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子供がおもしろいしソーンハイムだから観ようというのでアマゾンプライムでイントゥ・ザ・ウッズを観る。
これもおもしろかった。
特に二人の王子が渓流で歌うアゴニーは最高だった。撮り方も実にうまくて二人の王子がどちらがより苦難に満ちた恋なのかを相手を押しのけながら交互に映し、しかしここぞとばかりにアゴニー!と歌うところでアップにしたり全身像にしたりするのが抜群で、特に2回目のアゴニー!では大爆笑だった。
お話としては赤ずきん(hungry little girlという言われようが語呂の良さもあってうける)とジャックと豆の木とシンデレラにパン屋の夫婦と隣の魔女とラプンツェルを混ぜ合わせたどうでも良いものなのだが、悪くない。なぜ黄色い髪の毛を掴んで塔によじ登るのでOKなのかと思ったらちゃんとそれではだめだというように回収したりして意外なほど物語も辻褄が合っているのも悪くない。
昨日観たクマ王国と同じく、物語は2部構成になっていて(元のミュージカルは2幕構成らしい)童話を回収するまでが1部、童話を離れて脇役たちをばんばん殺しまくる(大地に沈んだり崖から落ちたりとそこはディズニー映画っぽい)2部となっている。とはいえちゃんとハッピーエンディングなのだった。
ただ、アゴニーは抜群なのだが映画としては森のシーンを森のシーンとして暗く作り過ぎていてどうもいまいちに感じた。同じようにプロモーションビデオシーンが抜群なアナと雪の女王2と比べるとそこがいまいちかなぁと思った(物語はふざけている分だけ遥かにイントゥ・ザ・ウッズのほうがおもしろい)。
何気なくテレビがついているので見たら奇妙な骸骨が小銃を口に咥えているエッチングが映っていて日曜美術館だった。浜田知明という作家で茅ヶ崎市民美術館で展示中という。
というわけで興味を惹かれて妻と茅ケ崎市民美術館に行った。
特に平原に腹に槍を突き立てられた女性が死んでいる(というか、犯されて殺されたのは明白だが)作品が構図を含めて異様に印象的だった。概して50年代(30代かな)に凄まじい作品を残して(商流を確定させて)後は自由に作品を広げて行ったのだろう。という点では東郷青児とかピカソに近いのかも知れない(こちらは10代、20代だがその時期が戦時下なうえに徴兵されているのだからどうにもしょうがないのだろう)。
テレビでもやっていたが最晩年の杖をついた体が前から見てくの字になっている(が杖を含めた構図的なバランスのようだ)老人の像も悪くないというか好きかも。
ロッキード事件を風刺した作品と日曜美術館で説明されていた作品(同じことが作品の解説板にも書いてある)を見ると、空に飛行機が飛んでいることと制作年、賄賂の授受の3題話でそれを理解しなければならないわけで、これは難しい。基本、その時にその作品を観なければ題材は理解できない。
逆に考えれば、制作年と題材からこちらが主題を決めても良いのだ。
というわけで屋根の上の2人の猫の作品(エッチングと彫刻と2つある)が初出が1985年なので、おれの頭の中では1886年生まれの萩原朔太郎の生誕99年祝いとして作ったのだろうと決まってしまった。
まつくろけの猫が二疋、
なやましいよるの家根のうへで、
ぴんとたてた尻尾のさきから、
糸のやうなみかづきがかすんでゐる。
『おわあ、こんばんは』
『おわあ、こんばんは』
『おぎやあ、おぎやあ、おぎやあ』
『おわああ、ここの家の主人は病気です』
萩原朔太郎の詩作も浜田知明の作品もどちらも劣らず素晴らしい。欲しい。
というわけで、日曜美術館をたまたま見なければ、詩人の萩原朔太郎のように素晴らしい美術家を知ることもできなかった(寡聞にして今日の今日まで浜田知明という名前も作品も知らなかった)わけだし、茅ヶ崎がたかだか1時間30分もあれば到達可能でなければ作品群を見ることもできなかったわけで、実に世の中の巡りあわせはおもしろい。
・茅ヶ崎市民美術館は入れ物も庭園(無暗に広いが、どうも誰かの邸宅跡を利用したらしく外壁のアルコーブや噴水などが残されている)も抜群だった。
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