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椿姫かぁ(大して見たくもないし)と思いながらも、新国立劇場に金を払うのは国民の義務だと考えて新国立劇場。
さすがにB席なわけだが、ふと見ると2階1列と書いてあって、2階1列というのはS席ではなかったか? と不思議になる。
が、なんのことはなく袖の延長線上にある位置だった(が、実は相当見やすく音も悪くない、超お得席だった)。
1幕はほとんど捨てて見ていたのだが、センプレリベラだけはまじめに観た。と、ルングが両手を広げてピアノのほうへ向かって走る。振り付けは最高じゃんと思って観ているのだが、ルングの声は複数の音が同時に出て来るタイプでふるふるしたり絶叫にはならないものの、あまり好みではない。とは言え、スリムで美人のヴィオレッタだから悪くはない。センプレリベラのラストも決まりに決まって素晴らしい。
が、2幕になってまじめに観始めた。
特に代役で出演となったメオーニという人のジェルモンが抜群だ。良く通る声で、ここまで意志が見えて説得力があるジェルモンは初めて観た。聴いたのレベルでもハンプトンなんかより遥かに良い。ルングは演技が良いなぁ(振り付けが良いなぁ)。この演出(ヴァンサンプサール)で2回目(1回目)だが、今回はプロジェクションマッピング(多分)を使いまくってその代わりリアルな道具を最小にしているようだが、これも実に良い。ポーリは1回ラストでしくったところがあったが、2曲目の貧乏と戦う歌とか見事なものだ。
いずれにしても、2幕はメオーニが良すぎる。
で、気づくが、指揮のフリッツァもこのバラバラに歌がつながっているだけのオペラを実にうまく繋ぎ合わせている。なんか、とても良いプロダクションのような気がする。
続く3幕。合唱は実に良い。そういえば、フリッツァがわがまま言う(ナブッコのセットの構成から無茶な音量を要求だか)から文句を言ったと三浦が書いていたが、そういうこともあってか、なんか合唱と交響がうまく噛み合っているように思う。雨が降ったら地が固まるの原理みたいだ。
そして4幕。ルングの声が違う。死にかけのヴィオレッタの弱々しい声なのか音量は明らかに小さくなっているのに素晴らしく通る。1〜2幕のバリがある声とは全然違って実に澄んだ伸びる声に感じる。これも表現力なのかなぁ。すごい歌手なんじゃなかろうか。
演出は残酷なすべての和解はヴィオレッタの譫妄(紗幕の向こうにナンネッタもジェルモン父子もいる)で、血を吐き(いや赤い布にくるんだ写真だが、白いベッドの上に広げたそれは喀血以外の何者でもない)赤に包まれて直立して死ぬ。歌はますます研ぎ澄まされる(1箇所しくじったのが残念)。
なんか、とても良いものを観られて満足しまくった。こんな良いものなら、1幕から真剣に観れば良かった。おれは間違っていた。
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