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日々の破片

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2013-01-07

_ 映画評論のむずかしさ

ふと、気付いたが、淀川長治の散り行く花の評は、単に記憶違いや、異なる編集の別バージョンの可能性だけではない。

おそらく公開時期とそれをこれこその一本として観たはずということから考えると、英語から日本語に差し替えられた字幕(という用語で良いのだろうか)、または活弁のセリフを記憶している可能性がある。であれば、15年が13年(なので13歳)、親父が義理の親父などなどの差異は日本語化するときに生じたのではなかろうか。たとえば、当時の日本なら15歳ならさっさと家を出てしまいそうなものだし子供とは言えないので13歳にずらすとかが十分にあり得る。

これは現代の映画でも十分にあるだろうし(吹き替えの時間制約でコンテキストは変えないまでも内容の帳尻合わせをするとか、字幕の字数制限と80%の客層の知識レベル(というよりも常識レベルと言うべきかな。たとえばアイルランドでは誰でも知っている洗剤メーカーの名前を出してギャグにしているところを花王に変えるとか、さすがに現在は無いとは思うけど)に合わせて固有名詞などを変更するなど)。

文学にも同じことが言える。

あるいは、映画だと別のこともあった。

ゴダールのプレノンカルメンは日本での公開当時にシネヴィヴァン(だと思う)で観たが、シャワールームでのシーンで、もちろん、画面のほとんどすべてが霧で覆われているわけだが、字幕で「ここが滑稽なのは勃起しているところ」と説明が流れた。その映像を日本国外でちゃんと観た人、日本国内で観たけど字幕(この字幕はそのまま生き残ったのだろうか)から想像がついた人、単に修正された映像とセリフだけを観た人、それぞれで受け取る印象は変わってくるだろう(というか、今でもああなのか?)。

同じようにロブグリエの映画の色調変更問題もあった。確か修正し過ぎて全体の色が変わってしまって、ロブグリエはたまたま自分でチェックして仰天して日本公開を取りやめさせた(という記憶がある)が、気付かずに同様に異なる色調の映画として日本では公開されたものもあるだろう。であれば、これまた「~な色調によって~という効果が云々」みたいなことは全く言えないということになってしまう。

言語の問題と異なり、こちらは実にあほうなことだ。

カルメンという名の女-ヘア解禁版- [DVD](マルーシュカ・デートメルス)

(しかし、実に物悲しいタイトルになっているが、勃起しているかどうかはおそらくわからないのではなかろうか。というか21世紀になってもまだこんなサブタイトルが必要な時点でどこの後進国かと暗澹たる気分となるな)


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