著作一覧 |
ちょっと料理について書いてみたり。
料理は簡単なほど美味しい―食べる悦び・つくる楽しみ(三宅 菊子)
僕のバイブルは2冊で、1つは三宅菊子(追記とリンク:an-an調の生みの親だったらしい。初期an-anのライターだってのは知っていたが)の料理は簡単なほど美味しい(もう1冊はいささか問題がある可能性があるので、出さないけど)。天井桟敷の人々でアルレッティが言う。C'est tellement simple l'amour.料理もそんなもんだと。だから簡単っていうのはシンブルじゃなくてサンプルなんだけど、それはまったくの余談。余分な手間をかけなくても美味しいものは美味しいのだから適当にやりましょうね、という感じ。だから小匙何杯も出てこなければグラム表記も出てこない。だから料理の本というよりは料理の作り方を中心に1篇をまとめたエッセ集として読むこともできる。
三宅菊子ってどういう人かは知らないが、天井桟敷の人々からの引用からわかるように、結構なおばあさんかな? 1938年生まれだそうだ。考え方は前書きの1文で大体見当がつく。
店で食べるにしても、自分で料理するにしても、かけたお金や手間と味のバランスということがあると思う。
合理主義者だ。合理主義のおばあさんというのは、実は結構いる。カバーの折り返しに推薦文を書いているのが宇野千代だけど、つまりはそういうことだ。合理主義者のおばさん(書いた時点)が、多分想定している若い働く女性(専業主婦向きとは到底思えない)に、合理的な食生活をしろと教える本、と考えるとしっくりする。でも別に働く女性だけが対象というわけではない。働く男性でも問題あるまい。
1982年に第1刷が出て僕の手元にあるのが1984年の第6刷、でアマゾンで現役というわけだからロングセラーでロングテールな本である。
全体は10章に分かれていて、各章ごとに10篇程度の料理が出ている。
たとえば、3章は『海の幸いろいろ』。この中には『カレイの煮付けは簡単さが命』『焼き魚ニック・アダムス風、他』『魚ステーキ』『お刺身と我われシロウト』『簡単タタキ入門』『お刺身の翌日料理』というような感じ。
実践する場合には、この本を片手に料理をするというよりは、まずこの本を読んで料理の概念を知った上でアドリブでやればよろしい。結局、余分な味付けとかするから失敗するのだ。素材から味が出るのだから、後は適当にやればよろしい。
とういわけで、簡単なほどおいしい精神に則った僕が良く作る料理について書いてみたり。
妻が肉を食わないので、肉料理は味見もしないで作る。うまくできればおいしいが失敗すればまずい。だから、ここぞという場合は自分で作る。子供にも食わせてるからそんなにはずれることはあるまい。
で、いろいろ作るが、1番簡単でそれなりに美味しいのが、『サトーさんのシチュー』改。サトーさんという三宅菊子のパートナーの男料理を僕がアレンジしたやつだ。サトーさんのも簡単だが、僕はもっと簡単にするためにツールを使う。そのためにアレンジが必要となったとも言える。
THERMOS 真空保温調理器 シャトルシェフ チタンシルバー KPY-3000 TSL(-)
実際に僕が持ってるのはもっと古いバージョンだけど、アマゾンで見ると結構種類が出てるみたいだが、ツールは断熱調理器だ。
まず、牛のスネ肉を買ってくる。タンでも良いし、テールでも良いけど。とにかく脂肪分が少ないとこのほうがアクやら脂やらが浮かないから作るのが簡単になってよろしい。スネ肉はでっかなスーパーとかへ行くと売っている。比較的安いからたくさん買ったほうが良い。
フライパンに脂を引かずに、熱して転がす。表面の色が変われば良い。
火を止めて鍋に入れ、水を適当にひたる程度まで入れて火にかける。僕はこの時、庭に生えてる月桂樹の葉を入れるけど。
次に玉ネギを1個から2個くらい皮を剥いておおざっぱにミジン切りにする。大雑把で十分。どうせ最後には溶けてしまうから。
で、火を付けてからさっきのフライパン(肉から出た脂が少し浮いているのでそれで十分)に入れてかきまぜて適当にしんなりさせる。鍋に入れる。
ジャガイモを3個くらいタワシで洗って、皮は面倒だから剥かずに(タワシでこすってもそれほど剥がれるわけではない)、1/3か1/2くらいに切ってフライパンで少し炒る(いる)。というか転がすというか。多分、意味は無いけど。で、鍋に入れる。水は常に材料が全部浸る程度になるように足したりして調整する。シチューにとろみが欲しければ、ジャガイモは男爵とかの溶けやすいやつを使う。ジャガイモをがしがし食べたければメイクイーンにすれば良い。両方混ぜても良い。
次にニンジン1〜3本(ニンジンは結構サイズにばらつきがあるのでその時のサイズによって加減する)を乱切りにしてからやっぱり炒って鍋に入れる。
セロリやピーマンがあれば、これも同じ。重要なのは鍋に収まる最大の量を入れるように調整することだ。
で、しばらく沸騰させてアクとか脂を適当に取る。そんなには出ないのであまり神経質にはやらない。
で、最後にトマト缶を1缶分突っ込む。無ければ入れない。で、ぐつぐつしばらく沸騰させておく。
で、蓋をしてから断熱器へ入れる。
放置数時間。
一度取り出して再沸騰させてまた断熱器(気分によってはこの時点で赤ワインを入れてみたり日本酒を入れてみたりする)。
で一晩放置(場合によっては食べちゃうけど)。
で、食べる都度一度沸騰させて、そのままよそって蓋して断熱器へ戻してから食べる。
食べるときに塩コショー(たまたまあればクレイジーソルト使うと楽だ)したり、(子供っぽい味で食べたい時は)ウスターソースを入れてみたりする。鍋のほうには味付けをしないほうが良い(上で書いたけど酒の類は鍋に入れるけど。アルコールを飛ばす必要があるし)。
これで2〜3日のおかずになる。時々、再沸騰、断熱器はやったほうが良さそうだ。
これは料理だろうか? 加熱しているから調理はしていることになる。食べる時にしか調味はしないから料理というほどのものではなさそうだ。
でも、肉や野菜は半分溶けたダシガラになってシチューというかスープのほうに味が出ているから、調理によって味に変化をつけたという意味では料理と言ってもいいだろう。
とか、そんな感じ。
ジェズイットを見習え |