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妻のプライムビデオを使って一緒にわたしは、ダニエル・ブレイクを観る。
ケン・ローチの作品だけに淡々とだが映像で明確に説明しながら、心臓病のため医者に就業を禁じられているにも関わらず、生活保障を受けられず(この部分が冒頭、電話での会話か、それとも面談かわからないが、音声によるやり取りだけで、すでにカフカ的というかずばり城のような不可解な迷宮に英国が変貌しているさまが浮き彫りになる。というか、政府事業をアメリカの会社が委託されて適当な仕事をするって、日本のすぐ未来っぽい。既に水道利権を売り渡したわけだし)申請のための手続きをするための手続きをするための手続きをする資格を得るための申請をするための手続きをするための講習を受けるための手続きをするための申請をするための申請書を記述するための講習を受けるための手続きをするための(が延々と連鎖する)静かな戦いが始まる。
が、勝ち目のない戦いなので最終的には心臓発作で死んでしまう。
隣に住むチャイナと呼ばれる黒人が、中国の工場からの横流しでそれなりに余裕ができたり(服が良くなる)、ロンドンからニューカッスルに追い出されたシングルマザー家族との交流(いかにも年取った男性的価値観で殴り込みにいくところはなんとなくおれは引いてしまったけど)や、人間的にまともだが役人としてはだめな女性職員やらとのからみやら(唐突にイアンカーティスが同じような職業だったことを想起したり)が続く。
内容はとてつもなく深刻なのだが、そこは映画らしいユーモアの連続(特にパソコンを使って申請書を作成するためのくだりは抜群。エラー時のビープ音が素晴らしい)で実にうまい。
結論がない、ある生活の切り取り映画(というのがいつものケンローチの作風)なのだが、実にうまい。映画らしい映画でおもしろかった(が、内容はまったくおもしろくなく、不愉快極まりない)。
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