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新国立劇場でビントレーのアラジン。
ポスターで観るランプの精がディズニーのジーニーに良く似た衣装なので、ディズニーの物語でやるのかと思ったら、オリジナルに近いものだった。
一幕は市場で2人と友達と適当にかっぱらいをしたり母親を足蹴にしたりする不良青年アラジンで始まる。なかなか軽妙な踊りで楽しい。というよりも、序曲が映画っぽいというか、どことなくディズニーのシンドバッドの航海で流れる音楽に似ていて(音型の導入方法が似ているのだな、と後で子供と分析してみた)妙な感じだが、悪くない。演奏は金管を多用しているのに良い。さすがに新国立劇場で演奏する場合は、バレエでもうまい人を使うのかと思った(が、3幕でソロを吹かされまくるところでは相当にへばっていたけど、さすがにきつそうな曲である)。
で調子良いのだが、3場の宝石の踊りは途中でいやになった。特に金と銀の踊りは長過ぎるのではなかろうか。でも4場でのジン登場のところとかおもしろかったので、全体としては良い感じ。
2幕はとても良い。太陽の中の太陽というような名前のお姫様の人はカチッカチッとメリハリがきいた動作がきれいに決まる。ジンの大暴れというかくるくる回り続けというかはすごいなぁと見とれる。アラジンは若々しい躍動感ってのはこういうことか、と思ってしまう。でも一番おもしろかったのはライオンダンスで、最初プログラムで名前を見たときはなんだろう? と思ったが本当に獅子舞みたいなやつでこれはおもしろかった。脚だけであれだけ表現できるというのはすごいものだ。2幕は各踊りの長さといい、メリハリの利きと言い実におもしろかった。途中、音楽がトゥーランドットみたくなるので不思議に思う。
3幕はえらく楽しそうなチェスとささやかなケンカと悪友の誘い、仲直りダンス、狩への出発が一連の流れで実にうまく始まる。仲直りダンスはきれいだ。
狩に誘われたときの弓のリアルな感じも良い。
で、窓からモロッコ人が逃げるところから魔法的な舞台となる。
魔法と言えば、マグレブ人がジンを呼び出すところで、深い穴の中から徐々にジンがでかくなりながら登場して驚く。どのような方法なのだろうか? (とは言え、4Fの最後列で遥か高みから見下ろしているので、普通に見ていると普通に見えるのかも知れない)。
#4Fは、Cの1列目が手すりのせいでほとんど舞台が見えないのに、Dの最後列はオーケストラピットこそまったく見えないが、舞台は妙な角度ではあるが全貌が見えるので良いものだった。その意味では魔法の絨毯がどれだけの高みを浮かんでいるのかは良くわからなかった(が、浮遊感はきちんと出ていて楽しい)。
で、大団円はドラゴンダンスで、ここは中国なのだと理解する。それでトゥランドット風なのか。
おれはアラビア人ではないからアラジンという名前は普通にアラビア人の名前で、サルタンといえばアラビアの太守のことだと思い込んでいたが、アラビア人にとってはアラジンというのはとてもアジア人=中国人っぽく響き、シュルタンというのは普通に皇帝という一般名詞なのかも、とか思った。というか、魔法のランプの話はあまりに有名なのでまともに読んだことがないが、岩波文庫が家にあるので後で確認しようと思って忘れていた。
ビントレーという演出家の仕事は初めて観たのだが、なんかロメオとジュリエットを彷彿させたりして、英国風ってのはこういうことか? とか思ったり思わなかったり、いずれにしろ楽しい舞台で満足した。
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