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山尾悠子のラピスラズリ読了。
なんかKindle版の安売りしていたから、買って読んだのだった。
といっても、山尾悠子の作品はこれが初回だ。なんとなくだが、多分名前の悠の字のせいで尾崎翠の現代版なのかなとか考えていたが(全然字面は似ていないが、おれには同じカテゴリの字に見える)、大きくは違わなかったが、全然違った。
むしろ読んでいる間は、相当、中井英夫の悪夢の骨牌などの擬ヨーロッパ文学臭を感じていた。あるいは、森川久美だ。
1980年前後の花とゆめやそれより少しあとのプチフラワーの世界に少し通じるものがある。現実との折り合いの悪さという主観が終末の予兆という客観に至る物語だ。
もっとも、文学なので構造はより複雑で奔放だ。特に今語っている時点からの未来をどんどん予見していく前のめりにつんのめっていくような不思議な語り口の独特さがおもしろい。時間の行き来によりある人物が異なる人物と重なり、ついには国までまたがってしまい、近未来のようでありながら、いきなり16世紀に引き戻される。
それにしてもアッシジの聖フランチェスコの登場で、リストやロッセリーニのような感覚に相通じるものがあるようにさえ思った。
聖フランチェスコには思い出がある。神保町というよりも小川町のあたりの洋食屋から出たら、近所の2階の和風の窓の格子に半身をもたらせながら伸ばした片手で1階の屋根に集まった鳥にえさをやっている浴衣の青年がいて、ああ、あれは聖フランチェスコなのだなとその一瞬、世界の様相ががらっと変わったのだった。
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