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kdmsnrさんがFBでくっそおもしろいラストマンの続きはどうなるんだ? とか書いていておもしろそうなので4月18日に買って、さっき1~6巻まで読み終わって、くっそおもしろいラストマンの続きはどうなるんだ? となっている。
70年代に日本アニメで育って、最近はナルトあたりを読んでいるらしきフランス人3人組のマンガ(いちおうバンド・デシネに分類して良いのだと思う)だが、20世紀マンガの文脈総ざらいの側面があってどうにもすさまじい。
日本のマンガの影響を後書きマンガなどで公言しているが、絵柄は日本のマンガではない。でも細部にいろいろそれっぽいところはある。
とにかく様々な要素を惜しげもなくばんばん投入してきて、それにほとんど破綻がない(読んでいて、あれ? なんでこうなると最初は思わなくもなかった。特に、王国から谷を抜けてマッドマックスになった時にはそう思った。思い返すと相棒が出てくるところもえ? となったな)。
最初は、主人公の少年が木の精霊の力を使う格闘技学校で訓練しているところから始まる。トーナメントへの出場が目的らしくて、同級生(嫌な奴もいればどうも恋心がなくもない女生徒とかも出てくる)間の話かと読んでいると、いきなりマッチョな好漢登場。主人公のやたらとセクシーな母親がからみ、なんでこうなるのとどんどん話が展開していくのだが、展開が唐突ではあるが、ちゃんと筋道が立っているので滅法おもしろい。魔法の国の武道大会に始まり、マッドマックス風暴力の世界での裁判、一転、ギャングの麻薬戦争、そしてベルセルク風なダークファンタジーに変わり、さてこのあとどうなるんだろうというところで7巻に続く。
特に謎の仮面戦士が良い味を出している。
4巻あたりのあとがきインタビューで作者の一人が、なぜセックスシーン(まったく露骨ではない)が日本の読者から拒否反応を受けたのか不思議だ、だってキャッツアイでもっこりとかバシバシ出てくるじゃんというようなことを書いているのが、すごくおもしろかった。というのは、おれも拒否反応はまったくないものの、そのシーンではん?となったからだ。おそらく日本のマンガ文脈では、交接そのものを示す描写は書かないからだろう。というか、画がその部分が妙に自然にセクシャルだからだと思う。どうもコンテキストの中に埋没しているのが、逆にマンガとしては不自然な感覚を受けるのだろう。というか、フランスだからかも知れないがあまりにいきなりそこまで進んでしまうからかも。ここが、文化的に一番の相違点になっていそうだ。
ラストマン (1)(バラック)アマゾンでKindle版を購入したが1~4巻は右綴じ、5~6巻は左綴じで別の書籍コードになっているらしくライブラリが2つに分かれる。
右綴じは日本のマンガと同じページ繰りなのでその点は自然なのだが、コマ割りは左から右で、最初の2ページで話が続かなくて不思議だった(で、コマ割りが左から右へ進行と気づく)。さらにセリフが左揃えになっているので、縦書きではなく横書きだと頭ではわかるのだが、縦読みしそうになったりもする。特に字数が揃っているところはそうだ。
試し読みできる範囲だと
負けた 者だけ 交代だ
は、「たけだけだ……」とつい読みそうになる自分に気づいておもしろい。
慣れたところで、5巻以降は左綴じなので自然と左から右へのコマ割りでOKとなる。
日本語は、現在は横書きの場合、左から右なので左綴じであれば自然と読めるが、これが日本のマンガを欧米に持ち込む場合のネックというのは相当前に何かで読んだ。
要は右から左へコマが進むので、左綴じだと不自然(セリフは横書きになるわけだが)、右綴じであっても当然不自然、そのため、読者の便を考えて反転させて出版するので、日本マンガの登場人物は全員左利きで不自然ということだった。さすがに現在はページを反転させて出版したりはしないだろうとは思うが、読みにくそうだな(と思う反面、1~4巻もこちらはすぐに慣れたのだから、わざわざ日本のマンガを読もうという人達には屁でもないのだろう。でも、マスで売るものは、現在でも反転させていたりするのかな?)
同じく、縦書き2行の吹き出しに、横書きにするとえらくハイフネーションされまくって読みにくそうだが、そのあたりはどう処理しているんだろうか?
# このマンガの今気づいたすごく良い点は、どの登場人物も次々変化する文化状況に対して不思議がることはあるのだが(精霊の国から出て来てテレビを目にすればそりゃ不思議だろう)、すぐさま状況を受け入れるところだ。だから政治目的や欲望遂行のための暴力や敵対はがんがんあっても、文化的対立がまったくない(解放戦士はいるけど文脈が異なる)のはとても教育的だ。
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