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日々の破片

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2018-05-04

_ 丸美屋のアニー

子供が一昨年か一昨々年に見て来て、一緒に行こう、おもしろいよ、と言われていたアニーを観に新国立劇場。

箱は新国立劇場だが、丸美屋がスポンサーのようだ。

当然ながら子供が多いが良いことだ。

物語はうまくできていて、実に楽しい。子供を殺すことも平気な悪役は出てくるが、全体的に良い感じなのは、(子供が言っていたが)富豪を含め、みんな良い人だからだろう。

ミュージカルとしては良い舞台だし、作品だということはわかった。おもしろかったし、楽しめた。

が、内容はいろいろ思うところがある。

そもそもミュージカルでアニーと来たら銃を取ると思っていたくらいに知らなかったわけだが(子供にその時、違うと教わった)、なんとも、現代に通じる物語だなと思って後から調べたら、原作はオイルショックの頃で、スタグフレーションになっていた時代だ。そこからデフレになっていた世界不況期のアメリカを重ねたと考えられる(観ている間は赤狩りのころか、さもなければ日米貿易摩擦の頃に成立したミュージカルかな? と推測していた)。

というわけで、11年も父母から音沙汰がなく孤児院で暮らしているが希望を失わずに元気いっぱい、明るく、愉快で、人当たりが抜群な赤毛でソバカスの白人中の白人の女の子のアニーが、不況で工場を閉鎖し労働者を解雇することに悩む経営者や、ルーズベルト大統領と取り巻きの頭脳集団に対して、現状がどれだけだめでも希望を失わないことを教えて、強いアメリカを取り戻そうということがテーマになっている。

ただ、日本人を狙い撃ちで強制収容した差別主義者のルーズベルトはともかくとして、ここでの経営者が、初代だという点はとても重要だと思う。

貧乏のどん底から汚いことにも手を染めながらのし上がって来た男だけに、明日は我が身感に根差す真摯な弱者に対する共感があるからだ。これが物語に説得力を与えている。

したがって、アニーが友達をパーティーに呼ぶなら、まずは使用人のなんとかさんと……と言い出したときに、なるほどそれは良いアイディアだと同意して、友人のなんとかさんとして使用人たちを扱うのもおかしくはない。というか、とても自然な流れでパーティーを楽しいものにしている。

これがイギリスなら階級がそもそも違うから意味わからん、となって撥ねつけそうだ(それはそれで別のストーリーが生まれることになるだろう)。

あと、三代目もお話にならないだろう。そういうものだからだ。現在進行中だな。

(ふと思い出したいが、ゴッドファーザーでも初代のマーロンブランドは恐ろしい男だが人間的にはとても良いやつなのに、三代目のロバートデニーロは危険極まりない非人間として描かれていたなぁ。組織を作る立場と、組織を守る既得権益側だと同じ家族でもずいぶんと違うってのは万国でわりと共通なのかも)

犬とアニーのシーンでは、警官がやたらと人情味を見せるが、同じ警官が浮浪者に対しては職務に厳格に忠実なのが、いかにもありそうでおもしろい(主人公がアニーである必然だ)。

というわけで、30年代のアメリカを舞台に70年代のアメリカに対する応援歌を2010年代に日本で見ると、共通点はあるものの、根本のところが異なるので、なんか微妙な味わいがあった。


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