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日々の破片

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2008-10-03

_ 世界の測量

さて、世界の測量を読了した。

世界の測量 ガウスとフンボルトの物語(ダニエル・ケールマン)

抜群におもしろいではないか。というか、ドイツ文学は今年で2冊目だ。といっても最初の1冊はオーストリーからオーストラリアへ向かった一家の子孫が書いた本だから、ドイツ文学というと違うだろうけど。ちなみに、本泥棒という本だ。

フンボルトとガウスがベルリンで出会い、写真撮影に失敗するところから物語ははじまる。

フンボルトってどこかで聞いたことがあると思ったら、フンボルトペンギンのフンボルトなのであった。というように南米を探検し、測量し、地球の底が熱の塊だということを調べた人だ。一方のガウスはガウスだ。この二人の人生が交互に書かれ、邂逅し、意識の流れが統合され、ガウスの息子に受け継がれて新大陸へ向かうところまでが語られる。実に巧妙な物語で、しかもおもしろい。

フンボルトが南米でアマゾンの源流に興味をかきたてられるきっかけとなるのが、狂気にかられ帝王を宣言し、どこかへ消え去ったアギーレだ。

アギーレ・神の怒り [DVD](クラウス・キンスキー)

そこで、はじめて、おれは、ヘルツォークという作家のことが少しだけ理解できた。

ヘルツォークは、信じがたい才能の持ちぬしで映画の世界のモーツァルトのようなファスビンダーと、信じがたい才能の持ち主だった(今はそうではないらしい)まるで映画の世界のヴァーグナーのようなジーバーベルグの間に挟まれて、凡庸な大口叩きとしか思っていなかったのだが。

短編は違うのだが、いくつもの短編は、他の作家とくらべて圧倒的に異質な世界があり、語り口が巧妙であり、弛緩がない。しかし、長編はどれひとつとしておもしろくなく、凡庸で、冗長で、退屈で、これっぽっちもひらめきのかけらもなく、映像には光も影もなく、どうしてこんな作家が好まれるのか不思議でならなかった。

人は作品に記憶を照射し、それを観るのだ。

ドイツ人がヘルツォークの南米を舞台にした作品を観るとき、それはフンボルトの栄光を観ていることに他ならないのだな、と気づいた。

そして、それは、世界の測量が2万部売れればベストセラーのドイツ文学界で120万部売れた(と後書きに書いてある)ということと繋がる。

かように、世界は線で結ばれている。

そして、今、フンボルトについての物語を得たおれが、たとえばアマゾンの奥地にオペラハウスを建てようと船で山を越えた男の映画のシーン、デッキシーン、トスカニーニのシーン、船のシーン、そういったものを思い出すと(思い出せるような絵は作れるのだから、無能な作家というわけではないよな)、それがいかに輝かしい映画なのか、それがどれだけ豊饒な映像体験なのか、よくわかるのだ。

フィツカラルド [DVD](クラウス・キンスキー)

ところで、なんで、たとえばリーマンの名前を出さなかったのかな? おそらく、読後のお楽しみとして、あのエピソードのあれはきっと誰(どこ、何)だよね、とか読者同士の話のネタ用にとっておいたのだろうな、という個所がいくつもあって、そのあたりの計算が、良き小説なのだろうと感心した。測量しながら書いたのだろう。

_ String#force_encoding

はじめて使った。

以下の状況。Windowsを利用しているので、出力とアプリケーションが利用するのは、encoding: cp932 な状況で、今、RSSを読む。するとRSSはutf-8でエンコードされている。

そのままの状態でRSS:Parserに食わせると、ASCII-8BITなのでたまたま文字コードの組み合わせによってCDATAセクションのおしりが見つからなくなりそこで異常終了する。

open-uriのopenに、r:utf-8と食わせると、そんなパラメータは知らないと怒り出す。短気なやつだ。(URI::HTTP resource is read only.)

はて?

というときに、読み込んだ文字列にforce_encodingを利用して、これはASCII-8BITではなく、utf-8だと教えてやると、後はうまく動く(表示するときは、encode('cp932', 'utf-8')が必要なのは当然)。

本日のツッコミ(全4件) [ツッコミを入れる]
_ naruse (2008-10-03 05:58)

まぁ、そういうときに String#force_encoding は使うものなんですが、<br>これは open-uri のバグ (正確には open-uri がまだ Ruby M17N に対応していない) ということになると思います。<br>というわけで、これは追々直します。

_ arton (2008-10-03 09:30)

>これは追々直します。 <br>よろしくお願いします。

_ はら (2008-10-03 19:05)

やはり面白いですか『世界の測量』。気になってたんですよね。買うしかあるまい。ドイツ文学というと『香水』が好きです。「フィッツカラルド」は見たけど忘れちゃった。でも、このカバーの写真だけでメシ三杯食えるな。

_ arton (2008-10-03 23:29)

小説としての構成力、史実と奇譚の混ぜ方、どれを取っても素晴らしいです。僕にとっては明治以降の山田風太郎に並ぶ高い評価。痴呆となったカントをそれと知らずにガウスが訪問するシーンは涙なくして読めないほどです。というような感じ。<br>香水は読んだことないですが、傑作みたいですね。<br>>「フィッツカラルド」は見たけど忘れちゃった。<br>まあ、ヘルツォークだし。


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