いきなり国境警備兵の交代のシーン、スーツを着たホーレショと続く。ホーレショ、良い役者だな。

ハムレットも良い。最初、どうもこういう演技を観たことがあるという既視感にとらわれまくったが(そして思い出せないのだが)悪くない。ときどきセリフを度忘れしたようなそういう言葉につまる演出のような、でも思わず照れ笑いしてやはり度忘れかも、という感じなのだが、そういった所作含めてハムレットっぽくて実に好感が持てる。岡田将生という人。

舞台でのセリフ回しという点ではガートルードの人が圧倒的。

だが、なんか突っ立っているだけでえらく存在感があって、フォーティンプラスの人がえらく気に入る。確かにあの姿を観たら、ハムレットならずとも、国はあいつにやる、と言わざるを得ないのではなかろうか。

それにしても、おれが読んだことがあるどのハムレットとも違う……と途中まで思っていたのだが、(小田嶋は少なくとも読んだような記憶がある)、もしかしたら完全に読んだのはみなもと太郎だけではないかという疑惑が渦を巻く。そうでなければ、フォーティンプラスのことがまったく記憶から抜けている理由がつかない。

それにしても、みなもと太郎版のできは抜群だったようだ(もし、本当に戯曲そのものを読んだことがないのだとしたら)。原作から改変しているのは、亡霊が本当に父親でクローディアスの件は本当に暗殺の陰謀だったのか、それとも亡霊は悪魔で父親のふりをして対立させることで国を破滅させようとしているのか、というすべてに懐疑的な原作にはあるらしきハムレットらしい悩みがまったくないことと、フォーティンプラス、そして多分、クローディアスの2人の子分をハムレット自身の陰謀で葬り去るところだろう(どのみなもと太郎一座の役者がクローディアス(だよーん顔)、ホーレショ(頭悪そうな人)、レアティーズ(口が尖った人)、法務官(はげ)が演じたかこうやって思い出せるくらい、みなもと太郎版は記憶にあるので、間違いないだろう)。

【みなもと太郎の世界名作劇場】 ハムレット(みなもと 太郎)

(買いなおすことになる)


2019-05-17

_ PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話 読了

クーリエジャポンの紹介記事というか抜粋が抜群におもしろかったので、PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話を買った読んだ。

最後の3章くらいのああ西海岸の70年代文化圏の人なんだね、という箇所を除けば(いや、ここも含めても良いのかな。それにしてもボームのホロニズムがいきなり出てくるのには驚いたが、西海岸だなぁ)抜群におもしろかった。翻訳もうまいね、と思ったらベゾスやウォズニャックの本でさんざん読んできた人だった。

ジョブズの友人のローレンスはジョブズからピクサーの財務責任者になってくれと電話を受ける。シリコンバレー風の企業弁護士からキャリアを開始しているローレンスにはピクサーというのは全くの興味の埒外だし、オフィスは石油タンクの前のぱっとしないうえにゴールデンブリッジの向こう側だし、しかも業態もこれまで扱ったこともないエンターテインメント圏の企業ということでしり込みする。

が、実際にピクサーが製作中のトイストーリーの冒頭を観させられて感銘を受けて、結局引き受けることにする。

いっぽう毎月数100万ドル(億円だ)が回収のあてなく単に出て行くピクサーにジョブズはいらいらしている。さすがにマネタイズできないと持たない。ネクストもだめ、全然だめな状態で落ち着かない。1994年頃のことだ。しかも投資額がでかすぎるのでピクサーの従業員にストックオプションを渡してもいない。いっぽうピクサーの従業員は一生懸命に未来のアニメを作るのだと頑張っているが、ストックオプションがもらえていないので金銭的には不満の固まりでもある。落としどころを探すのもローレンスの仕事だ。

この本が抜群におもしろいのは、テクノロジーでもアニメでもなく、マネタイズと契約が主眼な点にある。しかも、バックグラウンドに、テクノロジーとアニメとディズニーがある。興味の種が尽きない。とにかく、落としどころをどう設定するか、そこへ向けてどう回りを巻き込むか、仕組みの設計と実装の話なのでおもしろいことこの上ない。

もちろん、IPOが成功し、トイストーリーは大成功、ジョブズはビリオネアになり、その後のすべての作品がほぼ大成功、ピクサーの残念な話はジョンラセターの失墜くらい(というのは現在の話で、本書の範囲ではない)だ。

そのジョンラセターは主役側ではないが、2回、目立つ登場をする。

1つは、ピクサーというブランドをディズニーに認めさせるかどうか(その条件によって、ディズニーとの不平等条約を解消できるかどうかという論点)で、あっさりとブランドを守るという側に立ち、ジョブズも賛同する。

もう1つは、クリエイティブへの投資判断を誰がするかという株式が公開された企業でのどうやらきわめて重要な論点で、おれたちのチームに決まってるじゃんと(映画業界的には)あり得ない選択肢を提示するところ。

本人が書いているからある意味当然なんだろうが、とにかく著者のローレンスがえらくいいやつで、いいやつなだけに、出てくる人間すべてが魅力的に描かれている(裏側でえらくやっかいなことがアイズナーとジョブズの間で繰り広げられたことが後になって触れたりはしているが、登場するシーンでは、全員、みんな魅力的ないい奴ばかり)ことで、このあたりも読んでいて気分良いのかも知れない。

