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ユーエンは、光子そのものをビットとして扱うのではなく、量子ノイズそのものに情報を秘匿することを提案する(したがって、光ケーブルのみでなく、無線に適用することができるということだけど、はてそういえば無線ってなんだっけ? この場合は電子ということになるのかな:追記 光子で良いのだった。ちえぶくろとは思えぬ情報量)。
情報の伝達には1と0を使うが、これは一定期間持続するHIGHとLOWで区別される(と、RS232C時代の知識でおれはとらえたのだけど、それが正しい理解かどうかは別)。HIGHというのは振れが大きい波でLOWというのは振れが小さい波だから、微視的にはアナログだ。したがって1とみなすか0とみなすかは振幅に対する閾値の設定に依存する。
今、最大振幅100として、振幅差が20以上ならば差を検出できると仮定する。
これを10刻みに分離する。60-80/80-100を0/1とする、50-70/70-90までを0/1とする、40-60/60-80を0/1とする……。
ここで慣らしたレベルが75だったとする。60/100であればそれは0を示す。しかし50/90であればそれは1となる。つまり、値が何を示すかはどのレベルでHIGH/LOWを分けるかの閾値に依存して変化する。
この閾値をきわめて短時間のうちに交換していくことで、取り決めを知らない外部からは単なるノイズとしてしか観測できないものとなる。
(というようなこととおれは理解した)
結果として作られるものは単なる波なのでBB84と異なりリピータで増幅し直すことも可能だし、光子レベルの精度も要求されない。ノイズは問題とならない(というよりも、現在の技術を極度に高精度にしなければならないものでもない)。
閾値の変化そのものが暗号化なので鍵交換用ではなく、そのままデータ通信用だ。
すると実現化の課題となるのは、エンド同士が同期をとって閾値をスライドさせる仕組みとなる。
乱数生成器が同一であれば、同一シードから生成されるシーケンスは等しくなる。これをエンド同士が持ち、閾値を変えていくことでそのような機構が実現できる。で、玉川大学ではそのタイプの装置を作っていてサイズは1U。
そこでおれはふと疑問を持つ。USではDARPAがスポンサーということは、軍用研究だし、おそらく基地間や基地と軍用艦/機がエンド用に同一シードを組み込んだ乱数発生器を持てるだろう。(というか鍵配送方式の場合もアリスとボブが自分の家で光子を判定するのか? という疑問がががが) これって民生で利用できるものなのだろうか? ISPが大手町と自社に装置を置くというようなストーリーは見えてこない。
いや、自社データセンター間であったり、本社-研究所間であったり専用線のニーズは当然ある。クラウド事業者が顧客用幹線サービスとして提供するというシナリオも考えられる。これまで光ファイバーは安全だといっていたが、実際にはNSAによって盗聴し放題だったことが明らかになったわけで、NSAではなくそれが産業スパイであったり国際的な犯罪集団だったりしたら目もあてられない。すべてがデータ化されてデータセンターに集約されている状況を考えれば民生用のほうが需要はむしろあると考えた方が良い。
軍用としての需要があるのは当然その通りで、DARPAのほうでは、ジェット機と基地の無線にY-00を適用する実験をしていると聞いた覚えがある。
ジェット機との無線と聞いて、BB84のmbpsとの実用性の違いをおもしろがるおれたち。
概要を知るならこの本がお勧めと言われて教えてもらったのが量子エニグマ暗号という本だった。Kindle版は無い。
量子エニグマ暗号―サイバー攻撃への究極的な防御技術 (万葉新書)(修, 廣田)
エニグマと聞いて、Uボートの中とベルリンでお互いにエニグマをぐるぐる回転させている様子を思い浮かべたり。それに比較してなんとサイファイな世界なんだろう今は。すげぇなぁ。
後で調べたらUltra-secure, ultra-efficient cryptographic systemという特許があったので、これを読むのがわかりやすいのかなぁ。
それにしても本当に全然知らないことばかりで、実におもしろかった。
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