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妻が、キラー通りの家具屋のクマがいい味だしていると言っていたな、と思い出して家具屋のショーウィンドウを覗いたのが6時過ぎくらいだ。
それなりの大きさのクマ(わりとリアル)が、手を振っている。
見ていると、向うから子供の、それも結構幼い子供の声が聞こえて来た。
ねーねー、みてー、今日も手をふってるよー
ちょっと舌足らずでダミダミしているから、3歳いくかいかないかというところかな。
すると少し疲れたっぽい母親らしき声が
ほんとだ
とぼそっと聞こえた。もっとちゃんと答えてやれよ、とツッコミたくなるような投げやりな声だった。
すると、子供のそれは本当に心から嬉しそうな、うふふふふふという声が聞こえてきて、こちらまで思わず嬉しくなりそうになる。
多分、とクマと別れて、親子連れと通り過ぎて考える。
あの子は、きっとクマが自分に手を振ってくれていると思っているのだろうな。
母親は特に考えずに、クマが手を振っているのは本当だから本当だと言ったのだろう。
でも、その肯定的な言葉が、やっぱりクマが自分に手を振ってくれているという嬉しさになって思わず笑い声を出したのだろうな。すると、おれの受け止め方はどうあれ、ほんとだ、というのは実に良い返答だったのだ。
世の中の子供がみな、あの子のように肯定的な世界で暮らせていると良いな。
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