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君と僕。をだらだら6巻まで読んだ。
まったくいい時代だなぁ、というのが正直なところだ。
なんでも知っているが絵はへたなメガネ君と、自分も周りもハッピーにする子、シニカルだがそれなりに気を回す双子の兄とまったく気を回さない双子の弟の4人の高校2年生がだらだらとくだらないおしゃべりをしながら日常をすり減らしていくだけのマンガだが、笑わせてくれるところではばかみたく笑わせてくれるし(みんなでリレーマンガを書く回とか、英語の勉強するケアレスミスのエピソードとか)、ささやかな気分の移ろいを巧みに表現していたりするし。
途中で、チビっ子を登場させるが、初期設定の4人では話がうまく回せなかったのか、おばかですけべなドイツ人を5人目に登場させて、これがうまく噛み合っていたり。だいたい男の高校生なんていうのはおばかですけべか、なんでも知ったつもりになっているか、何も考えていないかのどれかだから、これで全部そろったことになる。
思うに、おれが読んできた範囲では、これが少年マンガだってのは、相当に、画期的な感じだ。
子供のころの学生ものと言えば、スポーツをしている何か異常な人たちがほとんどだった。その後巨人軍の星になる星くんとか。そもそもただの高校生なんてのが主人公ってこたないね(佐々木守の(高校生の)学生運動ものをサンデーで読んだ覚えはあるけど)。
で、そういう時代のあとに来るのが、愛と誠だ。確かにある種普通のスポーツをしない高校生だが、そりゃ違うだろう。
骨太の物語の時代である。というわけで「骨太」とか言い出すカスは信じないことにしている。
(と、考えると、実は750ライダーというくだらないマンガを早く終わらないかなぁと待ちわびながらチャンピオンを読んでいたのだが、あのマンガは実に画期的だったと、今になると理解できる。ありゃすげぇや)
で、80年代に入ると、女の子マンガには、軽やかな世界が生まれる(もちろん、それ以前にもセブンティーンに連載されていた西村祥子の学園ものとか、さらにさかのぼれば鈴木なんちゃらの青い山脈あたりを原案にしたやつとかあったかも知れないけど、で、そういうのは読んでいたりしたのだが、こういうのも物語があるので、ちょっと違うと思う……でも西村祥子の高校生ものとかって、わりといいせんを突いていたような気がする。とうに大ベテランの世代になって、高校生がトーキングヘッズのLPを貸し借りするようなセリフを吐くマンガを書いていたわけだから)。ただし発表の場は3流エロ劇画だけどな。たとえば岡崎京子とか桜沢エリカとか。ただ、岡崎京子は、そのうち、虚構の世界の作り方を知ったらしく、やたらとうまい世界に入って行ったわけだが(ときどき、軽いのも書いていたが)。桜沢エリカのほうは興味ないのでそれっきりだ。
(なんだこれはという衝撃のデビューの頃の作品。コミックセルフか何かに書いてたような記憶がある)
確か、それに対して、せこせこしたくだらない世界をこさえてどうしたとか、ミッキー森脇が劇画アリスでかみついていたような記憶もあるが、それでも、少年マンガが、読んでいて不快になってくるラブコメかさもなきゃ喧嘩上等の2極分化に比べれば、遥かにリアルだった。
もちろん、例外はあって、ガロだ。と言ってもリアルな高校生のマンガなんて杉作J太郎のワイルドターキーメン(卒業とかいう題の本を持っている)だけだったけど。
L.L.COOL J太郎―帰ってきたワイルドターキーメン (レジェンドコミックシリーズ (2))(杉作 J太郎)
ワイルドターキーメンには、ばかな高校生が出て来て、うだうだ馬鹿話をしているだけの日常が書かれていて、それはえらくおもしろかった。
マンガには物語が必要だと誰もが思っていたのだろう。
文学はちょっと違う。
おそらく最初に、うだうだした日常を、私小説の伝統(私小説は、たいてい、ものがわかった人間が眺めた風景を描くものがほとんどだ)から切り離して、表現したのは、庄司薫じゃないだろうか。
中学生くらいのころ、赤ずきんちゃんを読んでびっくりした。なんじゃこれは、というくらいの衝撃である。ブルーライトヨコハマを口ずさみながらだらだらと過ごしているだけなんだもん。これの何が小説なんだ? いや、これも小説なんだろう。物語や批評が表現には不要なことを初めて知ったのであった。もっとも主人公は、高校生じゃないね。
で、それをもう少しエンターテインメント分野で展開したのが小峰元だろう。もちろん、推理小説になっているから物語はあるわけだが。
これは正しく高校生の日常に展開する物語だったと思う。たぶん和田誠だと思うがやたらと軽い表紙のソフトカバーで図書館で次々と借りて読みまくった覚えがある。
マンガでもそういう日常というのが完全にないわけではなく、たとえばフジケンっていうマンガは喧嘩上等マンガではあるけれど、相当、現代的なマンガだった。
フジケン 1 (少年チャンピオン・コミックス)(小沢 としお)
(このアマゾン評がおもしろい。ベタボメの星1つというのは何かの勘違いか、喧嘩うっているのか、どっちなんだろう)
こういう、変なマンガが載るところがチャンピオンの良いところだ。
問題は、ばっちいことだ。絵柄が。
で、それからさらに時は過ぎ、今では君と僕。(っていうか、。がついているところからして高校生マンガっぽい)みたいなマンガがそれなりに売れているようで、良かったね、と続く。
でもそれって、読者層が広がったというよりも、それまでのマンガのコア(喧嘩上等ものとか)の読者層が、マンガから離れたということかも知れないわけで、マスから本来こぼれ落ちている層からも手堅く金を吸い上げる仕組みといえばそれまでのような(というか、そもそも発表誌が3大メジャー+1誌じゃないし)。
ジェズイットを見習え |
小峰元はよく読みましたね。<br>実は爺さんだと知ってまた驚いたり。
読みましたねぇ。もっとも、全く覚えてないですけど(印象だけ残っている)。
小峰元はシリーズ後期の作品に横書きのやつがありましたよね。いま思えば先進的。
知られざるおっさんほいほい小峰元……