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こないだ見損なったソクロフの牡牛座を観た。
右半身不随となったレーニン(というか、本当にロシアの役者の層の厚さというのは不思議きわまりない。どうして、こうもレーニンみたいなレーニンとかクルプスカヤ(違うかも知れないが面倒なので調べない)みたいなクルプスカヤだのスターリン以外の何者でもないスターリンとかが出てくるんだろう)が、うだうだしたり、怒ったり、ご機嫌になって草むらを這ったり立ったり倒れたり、車に乗ったり、カメラの前でポーズを取ったり、杖をついたりする。最後、ユダヤ人とは話が合いそうだなとか言いながら、明日のジョーの最後のように静かになる。
スターリン(ヨシュアではなくカインだとかいう言葉を思い出したり)が、白いぱりっとした服を着て、洒脱に登場。
ああ、なんでこいつに権力を与えてしまったのか、なんとなく理解した。20年代のスターリンは文句なくかっこよかったのだ。
はげちょろげたブハーリンとか、くしゃおじさんみたいで眼鏡のユダヤ人とか、間抜けっぽい髪型(イレイザーヘッドみたい)のジノヴィエフやカーメネフや、学者っぽいラデックとかと違って、スターリンはかっこ良かったのだ。ばかだなぁ。
「杖を書記局からプレゼントだ。偉大なる師に偉大なる弟子から、と銘を打ちたかったが、一人反対するやつがいてできなかった」
「ユダヤ人だな?」
というわけで、このころはまだ全会一致原則が貫かれていたようだが、すでに孤立していたことを匂わせる。
だが、師だの弟子だのばかげているのだから、本来は全員が反対すべきだったのだ。というわけで、モスクワの空気というか風向きを匂わせながらスターリンと会話が始まる。
最後、会見が終わる。と、スターリンはテラスへの戸口ではなく、逆にバルコニーの端へ進む。「そっちじゃないぞ」というレーニンを無視し、美しい庭を眺める。「ここは美しい」 とまるで、すでに手に入れたかのようだ。
大木の問い。
「大木が崩れるのを待つか、どかすか?」
「もう一つの方法がある。切り刻むのだ」
レーニンの顔は曇っただろうか。(このスターリンの第3の選択は、未来のトロツキーに対する態度表明というよりも、僕には、現在のレーニンに対しての恫喝に聞こえた。が、批評をみるとそうは取られてはいないようだ)
比較的最初。レーニンの部屋の扉を細く開けてのぞきこむ医師。眼鏡、山羊ひげ、ユダヤっぽい、まるでそこに直接は名指しされない反対者の幻影かもと思った。
周りは敵だらけだ、と言いながらベッドの脇に寝そべる妹。
まるで雌牛のように愚鈍そうで、テンポがのろいクルプスカヤ。頼まれていたロシア刑罰史と、マルクスの最期を調べたノートを聴かせようとする。
マルクスの最期を読もうとして、処刑された男についてのメモを読む。ぎょっとするレーニン。間違えたといってマルクスの最期をもう一度さがす。娘が戸口にいたエンゲルスと(ラマルクかな、忘れたけどもう一人)が入ってくるとすでにマルクスは死んでいた。
「エンゲルスは準備していたようだ」
シャンデリア。
食事。スープ。
シャンデリアに火が灯る。火が灯っていることについて怒る。
車で狩りへ出発するシーン。2階のベランダではしゃぎまわり、クルプスカヤの指示を無視するメイド。
「労働者の……」と車中で語るレーニンに対して冷笑的な運転手。
ざらざらの風景。
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