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角谷さんから頂いたアジャイルサムライを読了(通勤のお供にできる薄さなのだが、そこは最近の本なので実際には300ページもある。なので軽くはない)。感謝。
この本はさすがアジャイル10年の蓄積を経ただけあって、出始めの頃の固さや神々しさから一皮剥けた、肩肘張らずにこなれた調子でアジャイルプロジェクトの進め方について教えてくれる本だ。というわけで、アジャイルの書籍というと、ケントベック! とかアリスタコバーン! ヘリコバクターピロリ!とか、なんか押しつけがましそうな印象を受けて敬遠していたような人でも安心して読める一品となっている。
というか、マネージメントという観点でいくと技術書というよりもビジネス書なのだから、このくらいがちょうど良い塩梅なんじゃないかな。とは言ってもさすがに野球部の女子マネージャほどゆるゆるでもない。
各章は適当な長さで、ユースケースがあって解決案があって、先生と弟子の教理問答(の形式を取った自分で考えてみようのコーナー)を経由してまとめがあるという形式のイテレーションになっている(のだろう)。つまり、解決すべき課題があり、それについて考えて解決策を練り、振り返りがあるということだ。
で、これ読んでいていろいろ思うところがあって、そのうちの1つは、これを中学か高校の教科書にできないかな? ということなのだった。野球部のマネージメントではない。
端的に言えば、文化部の学園祭への出展プロジェクトを考えてみればよかろう。
なんでそんなことを思ったかと言えば、ここで説明されているプロジェクトが、(児戯に等しいというネガティブな意味ではなく)そういう楽しさというか、みんなで何か1つの目標に向かって知恵をだしあってうまいこと協力してやっていこう、みたいなことが、実にうまくステージ分けされて、そこに適用すべき具体的な手法やその代替案などが示されていて、しかもそれがうまいこと文章とビジュアル(イラストもたくさん、図もたくさん)で表現されているからだ。単に、班分けしてみんなで相談して進めてください(という方式だとコーチング能力が先天的かあるいは意識的にかわからないけど優れたやつが1人で経験値を積むだけだ――逆の言い方をすると、そういう教育方針というのもありといえばありとも言えるけど)みたいな教育の前に、こういったプロジェクトマネージメントの教材を使う方が効果的なんじゃないかな。
つまり、ここまで練度が高いと、上で技術書というよりビジネス書みたいだと書いたけど、単にソフトウェア開発チームだけの知的所有物にするのはもったいない。
(で、ここに示されている訓練を中高で積んでいくと、相当に進んだ民主主義国家が作れそうだなというように感じるのだ)
あと、上で書いたような、ちょうど良い塩梅の文章とか、適度にくだけたリラックスした雰囲気というのは、もちろん日本語化のうまさによって支えられているわけだ。というわけで、Dotさんを筆頭とした永和の翻訳チームの手腕には賞賛を送りたい。
アジャイルサムライ−達人開発者への道−(Jonathan Rasmusson)
お勧めだ。
(「ご近所さんをさがせ」はとても良い教えだとつくづく思った)
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