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日々の破片

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2010-12-15

_ スカイツリーは高度経済成長の夢を見るか

こないだ髪を切りに行ったら、髪結いのおっさんが、俺、最近、良くスカイツリー見に行ってんだよね、と話し掛ける。

えっもう営業してるんですか? と訊き返すと、いやもちろんまだなんだけど、行くたびに少しずつ高くなってるんだよ、それがなんていうか、見上げてると夢があるんだよねぇとか眠いことを云う。

先日、昼飯食いながら食堂のテレビ眺めてたら、爺さんが集まって来てはスカイツリーを見上げてるってニュースをやってた。インタビューに応えて曰く、どんどん伸びるよねぇ、いいんだよなぁ、なんか夢があって。

ああ、その時、おれは髪結いのおっさんの言葉を思い出し、連中はおれより年上だが、なんかわかった。

街角に超高層ビルの曙っていう映画のポスターが貼られて、霞ヶ関に36階、それに続けて浜松町に40数階、そして淀橋の浄水場の跡地に最初が京王プラザ、次に三井、そして住友と、次々高みを目指してビルが建つ。あの頃、それこそ、高度経済成長ってやつが、誰の目にも明らかに見えてたんだ。俺は子供だったからそれ程実感はないが、でもあれは印象的だったろうな。

その記憶がスカイツリーによって目覚めさせられてるんだ、夢として。

そして、まだ建築中の、だから逆にどんどん天を目指して突き進んでいるスカイツリーの周りには、老人達がただただそれを見上げるために集まってくる。

江戸時代の古地図でそこを見ると、実はそこには一切の夢も希望も無さそうなのだが、でも今そこが、光り輝いていた過去の栄光の悪あがきの姿を、というのは、摩天楼ってのは、グラトオシエル、つまり空を引っ掻くことだから、まさに引き摺り落ちかけているのを爪を立てて食い止めようとしている悪あがきの姿そのものを晒している。

だから、まさに今が、スカイツリーを間近で見るべき時なのだ。まだ、江戸時代の場所の記憶が残っているその地に、高度経済成長の幻を観に老人が集まって来ている、そんなタイミングは今、まだ未完成の今しかない。


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