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ついに、3巻も読み終わった。もったいないな(と読後というか読んでいる最中も感じるくらいに、読むのが楽しかった)。
ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上・下合本版) (ハヤカワ・ミステリ文庫)(スティーグ・ラーソン)
本国ではやたらと売れたらしいけどそりゃそうだろうと納得するのは、適度なサスペンス、謎解き、それっぽいガジェット(時代が時代だから最後はPalmだったりSONY Ericsonだったりするし、2巻ではPowerBook 17"だったが、もし今書いていたらiPhone5になってただろう)、それっぽいマネーロンダリング、それっぽいハッカー集団(まるでウナギイヌのようにどこにでもにょろにょろ侵入するが、それなりにトロイの木馬を埋め込んだりしていったり、HDDの吸い上げにそれなりの時間がかかったりするのでそれなりにはリアリティがある)、わかりやすい主人公の思考法、やたらとセックスそれもいろいろな種類、ばしばし暴力とそれもいろいろな種類、差し迫るいろいろな種類の危機と調子良く進むそれへの回避と、エンターテインメント性はたくさんあり、しかも多様性を守る側の視線というような非難を浴びることがない倫理性を大上段に振りかぶっているので、けなすことも難しいだろう。
というわけで、いよいよスェーデンの公安警察内秘密フラク(悪徳精神病医含む)と、社会派ジャーナリストと敏腕弁護士と近代装備で固めた警備会社とハッカー集団と憲法順守側の警官集団と倫理感ある医者と憲法尊重主義者の公安集団の戦いが始まり(うむ、味方側のほうが圧倒的に層が厚いのだから、これで勧善懲悪な結末にならなければ嘘過ぎる)、秘密がぼろぼろ暴かれて最後には逆転裁判でけりがつき、しかも最後にはターミネーター1のようなおまけまでつく。
というわけで、個人の意思を尊重する=多様性を守る(というのは、反人種主義であったり反移民排斥であったり何よりも反ジェンダーということだけど)ということを、悪党は頭が悪く政治信条が単細胞で精神を病んでいて反社会的な思想で凝り固まった唾棄すべき集団というステロタイプなところ(したがって結局ぼろぼろボロを出してほぼ自滅となる)が、なんだかなぁとは思うが、エンターテインメントなんだからそんなもんだろう。読んでいる間の面白さは素晴らしい。
相当違う気がしないでもないが、主人公の反社会的傾向はヤングウルフガイ(相当孤独)で、全体の基調はアダルトウルフガイ(結構愉快な仲間たちがついている)みたいだなと感じて、つまりはある種の黄金パターンなんだろう。ということは、むしろ、これが大ベストセラーとなるスェーデンという国の読書傾向が奇妙なのかも知れない(なお、ヨーロッパなので登場人物のほとんどがタバコをそこら中で吸いまくっていてなかなかに新鮮だった)。
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