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日々の破片

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2012-02-17

_ 薄いけどしょせんはカマボコ板

10年くらい前にHandspringのVisorというPDAを使っていた。@tdtdsさんが見せびらかしてくれたのに影響されたのだった。

今も手元にあって、しかしここ数年使っていないのだが、実に良くできたデバイスだった。バッテリーは単4が2本なのでそれなりに重いが、少なくともバッテリーが切れたらコンビニエンスストアへ行けば数分後には復活しているわけで、ことその点に関しては圧倒的に良かった。液晶はバックライト無しのモノクロなのだが、その分、本を読むには読みやすくて、青空文庫に入っている寺田寅彦はすべてこのデバイスを使って読んだのだった。もっとも、今と違って老眼ではなかったから、今も同じように読めるかどうかはわからない。

日本語入力はGraffleという手書き認識のアルファベットからのローマ字カナ変換なのだが、これが全く苦にならなくて、えらい数のメモが残っている。

が、時代は変わり、Handspring Japanは撤退し、本元のHandspringはPDAをやめて、携帯電話をくっつけたTreoというのを売り出した。大きさはVisorとそれほど変わらない。

で、これが電話になるのかぁとVisorを眺めながらちょっと不思議に思ったし、当時のzdnetかcnetかそのあたりの記事でも、電話はどうかけるって? カマボコ板を使っているから実に滑稽だ、みたく書かれていて、ああ確かにカマボコ板に話しかけているのは気持ち悪いなぁ、と思ったのだった。

で、先日、道を歩いていたら、まさにカマボコ板の端を耳に、別の端を口に当てて、しゃべりながら歩いている人を見て、Handspringを思い出したのだった。

それは、普通の携帯電話の幅の倍は優にあるデバイスで、おれの持っているVisorと大きさはそれほど変わらない。確かにカマボコ板だ。もっとも厚みは1/4よりさらに薄くて、その点に関してはカマボコ板のコストリダクションの極致だ。気になるのは、あの薄さだと単4乾電池は入らないだろうということだ。ということは単4乾電池より、さらに簡単に手に入る素晴らしい電源を利用しているのだろう。そうでなければ、不便でしょうがないと思うし、時代は10年も未来なんだから、きっとそうに違いない。

で、ふと気付くと、おれもそれに良く似たカマボコ板を持っていることを思い出した。

しかし、バックライトが消えていると液晶は全く読めないし、点いていると疲れてそれほどは読めない。コンタクトを外した近眼モードでもそれは変わらない、そういうわけで、Visorと違って読書するにはまったく向いていないデバイスだ。もっとも、VisorのMP3プレイヤは64MBだったのに、数GBあるから容量の進歩はすさまじいモノがある。

日本語入力は、どえらく反応が鈍いタッチで文字を選択する方法で、反応が鈍いので、文字抜け、打ち間違いはすさまじい。つい、「ず」を「す」(濁音の個所をタッチしたはずなのだが、抜けていたらしい)と打ってしまう始末だ(かずひこさん、ごめんなさい)。Graffleならzuなのでどう頑張ってもsuと入力することはあり得ないので、偉い違いだ。

付属のメモ帳もスケジューラも機能は向上しているし、オンラインでサーバに保存できるようなので便利なようなのだが、入力しやすさがくそなので、Visorほどには使い物にはなっていない。

結局、入力はあまりできないので、主にWebを眺める(読むではなく)のに利用している。

10年間の進歩って、つまりは、見てくれの薄くなりっぷりと、ネットワーク接続性の2つがすべてなのだな、と、なかなかに人類の明るい未来を感じるのだった。


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