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日々の破片

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2021-06-05

_ 梅田芸術劇場のロミオ&ジュリエット

赤坂ACTシアターで、ロメオ&(アンドではなくエなのだが、なぜかアンド)ジュリエットを子供と観に行く。

オリジナルのシェークスピアは当然として、プロコフィエフのバレエも大傑作だし(コジョカルのは良かったなぁ)、映画作家アンソロジーのキアロスタミのやつも好きだが、ジェラール・プレギュルヴィク(sは読まないと思うが良くわからん)というまったく記憶できない作家のロックミュージカルもすごく好きだ。

以前子供がDVDで買ってきて見せてくれたのだが、とにかく音楽の組み立てが抜群だし、ヒバリの鳴き声の情景をまともに演じさせるため一切の曖昧さなしに悲劇性が強調され、最後、毒をあおったためにきれいに死んでいるロメオを見たジュリエットが完全に勘違いして(急いで旅先から戻って来たから疲れ切って眠っていると思う)幸福でいっぱいの歌を歌いながら冷たさに気づき、一緒に同じ毒をあおろうとするが瓶は空っぽで、次に唇から毒を奪おう(ほとんど気が動転しているとしか思えないわけだが)としてそれにも失敗して最後に短剣を取るまでの一連の演出まで、実に素晴らしい。

で、結局やたらと気に入ったので、子供が買ったCDは良く聴く。

Vérone - De La Haine A L'amour (Extrait De Roméo Et Juliette)(-)

(今気づいたが、随分な抜粋版だな)

というわけで、実際の舞台で観られるので楽しみに楽しみにして出かけたわけだった。

で、幕が開くや、これはHiGH&LOWかという感じで、青いモンテギュと赤いキュピレットが激しく踊って、2階建ての脇の道具も良いのだが、正直なところ度肝を抜かれた。無茶苦茶かっこいい。

だが、仲裁に来た大公の髪型が摘まみみたいでさすがにこれはないなぁと思ったり(概して歌を含めて子供対大人というフォーマットを通しているので大人はかっこ悪くしようとしているのかな)。

で、どちらかというと退屈なラエーヌがニクシミーになっていて相当違和感があったりしたり(でもあとで子供にニクシミーは無いんじゃないかと言ったら、言下にゾーオじゃ動物園みたいだし日本語にするならニクシミーしかないと切り捨てられてしまった)しているうちにロメオが出て来てジェペール(日本語でどう歌っていたか忘れた)で、このあたりまではそれほど音楽も好きではないわけだが、やっとモンテギュ組員たちとロメオが合流して、ベンボーリオかメルキューシオか忘れたが、お前はおれたちの王様になるんだからに対して、いや違う、おれたちみんなが王様さと、レルワデュモンドを歌って踊る。ここも実に良い。だからレなのか。

ロメオとジュリエットがまだみぬ恋人についての歌を歌う。ここも悪くないが、CDには歌が入っていないな。

舞台ではこのあとパリスがベローナいちの金持ちとして登場し、借金で首が回らないキュピレットが結婚を承諾してから、ジュリエットが自然に出会えるように仮面舞踏会を開こうとなる。

ジュリエットは16歳とシェークスピアから2歳サバを読んでいてなんでこんな無意味な改変したのか? と不思議になったが、法律的には結婚できるからとか喋るから日本版ということで整合性を取ったのかも。

で、当然のようにロメオたちは仮面舞踏会に忍び込んで、ジュリエットを捕まえようとするパリス、女の子をどんどん捕まえようとするメルキューシオと、いろいろ舞台を動かしながら、突然階段を真ん中に持って来て、他の連中を全員退場させて階段の上にジュリエット、下にロメオを配置して、お互い以外にはまったく目に入らない状態をうまく演出する。エスクテュメムラが全然違う詩的な日本語になっているが、悪くない。この曲は演出と相まって実にうまい。これが舞台ならではの感動的なシーンだな。

バルコニーの場はふつうに美しいが、乳母のジュリエットを呼ぶ声をしつこいくらいに繰り返す。

ロメオはロレンツィオに結婚式の相談に行くと、ロレンツィオはYoutubeのドラッグチャネルを視ながら睡眠薬の調合中で爆発させたりする。

乳母が銀色に輝く一昔前のアルミの灰皿を引っ繰り返したような帽子を被ってモンテギュの縄張りに入って来ると、モンテギュ団がUFOが来たと騒ぎ出す。ここは乳母の歌いどころ(レボレレはわりと好き)だと思っていたら、モンテギュの踊りの見せ場でもあったのだな。

乳母は見せ場が多い。最初は親のいうことを聞け → とはいえ恋をして独り立ちするのは当然のことだから応援しよう(レボレレは楽しい曲だが、エブワラケレムはすごく良い曲だ。この曲本当に好きだな) → 死んだものはしょうがないから親のいうことを聞けというのは自然だ。

