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日々の破片

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2011-06-08

_ メトロポリタン歌劇場のラボエーム

NHKホール。3Fの最後列なのでどんなものかと思ったが、さすがにオーケストラも歌手もちゃんと聴こえて来たし、むしろ正面から観られたので全体は良く見える。ただ、細部はまったく見えないし群衆が出てくると誰が誰かほとんど区別がつかなくなるのでゼッフィレリのばかみたいに大がかりな2幕の2階建て舞台は、ラッパ(フレンチホルンみたいだが)を手にしたショナールと外套を持ったコッリーネ以外はどこにいるのか、飯を食い始めるまでは皆目見当がつかなかった。

ミミはネトレプコが降りたのでドンカルロからのローテーションでバルバラフリットリ。昨年、トリノの公演でえらく気に入ったのだが、今回も素晴らしかった。

というか、まず幕が開く前にオーケストラはピットで勝手に練習しているものだがラッパが正しいのに驚く。本当は驚くべきではないのだろうが、しょっちゅうラッパがひっくり返る(練習中も本番でも)バレエのオーケストラに慣れているので、これにまず驚いた。

演奏は器楽だけだと普通なのだが、歌になると突如異様に遅くなる不思議な指揮(ファビオ・ルイージという人)。で、異様に遅いのだが歌手はうまいしオーケストラもうまいので、緊張感と陶酔感の両者が生まれて、それは見事なものだ。狙ってこういう造り方をしているのは間違いないから、すごいやつだ。正直80年代のマーラーでしか知らないので今は違うかも知れないけどバレンボイムのアメリカ版みたいなレヴァインより僕にはよっぽど良かった。

あと、舞台から遠いので逆に気づいたのだが、歌手の弱音というのは実に不思議だ。4幕で、ミミが私はミミを唄うところで、2回目の繰り返しでは弱り切って囁くように歌うのだが、これが小さい声でしかもしっかりと聴こえる。素人には(セリフなら音高を低くする方法となるし、歌だと声帯を鳴らさないように歌うことになるので)見当もつかない、不思議な技術だ。これまで、そういう技術が使われていることにまったく気づいていなかった。

4幕のチャンバラでコッリーネはベランダから隣家の屋根に飛び移ってバルコニーに置いてある植木鉢をショナールに投げつける、と高く外れてそれをロドルフォ(だと思う)がキャッチするとか、派手な演出。楽しい。

3幕は雪がちゃんと降っている。ここでも歌になるとテンポを落とすが、まったく破綻がなく美しい。というか、3幕がこんなに緊張感と美しさの両方がある幕だとは気付いていなかった。

2幕は派手な演出(ここだけはビデオで観たことがあったのだが、生で観ると迫力があるね。えらく遠くにだけど。パラピニョールがえらく派手)。

1幕でロドルフォが3人に呼ばれてベランダから下を見下ろすと、ミミも一緒についてきてベランダに出てくる。すると3人がヒューっと声を上げる演出がおもしろい(ロウソクとかは普通に消える)。特に2人になってからのテンポの落とし方が極端で時間が止まっているかのように進むのだが、歌手は息を切らさないしオーケストラはきちんと鳴らすので、異様に濃密。こういう演奏家を手にしたら指揮者としては何でも自由に造れて楽しいだろうな。

というわけで素晴らしい満足感を得られた。

というか、この指揮者どこかで観たことがあると思ったらホランダーの引退記念ガラのDVDだった。

ウィーン国立歌劇場ホーレンダー総監督フェアウェル・ガラ(2DVD)(DAMRAU DIANA (soprano))

(ジョルダーノのフェードラとロッシーニのウィルヘルムテルを振ってる)


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