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妻がオゾンのDVDを借りてきて一緒に観るか? と誘ってくれたので一緒に観た。
作文の宿題(私の週末)に「日曜は親に携帯を取り上げられるからつまらない(終)」のようなろくでもない解答しか提出しないような生徒たちにうんざりしている高校の国語教師が出てくる。ところが、1作、とてつもなく語り口が巧妙な作文を読み始めて思わずのめりこむ。友人の勉強をみてやるという目的で、その友人の凡庸な家庭をのぞきこむ物語だ続く。
本来は数学しかやる気がなかったというその生徒を見込んで語り方、テーマの決め方、読者との関係などについて放課後のマンツーマンレッスンをしながら、徐々にある種の共犯関係となっていく。
この生徒が、御法度の松田龍作のような悪魔小僧な目つきで教師(妻から満月の夜で目立っていた妙な役者と言われてさっぱりわからなかったが、若いころの写真を見させられて、ああ、あいつかと納得の人。でも名前はもう忘れた)に支配されながら(物語の展開は。それはオゾンならではの巧妙なものだ)、しかし語り口とテーマ(これがオゾンっぽい凡庸と通俗極まりないものだ)は自分のもので語る。あまりにも魅力的な語り口に教師もまた生徒に支配されてしまう。
テクニックはわかっているし理想も語れるが、自ら語ろうとすると凡庸でしかない教師と、圧倒的な語り口を持ちながら下劣で低俗なテーマしか持てない生徒が、最後にコンビを組むことで外から眺める家の中でさまざまな物語が動き出して終わる。
それどこのオゾン? という突然オゾンが自分について語ったかのようなおもしろさがあった(というわけで、教師は学校を馘首になり妻にも去られ、一方の生徒も流しの数学家庭教師になるという、ろくでもない終末を迎えるにもかかわらず、オゾンの映画としては圧倒的なハッピーエンド感があった。その意味ではオゾンとは思えぬ爽やかな終わり方。でもオゾンはヒッチコックにはなれないだろうな。下劣さを昇華できないし、昇華する気もないことを自分で語っているようなものだ。もちろん、セリーヌになれるはずもないし、なる気がかけらもないのは観てればわかる)。
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それにしても変な作家だなぁ。
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