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本屋で見かけてつい衝動買いをしてしまった。
アデン、アラビア/名誉の戦場 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-10)(ジャン ルオー)
そのころ20歳だったので、当然のように晶文社から出ていたアデン・アラビアを読んだものだが、それからの倍以上を過ごしてきて、また出会うということもある。
僕は二十歳だった。それが人生でもっとも美しいときだなんて誰にも言わせない。
と訳されている。
実は晶文社版も手元にあり、長い年月を経て、また感慨深い黒と黄の地図の表紙、横に筋が入って少しザラついた感じの、しかしちょうど持ちやすく工夫されたビニールのカバーを開く。
ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。
……旧訳のほうが、好みだ。それはそうで、言葉、言葉が身についているからかも知れない。
ところどころ、共感したセンテンスに囲みがあったりして、相当に気恥ずかしい。
世の中でおのれがどんな役割を果たしているのか知るのは辛いことだ。
すべてを捨ててアデンへ行くこと。それは若気の至りではあるだろうけど、あるいは、今そこにかかれた言葉を拾えば、いくつかのBlogの海から同様な言葉を広い出すことはたやすいだろうけど、しかし、1931年に書かれた、確かにすでにヨーロッパは一度は死滅したとは云え、しかしそれから10年後の、真の、肉体ではなく精神の破滅にいたる前の、まだ26歳の青年から発せられた言葉が残されていて、それがまた再生されることを、僕はなんとはなしに、うれしく思う。つまり、まだ、アデンと、そこへ旅立つべく刻印された人たちが存在するということだからだ。
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