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正月は道路が空いているので、ちょっと飛鳥山へドライブした。
いつもは埼玉のほうへ向かうときに通り過ぎるだけだが、今日は脇の駐車場に停めてじっくり見ることに決めていた。
飛鳥山の名は、もちろん祐天吉松で息子の七松が辻占売っていることで知った口なので桜の名所ということは知っていても、実体はまったく知りもしない。
入るといきなり奇妙に美しい古い建物が建っていて、はて? と看板読むと、渋沢栄一の邸宅跡で、庭園に建てられた書庫(というか図書館)と、来賓用別荘(キッチンが付いている2広間の洋風四阿)が戦災を免れて残っているのだった。
さらには鳥居と狐と土台しか残っていないが兜稲荷という兜町に渋沢栄一が作らせた(ってことは日本銀行のためってことだな)お稲荷さんが移設されていたり。空襲で焼けて跡形もないが、別の茶室では徳川家の赦免のために、徳川慶喜と伊藤博文の会見をしつらえたとかいう逸話が書いてあったり、いや実におもしろい。
ここでも渋沢栄一か。人生いたるところに渋沢栄一ありだな(というくらい、東京に生きていて渋沢栄一に関わらない日はない。なのでいやでもおれにとって明治の英傑といえば薩長土肥ではなく、天下の幕臣渋沢栄一になるのも道理だ。財閥を作らないで資本は天下のものとしたのもいいね)。
清水建設のおっさんが寄贈したという別荘(茶室扱い)は、晩香廬(ばんこうろ)という名前で晩に香る廬なのだろうが、バンガローを洒落たということで、おもしろい。正月休みらしく中には入れなかったが外から眺めるとダイソンの無翼扇風機だか加湿器だかが稼働していて新旧取り合わせの妙もおもしろい。
図書館のほうは、青淵文庫という2階建ての鉄筋コンクリート造りで、これもキッチンがついていて、裏に回るとどうも階段らしき円筒の半分が、表に回ると棕櫚の鉢植えがあるテラスで両翼に上りと下りの2頭の龍が描かれたステンドグラス、上には丸に違い柏の中に寿らしき文字が見え(寿の意匠は外壁の鉄柵にもあった)る飾り窓が美しく、実に良い感じだ。
建屋を離れて裏手に回ると山手線が見える険しい斜面に竹が植わり、棕櫚が伸び、水が流れて滝を作り、どこが祐天吉松かという雰囲気。
こんなおもしろいところだったとは知らなかったな。
で、山の一番高いところへ向かうと、こちらは実のところ古墳だということで、なんか都内に小山があればすべてこれ古墳だなぁとおもしろさ倍増。それにしても、よく古墳だと気づいたな。
横の飛鳥山公園はなんか奇妙な城を配置した楽しそうな公園になっていて、子供連れで賑わっている。
なんだ、王子は元は細民窟だから桜の名所もあるだろうとか考えていたら、抜群に良い環境なんじゃん。不明を恥じるばかり。
(おれの祐天吉松体験は菊水丸だけど、一度は広沢虎造で聞きとおしてみたいものだ)
追記:山の裏手の線路に向いた柵に「石を投げるな」という立札があって、なんだそれは? と思ったら、江戸時代には山から瓦を投げる遊びがあったらしい(講談版の祐天吉松だと七松は辻占を売るのではなく瓦を売っているらしい)。
ジェズイットを見習え |
落語の『愛宕山』ですね。
なんで?と思ったら、瓦投げのことですね。<br>(最初読みのあたごやまから、あたまやまと書いてるのかと思って疑問に輪をかけてました)