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日々の破片

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2009-10-10

_ ビジネスがすべてではない

オペラでもバレエでも映画でもものがわかったやつと一緒に行くほうが楽しい。ものさえわかっていれば、好みが違っても良いというか、違うほうがむしろおもしろい。で、観終わったあと、ここが良かっただのこれは違うだろうだのそうはいってもおれはこう思うよとか、好き勝手なことをだらだらと話す。そういう時間は良いものだ。

そのての対象となるもの(上の例だとオペラとかバレエとか映画)は人によってそれぞれで、なんとなくだが、昨日の合コンに参加していた女子というような話題ができる対象(ということはこの場合の対象は合コン)を好む人のほうが、ベルディのオペラに観られるヴァーグナーの影響というような話題ができる対象(ということはこの場合の対象はヴェルディのオペラ)を好む人より多いような気がする。

で、これも予想に過ぎないが、こういった好む人が少ない対象を偏愛する人の幾割かは、そうでない対象にはあまり興味が持てないのではないかと思う。たとえばおれはほとんどすべてのスポーツとかテレビのドラマ番組にはまったく興味がない。

そこで人によっては、興味はどうでもよく、他人とだらだら好き勝手なことを喋ることを目的に、多数が好むと思われる対象に時間をかける。営業マンであれば日経を読め(客先行って話すネタを作れ)、の非ビジネス版である。

でも、非ビジネス版で自分にとってこれっぽちも興味も関心もなくまったく心が揺さぶられることもないもの(たまには例外もあるかも知れないが、その例外を探すためにその他のガベージをコレクトしなければならないようなもの)に時間を使うのはくだらないね。人の使える時間は限られている。

もちろん、趣味はおしゃべりであれば、そちらが第一目的なんだから上で書いている「対象」というのはどうでも二の次だ。それはOK。

この対象は二の次という姿勢をもって、社会的趣味の持ち主と呼ぶことにする。

それに対して、まず対象ありき、さらにおしゃべりできれば尚よろしという姿勢をもって、技芸的趣味の持ち主と呼ぶことにする。

やっと定義ができた。とは言え、この2つの趣味の持ち主をもう少し広くすると、世に言う文系、理系の2極論になりそうな気もする。当然、法律の適用やら判例やらについて後者の姿勢を持つ法学の徒がいれば、学の領域からは文系になるが、アティテュードにおいて理系となって意味が通じないが、それはしょうがない。したがって、文系/理系という切り口はバカだということになる(ここで挙げている事項について)。

で、勉強会っておれには後者のお楽しみだと思っていたが、それをビジネスにつなげるということになると、途端に前者になってしまって、そうなると勉強の対象は2の次になってしまうわけで、そりゃ乱立もするし興味も持てねぇなぁということになるのであった。

別の角度:たまには、なんで上のようなことを考えたかを追ってみる。最初、livedoor Readerで、生越さんの雑文を読んで、そこからリンクを追ってGoTheDistanceに行って、そこで次の一文

また「勉強会」に代表されるような所属組織を超えたウィーク?タイズのつながりも数年前から随分活発になっているように見えます。これらの活動により業界内での自浄作用が働くでしょうし、より良いソフトウェアを作ることを議論?共有できる場があるのは素晴らしいことです。

に始まる段落を読んで、とんでもない違和感を覚えたからだ。より良いソフトウェアを作るかどうかは結果論であって、それは主眼ではないのではないか、ということ。

で、

僕は今小売業界の会社に属していますが、卸のバイヤーが集まって勉強会をするなんて動きは聞いたことが無い。

まで読み進んで、そりゃそうだろうと思ったのであった。それは職場の仲間で閉じられる内容で一般性がないだろう。

もちろん、世の中は広いから、おれさまの考えた新しいバイイング戦略について一般化したものがパラダイムたりうるかを他のバイヤーに問うてみたいというような勉強会もありうるとは思うが、それほど戦略に技術的なおもしろさがあるのかどうかは良くわからない。

それに対してソフトウェアについてはいろいろある。

コード、構造、そういったものには美醜がある。

つまり、ソフトウェアの構成技術については、それをあたかもオペラのようにしゃべることが可能だ。

なぜプッチーニはトゥランドットを死ぬまで半年も余裕があって、しかも元気旺盛だったのに完成できなかったのか、についておしゃべりするのと同じレベルで、なぜGNU Hurdが完成しないのかをおしゃべりできる場ってのが世の中にはあったほうが楽しい。RMSは今でもコードを書いてはコミットしているがすぐにリバートされてしまうとかしゃべって笑い合うことが、イチローがワールドシリーズのあの場面で打ったっていうようなことをしゃべるよりも、遥かに愉快に感じる人たちもいるのだった。(ろくな例じゃねえな。例えばジャイアントロックを外すというMacRubyの戦略が及ぼす拡張ライブラリへの影響とそれに対するきれいな解を考えるとか)

そのあたりを敏感に嗅ぎ取ると、お金の匂いがしない、という適切な評価もくだせることになる。それは正しい判断だ。

まあ、いろいろな思惑があって世の中は回るので実におもしろい。

ビューティフルコード (THEORY/IN/PRACTICE)(Brian Kernighan)


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