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ogijunお勧めシリーズを買って読んだつもりだったけど、あらためてリンクしようとしたら、別段、誉めてなかった。
企業が「帝国化」する アップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔 (アスキー新書)(松井 博)
一言にまとめれば、そんじゃーねお姉さんの放言を、もう少しアメリカ在住の元中の人の立場から少し調べて書いたような本。
アップル、エクソン、マクドナルド、モンサントといった一部の企業の中のさらにごく一部の考える人が世界を動かす世の中になった。それは文字通り世界を動かしているのだから、帝国と呼べる。彼らが風邪をひけば産業全体がひっくり返るほどの影響力を持つ。これらの帝国が支配する世界で生きるには、一部の考える人になるか、さもなければ下層階級として賃労働で暮らすかのどちらかだ。もっとも、自分はある程度金を稼いだところで帝国から離脱して保育園を営むという地方密着小規模手産業、つまり帝国の支配がおよばない中間地帯での生活を選択した。そんじゃーね。
Kindle版381円で通勤4日で読める内容の本だが、それなりに調べて書いているのでおもしろいところはある。議論は知見の拡大のため、といったそれなりに役に立つことも書いてある。
民間企業という帝国が支配する世界といえば、いやでも想起するのはディックだ。
おれの大好きなザップガンでは、銃器帝国にかかわってしまった下層階級の男の冒険が描かれてどえらくおもしろい。
アマゾンがディック的世界を展開している。ザップガンで見える世界
The Zap Gun (Gollancz) (English Edition)(Dick, Philip K.)
(その実体)
ザップ・ガン (創元SF文庫)(フィリップ・K. ディック)
(その仮体)
もう少し有名な例だとブレードランナーが視覚的にもわかりやすかった。
ブレードランナー ファイナル・カット 製作25周年記念エディション [Blu-ray](ハリソン・フォード)
ネクサスのビルがそびえたつが、そこで実際に働いている=考えているのは1フロアぶち抜きの広い部屋にたった一人で籠っている社長だけだ。
その足元は貧民街で、みんなウドンを食いながら失業している(単純労働は賃金を払う必要すらないレプリカントの役回りなので、考える人でもない大多数の人間の役回りは失業者しかない)。
主人公のデッカード刑事は専門職だから、少しはまともなコンドミニアムに暮らしているが、労働条件は厳しい。結局、帝国支配を逃れて辺境へ旅立つ。
というわけで、実は、常にオルターネイティブとしての辺境は存在する。保育園を経営するというのも現時点ではオルターネイティブだ。
帝国は滅びる。
鉄・銃・病原菌によれば、中華大帝国(宋以降清まで)は行き過ぎた中央集権による硬直化によって停滞し、先進国の座を滑り落ちた。
20世紀中頃に、各種帝国は帝国としての形態は瓦解した。帝国を構成する植民地経営の負荷が大きくなり過ぎたからだ(もっとうまい支配方法を見つけたのだが、それは民間によってなされているので、帝国という形態が瓦解したことは明白だ)。
20世紀の帝国瓦解はなんのことはなく、2000年前の三国時代の中国で、諸葛孔明が予見していた。
「丞相、なぜ、孟獲を放つのですか? というよりも、なぜ蜀に編入しないんですか?」と蒋琬あたりが聞く。孔明へらへら笑いながら説明する。「蜀に組み込んだら役所を設置しなきゃならないじゃん。ってことは役人を置くことになるよな。ってことは、そいつらを守るために軍隊を用意しとかにゃならん。っていうか、税金を取り立てる連中も必要だし、警官もいる、こいつらの給料や報告書を蜀とやり取りしなきゃならない。蛮族といえども蜀の臣民にしたら、皇帝の威光をあててやらにゃならん。福祉もそれなりに充実させてやる必要はあるよな。皇帝が恨まれるようではまずかろうて。うわ、金ばかりかかるじゃん。それより蛮族はばかだから、おまえらが自分で自分の国を治めれば良いといえば大喜びで勝手に働いて貢物を持ってくる。やつらが持ってくるんだから輸送の手間も省けるし、全然、得じゃん。しかも、蛮人は教育がないからほっとけば、ばかすか増えるから、奴隷じゃなかった人間の壁じゃなかった、独立軍隊として、蜀のために戦えば名誉も富も思うがままとか言えばどんどこやって来る。もちろん、そんな連中は単なる弾除けだから、すぐに魏との国境へ送り込めば良いわけよ。ひゃひゃひゃ」
新植民地主義の先取りである(しかし悲しいかな2000年後の帝国後ほどの知見はなかったので、従属させることまでは考え付かなかった。というわけで、いつの間にか孟獲と蛮族は何回目かの北伐のあたりから姿を見せなくなる)。
帝国が滅びた後は、帝国前の世界秩序が復活した。ただし、よりソフィスティケートされた支配は残り、一部は民営化されたと考えられる。
同じことが、企業帝国についても当てはまるはずだ。なぜならば、それは帝国であり、帝国という支配体制が持つ根本的な問題は解消していないからだ。
すると、たかだか数10年後には、1970年代あたりの世界秩序じゃなくて企業秩序が復活する、ただし、よりソフィスティケートされた支配として、となるだろう。
というわけで、グローバルがどうしたみたいな言質にこの期におよんで踊らされるのはあまり得策ではないだろうなぁ。
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