というか、レルワといい、全体にモンテギュ団のほうが見せ場が多い。(と思っていたら、カーテンコールでキュピレット団のダンスがあって、(子供もやっぱ見せ場が少ないからじゃないかと同意見)おもしろかった)

で、神父と乳母の立ち合いのもと結婚するわけだが、カテドラルのそこかしこに人がいてスマホで撮影して拡散する。(2001年初演時には、写メはあるだろうが、拡散用のプラットフォームってフランスにはあったのかなぁ? というのが疑問点)

それにしても、ここでの結婚の意味合いが完全に50年代ハリウッドギャング映画のモーテルの結婚式場と同じ意味合いでしかなくておもしろい。

で、あまり好きではないがこの作品のテーマソングっぽいエメが歌われまくって1幕おしまい。

なるほど、結婚式の写真が拡散されたからオンディダンラリュなのだなとわかった。この曲はすごく好きだ。

プレギュルヴィクの曲は転調をものすごくうまく使う。この曲もそれが顕著だ。それまで短調だったヴィのィが途中で長調にぱっと転調して気持ちが上向いたりする。転調しないまでも、同じメロディの末尾を上げてみたり下げてみたり伸ばしたり打ち切ったり、感情の動きと音の動きを実にうまく合わせている。

というわけで、歌手もすごく良いのだ(というか、最近の人たちはかっこいい)。昼間観に行ったので甲斐という人のロメオだったが、家に帰ってから子供が配信も観ていて、そちらのほうがロメオっぽいマリオという人だった。

で、当然のようにメルキューシオはティボルトに殺され、ロメオはティボルトを殺し、追放となる。

ロメオはロレンツィオに身の処し方を相談するのだが、そこに乳母がやってきてロレンツィオと一緒に、明日の朝まで時間がないからさっさとジュリエットのところに行ってやるべきことをやってから旅に出ろと直截なことを言い出す。

で、ヒバリの声が聞こえ窓から陽がさし、ジュリエットはあれはナイチンゲールの声よと言っているところに乳母がやってきて目をそらすとか、まあ現代の舞台劇ですなぁと(とはいえ、これまでいろいろ舞台を観てきたが、こういう生々しいのは薔薇の騎士と(相当違う気がするが)オリー伯くらいしか覚えがない)

ロメオはマントヴァへ行くのだが、そこの怪しい宿でスマホ(時代的には携帯なんだろうが)を盗まれる(というかフロントに預けた荷物に入っているということかも、いずれにしても盗まれるのだが)。

一方ロレンツィオは24時間後にはジュリエットが仮死状態から復帰できるとロメオにメールを送るかメッセする。

(子供いわくこういう場合は音声電話か音声メッセンジャーのほうが反応の有無を確認できるから良いのにだそうだが、思うに盗まれたためそもそも読めないというのは想定外過ぎる。シェークスピアの僧ジョンが追いはぎに殺されるのと同じ程度かな。というわけで、ベンボーリオが気を利かせてロレンツィオに一言相談してから行けば良いと思うのだが、そもそもロメオ以外誰も教会へは行かなさそうだ)

ここで、キュピレットの親父(団はモンテギュのほうが見せ場が多いが、親はキュピレットのほうが見せ場がある)が、5歳のときに不義の子と知ったから絞め殺そうと首に手をかけたが、お前は何も気づかずにニコニコしている。OKまいった、わかってる。おれの子供だよ、愛しているよと歌い出す。

この曲はびっくりするほどつまらない。一貫してテレレレというメロディしか使われない。

初演時に名優だが歌がへたな俳優に親父をやらせたので曲を極端に単純化したのかな? と思わざるを得ない。というわけで、曲ではなく歌と演技だけなのでCDだと退屈なのだが、舞台だと当然歌手の演技が入るので話は異なる。松村という人はうまかった。

ジュリエットはロレンツィオのベラドンナベースの薬を飲んで仮死状態になる。

マントヴァまでジュリエットの訃報を告げにベンボーリオが来ると、ロメオは迷うことなく薬の売人の死神から毒を買う。

まあいずれにしても遠いところで一緒に暮らすんだからOKとにこやかに毒を呷る。

その瞬間にジュリエットが目覚める。

このMAD好きだ(音声はハンガリー版らしい)。

原曲もおそらくこのハンガリー版も歌の冒頭からロメオが死んでいることが前提となっているので悲しみー喜びの2段階だが、日本語版は歌の間で死に気づくことにして、喜び-悲しみ-喜びの3段階にしているのでより精緻な曲に聴こえた。

Roméo & Juliette - De la haine à l'amour - Karaoké(-)

KARAOKE?


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