あーおもしろかった。

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話(ローレンス・レビー/井口耕二)

アニメとマネタイズというのは実は物語的に相性が良いのか、映像研とか銭(最初の章)とか、おもしろいものが多い印象を受ける。

映像研には手を出すな!(4) (ビッグコミックス)(大童澄瞳)

銭 壱巻 (ビームコミックス)(鈴木 みそ)


2019-05-13

_ ラピスラズリ

山尾悠子のラピスラズリ読了。

なんかKindle版の安売りしていたから、買って読んだのだった。

といっても、山尾悠子の作品はこれが初回だ。なんとなくだが、多分名前の悠の字のせいで尾崎翠の現代版なのかなとか考えていたが(全然字面は似ていないが、おれには同じカテゴリの字に見える)、大きくは違わなかったが、全然違った。

むしろ読んでいる間は、相当、中井英夫の悪夢の骨牌などの擬ヨーロッパ文学臭を感じていた。あるいは、森川久美だ。

青色廃園(傑作集) (花とゆめCOMICS)(森川 久美)

1980年前後の花とゆめやそれより少しあとのプチフラワーの世界に少し通じるものがある。現実との折り合いの悪さという主観が終末の予兆という客観に至る物語だ。

もっとも、文学なので構造はより複雑で奔放だ。特に今語っている時点からの未来をどんどん予見していく前のめりにつんのめっていくような不思議な語り口の独特さがおもしろい。時間の行き来によりある人物が異なる人物と重なり、ついには国までまたがってしまい、近未来のようでありながら、いきなり16世紀に引き戻される。

それにしてもアッシジの聖フランチェスコの登場で、リストやロッセリーニのような感覚に相通じるものがあるようにさえ思った。

ラピスラズリ (ちくま文庫)(山尾悠子)

聖フランチェスコには思い出がある。神保町というよりも小川町のあたりの洋食屋から出たら、近所の2階の和風の窓の格子に半身をもたらせながら伸ばした片手で1階の屋根に集まった鳥にえさをやっている浴衣の青年がいて、ああ、あれは聖フランチェスコなのだなとその一瞬、世界の様相ががらっと変わったのだった。


2019-05-11

_ フルートと現代(近代)音楽

子供に誘われて杉並公会堂でオパキャマラードの演奏会。

カレッザという作曲家の作品がおもしろい。旋法がドビュッシーかラヴェルのようで、印象派の未知の作家だなと思っていると無調になったりする。様式としては20年代(と書くと、すでに2020の可能性があるのか)っぽい。

おもしろい。最初は3回わかりやすいメロディーが出てくるロンドのようなソナタのような微妙なやつで、第2主題というよりも、ロンドのつなぎの部分と感じたわけだが、は、無調になる。長いパウゼの後にアタッカ(なんとなく、本来はパウゼ無しに続くように感じたのだが、実際には、ちゃんと分離しているのかも知れない)で2部目が始まると速度が上がって遠くへ進んでいく。ちょっとスクリアビンの4番のような組み合わせだなとか感じるのだが、相当好きだ。

次に、アルトフルートの全音域を使うという説明が最初にあってから、マウアーという人のソネット。まあソネットという楽式があるわけではないので、セレナータみたいなものか? と思いながら聴いていると、ジャージーで、もしフルートではなくサックスだったら普通にトムスコットあたりの曲のように感じる。夜は夜でもマンハッタンの夜だな。これも悪くないというか、おもしろい。

休憩時間に、スマホをいじっていたら、隣の腰掛けている二人組の会話が聞こえてきた。

年配のほうが、なんで誰も知らない現代音楽とかで、モーツァルトとかをやらないんだ? と若いほうに言っている(再構成している)。

すると若いほうが、うーん、誰も知らないといっても、音大で管楽器やったら、普通だからなぁ。と答えた。

っていうのは、課題曲にしても授業でやる曲にしても、当たり前だけど、その楽器の技術を学ぶわけじゃないですか。実質金管のフルートが発明されたのは1858年(だと思うが聞き違い、覚え違いの可能性はある)だから、その技術を駆使する曲といえば、当然それよりも後になるし、その意味ではヴァイオリンやピアノとは違いますよ。

もちろんモーツァルトのフルート協奏曲みたいなものはあるけど、あのフルートはいまのフルートではないし、演奏して技術的におもしろいわけでもないからなぁ。フルートを聴かせるとしたら、良い選曲と思います。

なるほどなぁ、と年配者が納得するのと同じく、おれも納得した。

そういえばバスフルートのやつでも、ユーフォニアムの曲として聞いたこともない作曲家の曲をやっていたけど、同じことなのだろう。

すると、もしかして、ベートーヴェンの時代、あるいは後になってリストの時代には、なんであいつは、自作の妙な曲ばかり演奏するんだ? ハイドンやモーツァルトが聴きたいのにな。とか言い出すやつがいて、それに対していやいやピアノフォルテの音を生かし切るには、今の作品が必要なんですよ。だって、こないだ改良されたんだから、とかいうような会話があったのかも知れない。

おもしろかった。


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