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私の好きなADGの表現に「靴下を煮〆た色のコーヒー」という言葉がある(靴下を煮〆た味の珈琲かも)。
味わい深い。まさに。
と、ビジネスが泥臭くったってソースが泥臭い言い訳にはならんと、しかし今日淹れたコーヒーは不味いの併せ技から思い出した。
病める巨犬たちの夜 (1979年) (世界ミステリシリーズ)(A.D.G)
ははは、たかが、地方右翼が書いたアナルシなセリノワールが11,000円か。なんかおかしいね。と、マーケットプレイスの価格を見て思う。が、最高値は76,000円だ。
だから、誰も買えないだろう。だから、30年も前の一期一会の記憶を頼りにでたらめざんまいに再構成した病める巨犬(おおいぬと読むのだよ)の夜を騙ってもばれることはないだろう。
主人公は、売れないハードボイルド作家だ。しかし、ニューヨールならいざ知らず、おふらんすの地方都市でハードボイルド作家と自称しても、なにそれですか、となるに決まっている。だいたい、村の連中はハードボイルドと発音できない田舎者ばかりで、全員が全員、鼻にかけた声でアールボイルドとぬかしやがるくそったれ、というような全編が罵りと呪詛に満ち溢れた一人称で語られる地方政治家のスキャンダルに巻き込まれた三文作家の命が危ない冒険の物語。
おふらんすの文学の香りがその下劣極まりなさの極みを極めた文体と口調と造語、新語、卑語、俗語のオンパレードで逆にかもされている。かもすぞおりぜ。日影丈吉の訳は見事だ。読んでいて違和感がない。
今日もまたくそったれでしみったれな新聞野郎のところで、はなくそよりも臭い鼻毛ほどの重みもない、うめくさ記事を書いてやって、石より固い3日前の売れ残りのバゲットが4分の1本も、かろうじて売ってやるからありがたく思えといわんばかりの、くそぱんパン屋の親父から、やっとのことで恵んでもらえる程度の原稿料で書いてやって、日が暮れて、家に戻ればいつものばばあが、くそよりまずいソーセージを煮てやがる。おい、ソーセージなんていうドイツのナチ公のくいもんはオレは食わないとてめえには何度言ったらわかるんだと怒鳴りつけてやったら、おれの稼ぎが悪いとかなんとかぐだぐだぬかしやがるもんで、ああ、そうそう、悪いのはどうせこのおれさまだ、と軽い頭を下げられるだけ下げてやったりして、まあ、そんな按配で、とりあえず、スプリングが突き抜けたソファに座ってオカマを針金で掘られながら、おいばばあ、さっさと、靴下の煮〆を出しやがれ、おれは疲れてるんだと、とりあえず、売れるあてもない本物のハードボイルドをふにゃちんふらんす野郎、まあ、おれもそうなわけだが、のためにタイプライターへ向かっているところにだ。
窓の外からこっちを睨んでいるいやみな野郎と眼が合った。おい、そこのひょうろくやろう、おれの顔見ておもしれぇか、これならどうだ、とべっかんこをしてやったら、野郎、顔をそむけて逃げ出しやがった。でも待てよ? ありゃ、どこかで見た覚えがある。そうだ、若きマルクス主義者の党の事務所に取材に行って、くだらねぇ御託を聴いてやったときのことじゃないか……
というような感じで、物語は進む。
ジェズイットを見習え |
もぬすげく読みたいです>煮しめた巨人<br>前日の話ですが、"I Neet your love"くらいのタイトルでも膨らみ増すねえ(笑)。我はニート。
煮しめた巨人は、固くて食えなさそうな気がする……(でも踵は矢が通るくらいには柔らかくてうまいとか)いずれにしろ、煮る前に靴下は脱がしたほうが良いですね。<br>それはそれとして、図書館とかにはあるかも。早川のポケットミステリ(が、78000円かよ)です。>巨犬<br>>我はニート。<br>うん。意外にも、思春期を迎えた乙女のように膨らんだ。ちょっと退屈してたみたい。
何をどう間違ったんだか巨人に見えてました。わはは。失礼。ポケミス8万円、ってすごいなあ。