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結局、中はないようだ。
で、買って読んで、子供にやった。
で、肺の中に咲く蓮(上巻でも言及されてたが)に子供が興味を持ってるようなので、カーロフじゃないボリスのヴィアンを貸してやる。
全集版の伊東守男訳がすぐに出てきたので(書影は文庫版)、そっち。
だが、おれは、この伊東守男訳は嫌いだ。言葉の選び方ががさつで、しかも意味が通じないところがところどころある。
学生の頃、アテネに通っていたわけだが、そこでジャックなんとか(さすがに苗字は覚えてないな。プドゥーとかだったような)が、生徒達に、まともなフランスの小説を一冊やるから、おめぇら1人1人読みたいやつを挙げてみろとか言われて、バルザックとかモーパッサンとか古典ばかり出てくるわけだが(あるいは逆にロブグリエとか。サガンもいたかな?)、そして思うにそれはもっともなことなのだが、おれは今思うに赤面ものでもあるのだが、好きなものはしょうがないので、ボリスヴィアンのアンダンの騒乱が読みたいとか言ったわけだ。
そのアンダンってのは、知らないが、ボリスヴィアンは最高だ。君が彼を挙げてくれておれはハッピーだ。もちろん、日々の泡をやろう、ということになった。そりゃそうだよな。でもおれがアンダンの騒乱を好きだというのはしょうがない。でもジャックの気持ちはわかる。もし、おれが日本語学校の教師で、生徒に日本の本を一発やるからお前ら上げてみろと言ったら、村上春樹のパン屋襲撃とか言い出すやつがいるような状況だろう。他の生徒のことも考えたら、パン屋はないよなぁ、というわけで厚さも手ごろで知名度も高いところで風の歌を選ぶというような感じかな(でもおれが好きだったのはピンボールだけど)。むしろ時代的には、織田作之助の六白金星とか言い出す生徒がいて、織田作之助はいいねぇ、でもやるなら夫婦善哉ですな、という感じのほうが近いか。
で、その頃には、新潮社版はすでに絶版か版元品切れになってたはずで、全集版の伊東守男を読んでたのだが、意味がわからないところが結構ある。ところが、原書をジャックの解説付きで読むと、実にクリアにわかっていくのであった。結局、読んで意味がわからないところは、そういう特殊な表現なのではなく、単なる誤訳なのだった(特に印象的だったのがスケートリンクでの大虐殺のあたり)。というのもあって、早川版はちょっと辛い。それにおれの受ける印象では伊東訳は右岸っぽい。
だいたいにして、題が問題だ。desはjoursにかかるんだから、うたかたの日々ではなく、日々のうたかただし、それにうたかたではなく泡じゃなきゃならない理由がある。少なくても現在の日本語では、石鹸のあわぶくをうたかたと表現することはない。泡は泡だ。
トムとジェリーのジェリーが台所の流しで泡まみれになって遊ぶシーンがある。でもこの泡は石鹸の泡じゃなくて、窓から差し込む陽光の泡だ。で、陽光も日々も同じ言葉だ。したがって、題は日々の泡でなければならない。
はじめてボリスヴィアンを手にしたのは、そのころからさらに4年くらいさかのぼる。高校生の頃だ。図書館におれが大嫌いなペイネの絵を使った本があって、ペイネは大嫌いだが、題名があまりに奇妙なので手に取らずにはいられなかったのだった。それが日々の泡。
(書影は文庫版。よくぞ復刊してくれました、という感じである)
これはびっくりした。言葉を使ってこういう表現ができるのか。サルトルやカミュではない、まったく別の方法による実存主義文学ってやつだ。えらく気に入って手元に置いておきたかったが、その時点ですでに入手できない状況だったのだが、その後、なんの勘違いか早川が全集を出したので、そちらを買い出して、結局、手元には伊東訳のうたかたの日々になったのであった。しかし読むたびに、こんなんだったかな? と疑問は膨らむばかり。で、原書を読む機会を得て、うたかたは弾けることになった。
で、それからしばらくして、流行通信か何か読んでたら、私の本棚みたいなコーナーで、プラスティックスの佐藤ちかが、「日々の泡」とか書いてて、なんか恥ずかしくなったのであった。だって、日々の泡は売ってなくて売っているのはうたかたの日々なんだから。でも、まあ、そういう内容の本ではあるなぁとも思った。
そういえば、ボリスヴィアンのシャンソンに、僕はスノッブってのがあったなぁ。ああ、そんな感じ。いやだね。他人にスノッブと言われたら、もうスノッブじゃない。そういうスノッブのアイテムなのか。まあ、確かにそうだな。それが、このプラスティックから受ける印象か。
で、なんとなくそのまま本棚の奥に埋もれて数10年が経過したころ(新潮文庫版は、思わず買ってしまったが読み返さなかったなぁ。で、こっちを子供にやろうと思ったら見つからない)、突然、マンガ版が出る。
うひょーはずかしー、しかも岡崎京子だし。と思いながらも、つい買ってしまって、こちらはちゃんと読んだり。しかしもう読んでも特に思うところも無く。というか、これは伊東守男をさらに劣化させたバージョンにおれには感じる。すでにスノビッシュですらない(なんか、相乗効果が望めそうなのにも関わらず、かえって潰しあってしまったような。というか言語表現をどう絵で表現するかの難しさってのはあるだろうけど)。まあ、それは良いことのような気もするけど、高校生の頃、初めて新潮社版を手にしたときの驚嘆からはずいぶん遠くへ来てしまったものだ。
というわけで、高校生の頃に読んどいてよかった。
船を建てるも、中学生か高校生の頃に読めば、もっと幸福だったろうな。
チェリーが歌う、ドゥドゥドゥは、ワイルドサイドを歩け。
ロバンソンはこれかなぁ?
GASPARD ET ROBINSON ガスパール~君と過ごした季節 ガスパールキミトスゴシタトキ [DVD](ジェラール・ダルモン)
多分、ファスビンダーは関係ないとは思うが、おれはファスビンダーが好きだ。
スリッツとかエイドリアンシャーウッドとかが、渋谷にやって来るなんて少しも知らなかったよもすえだ。
かずおさんたちは行くのだろうか?
もし、行くんだったら、おれも誘ってください(1人で行くほどの元気はない)。
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お、全然知りませんでした。今、へぶん兄に確認中です。夏の終わりのニュー・ウェーブ恒例、って、なんだか良いですね。
よろしくお願いします。<br>確かに、実に夏の終わりっぽいですねぇ。