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日々の破片

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2010-01-17

_ 記というもの

中国の歴史は、もしかしたら歴史というものがそういうものかも知れないが、ひたすら同工異曲で、ただ名前が変わるだけという趣がある。

で、この本がそれそのものだ。

北遊記 (四遊記 4)(竹下 ひろみ)

西遊記はけっこう面白いので、たぶん、神保町のゾッキ本屋の店頭に四遊記が全巻そろっていたので買って忘れてそれっきりだったのが出てきたので、読んでみるかと読み始めて半分ほど読んだが、もううんざりで、とっておいてもしょうがないので捨ててしまうわけだが、それを記録しておく。

話の筋はそれなりにおもしろそうではある。

すべての世界を通して一番偉い天帝が、ある日、退屈してしまい、西のほうへ遊びに行って、釈迦のところで勉強しようかと言い出す。

いや、それは困ると止める部下たち。

なぜだ? もう3000年も世の中を司ってきたのだから、ちょっとくらい遊学しても悪いこたないだろ、と天帝。

いやいや、上には上があります、と執事の神。わたしなんて、気まぐれで暴虐的で、突然休みたいとか言い出すわがままな天帝の執事を、髪の毛一寸ほどの休みもなく勤めております。それに比べれば、なんと気楽な稼業でございますことか。

そうは言っても、おれは仕事ばっかりで疲れているんだ。勉強して困ることはあるまいと怒る天帝。

いや、釈迦のところで勉強するってことは、7回生まれ変わって善行を積むことです。7回も生まれ変わるなんていう悠長なことを天帝たるもの、すべきではありません。

うーむ、しょうがないのを。

と天帝はあきらめる。そしてしょうがないので下界を覗き見していると、めっぽうきれいな竹林を発見。

あの、きれいな竹林はなんぞや? たれぞ知るものはおらんか?

あれは、七菩薩を宿した竹でございます。

ぼ、菩薩とな。うーむ、欲しい欲しい。

あまりの欲しさについ天帝の魂は3つに分離した。1つは元の天帝として、もう1つは下界で竹林を得るために竹林の持ち主の妻の身体に入り込み、その家の息子として生まれ落ち、最後の1つは天帝の物置の壷の中に予備として大切に保管された。

さて、いきなり子を授かった竹林の持ち主の家では……

と、あれよあれよと話は進む。

と、まとめて書くとそれなりにおもしろそうだが、これがこれっぽっちもおもしろくない。

淡々と歴史を語るがごとく語られているからだ。

で、この息子、長じて没して生まれ変わって長じて没してを延々と繰り返したあげく北守将軍として天界に生まれ、留守の間に地上に散った36神将(と天界では立派な存在だが地上では人を食っては暴れまわる化け物である――が、関羽の青龍刀の変化とか、雷の鞭を振り回す黒虎だとか、お馴染みの連中が出てくる点だけはおもしろい)を片っ端から退治しては部下にしていくのだが、その繰り返したるや12匹くらいを退治したところで、読者たるおれの堪忍袋の緒が切れた。

これが3000年続いたら、それは仏弟子にもなりたくなろうというものだ。

まるでウルトラマンの各話を5ページにまとめた小説を延々と読まされているようなものだ。怪獣出現、カトクタイ出動、井出隊員あやうし、ハヤタ変身、一度は負け戦、出直してスペシウム光線、シュワッチ。の繰り返しである。

というわけで一番おもしろいのは、巻末に出ている本書の広告文で、「読んで待ってる中国の人々」というもの(出版社が旅行代理店もやっているらしく中国ツアーの前に本書を読めと書いてあり、それに対するアオリが囲みで入っている)。

いや、彼らは絶対に読んでいない、とおれは思う。


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