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なんとなくリブロで平積みになっていたから買って読んだ。
もしかしたら帯の惹句の「魂と引き換えに描いているとしか思えない』に心躍らされたのかも知れない。そんなものはめったにないからなぁ。
で、実に気分が悪くなった。ロードムービーによくあることだが、見事に典型的人物が次々と出現してくるのは劇的構成力のうまさで、それだけきちんと虚構世界を構築しているのにも係らず、妙なリアリティつまり説得力があるからだ。不快きわまりない世界である。
読み始めたものはしょうがないので読み進めていくと、とりあえず上巻の最後、主人公のうちの一人(人を殺したほう)の夫にあたる女性の両親のくだりで心が慰められたのであるが、ふと待てよ、と気づく。
そこで親父のほうが「よその男とつくった孫よりオレと母ちゃんでつくったお前のほーが可愛いからよ!!」と電話で言うわけだが(そしてその親父の言うことがおれでもそう言うだろうなという強烈なリアリティがあるわけだが)、その感覚を心の底から共有(というか体感)するには、子供をつくっていろいろな目にあう必要がありそうな気がする。が、作者が22歳だということを考えるとそういうこともなさそうだ(マンガの場合、編集者が補助するということだが、そこまで介入しているかな? とりあえず無いものと仮定する)。
とすれば、このセリフをどのようにして作家は生み出したのだろうか?
という疑問が湧く。というように考えると、子供の立場として親に言って欲しいセリフを創造したのだろうと推測できる。とすれば、世の中はある程度うまく回っているのかも知れない(うまく回っていないのが主人公のうち殺しを依頼したほうなわけだが、そうは言っても多少の救いがあるからこそ物語も生まれているわけだが)。
なるほど、早熟(サガンに対して使われた意味での)というのは登場人物の心理的動機に対する的確さを指す言葉なのだな。と、突然納得したり。
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