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日々の破片

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2009-09-13

_ はじめてのオペラ

ネトレプコの椿姫が届いたので観て聴いた。2回くらい。子供はもっと観ているが、それは別の話。

ヴェルディ:歌劇《椿姫》 [DVD](ネトレプコ(アンナ))

(買うならこっちだが)

で、アマゾン評がおもしろい。廉価版が出る前のほうだ。

ヴェルディ 歌劇《椿姫》全曲 [DVD](ネトレプコ(アンナ))

(今でもこちらも売れているようだが、それが情弱というものによるためか、それとも特典ブックレットが実は付いているというような実利的なものなのかはわからない。同じものだと思うけどな)

おれがオペラを観始めたのは遠く1970年代にさかのぼる。

時代はヴィスコンティの支配下にあり、ゼフィレッリがわがもの顔に君臨し、ドミンゴがコスプレをしまくっている。

おれは、このてのものものしさが大嫌いだった。映画は別かも知れないが、それでも実際のところヴィスコンティとかこれっぽちも好きじゃない。なんでこの時代にあって、歴史そのものでもないのに、コスプレ観なきゃならないんだ?

(いや、でもこないだ新国立劇場で観たアイーダは逆に新鮮過ぎて素直に度肝を抜かれたから、今はそれほどわだかまりは無いらしい)

レコード芸術の写真で眺めたシェローのリングをどれだけ観たかったことか。あるいはヴィンラントだかヴォルフガングだか忘れたが金がないので必然的にシンプルになりましたなリングですら、コスプレオペラよりもはるかにうらやましかった。

いっぽう、演劇では鈴木の忠とか太田省吾とかがいて、コスプレがないわけではないけれど、舞台そのものは簡素化することで想像にお任せすることがあたりまえだった。おれは、断然こちらだ。

で、それから50年経つと、価値観も変わるんだなぁ、と非常に満足度が高いウィリー・デッカー演出の椿姫を観てアマゾン評を見て思う。コスプレじゃないという理由で怒っている人たちがいるからだ。大丈夫。50年たてばまたコスプレ地獄が口を開けて待ち構えているよ。

もっとも、時の番人の医者には少しばかりうんざりはするけどな。わかりやすくすりゃ良いというものではないのは、アマゾン評を読むとわかる。わからない人には意味が不明なままみたいだ。そしてわかる人にはうっとおしければ、そりゃ無価値だ。

それにつけても2幕の最初の戯れっぷりは実に観ていて微笑ましい、良い感じだ。

あと、映像で観ていて、なんでアルフレードの親父が物分かりが良い、良い親父かえらく納得した。

オペラの客層そのもの(特に19世紀後半のヴェルディの時代)だからだ。革命後に力を得たブルジョアで、旧世界の価値観と新世界の価値観の両方を知りぬいたうえで、新たな生活様式を模索し、切り開いてきた文化の新たなパトロン。

これは無下には扱えないだろう。

ヴェルディ1幕の浮かれた唄といえばマントヴァ公爵のあれかこれかだが、花から花へ(sempre libera)のほうが好きだな。しかしマントヴァ公爵は死なないが、ヴィオレッタは死ぬのであった(と、実は浮かれた唄というのは上辺だけで実際には少しも浮かれていないということを、デッカーの演出はわかりやすく見せている)。

それにつけてもネトレプコの体型の維持と歌唱力は天性のものなのか、努力の賜物か、おそらく両方なんだろうけどすごいなぁ。あと、やたらとヴィヤゾン(ヴィリャゾンという表記を見るが、フランス人なんだから(追記:ここがそもそもの間違いで、メキシコの人なのでヴィリャソンと読むのが正しいようだ。伝聞ってのは当てにならないわけで、実はイヌイットの可能性もあるよな)ヤじゃないか? 人名は不規則な読み方するのは日本語も同じだからヴィリャなのかも知れないけど)と抱き合って二人で大声で歌うけど、お互いに鼓膜は破れたりしないんだろうかと無駄に心配したり。


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