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日々の破片

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2022-02-11

_ ウエストサイドストーリー

スピルバーグのウエストサイドストーリーを観に渋谷のTOHOシネマズ。

インターネットですでに購入していたのだが、チケット発券機がすごい行列で閉口した。というか、ミュージカルなのにえらく人気あるんだな。いくらスピルバーグでも空いているのかと思った。

いきなりビルの解体現場から始まる。スラム街を潰してオペラハウスや文化施設、超高級タワーマンションの複合施設の神宮の杜再開発計画が明らかにされる。その現場の穴からペンキ缶を持って飛び出してくるところから幕が開く。少しずつジェット団のメンバーが増えてプエルトリコ人街へ殴り込み(といっても落書きのプエルトリコ旗を塗りつぶすだけなわけだが)に行進する冒頭から実にかっこ良い。

カメラは上下に移動する。とうていクレーンでは不可能な動きをしているがドローンを使っているのか、CGを併用しているのかなかなか奇妙でおもしろい。

しかしダンスシーンは俯瞰をほとんど使わないで腰下あたりからの撮影なので抜群。やはり才能ある監督なのだな。

クールは、最初トニーがリフから拳銃を奪って取り返させようと挑発する。リフが奪い返し後半はリフと残りのジェット団(ザ・ジェッツと訳さないのは原典の翻訳への敬意なのだろうか?)とトニーの鬼ごっことなる。オリジナルはバトルの前にリフがクールダウンさせるために歌ったような記憶があるから変更したのかなぁ(とはいえ原典を観たのは半世紀近く前だからわからん)。その他、アメリカの歌はプエルトリカン女性コーラス(というか掛け合いというか)が、アメリカに居つこうとする女性たちに対して故郷へ帰ることを勧めるというかアメリカをくさしまくる男性たち(というか、もともとはアニータとベルナルドの口喧嘩が発端だからそのノリをずっと延長させる)。

チノはスラムから抜け出そうと夜学で会計を学ぶまじめなメガネ男の役回りだが、ジェット団とシャーク団の戦いの塩倉庫にトニーと一緒にシャッターを開けたあたりから変わってくる。眼鏡無しでも拳銃を撃てるということは伊達メガネだったのだろうか?

アニータは原典の原典の僧ジョンと神父と乳母の3役を担う複雑怪奇な役回りだが、うまかった。というか、役者はいずれも良い。トニーの役者は優しそうな良い青年だが、実は切れると何をしでかすかわからない(というか人を殺せる)を好演している。リフは最初から見るからにヤバい奴でこれも良いし、ベルナルドも良いなぁ。チノがイモ臭い眼鏡青年が切れた後はこれまたきれきれのヤバい奴に早変わりして印象的だった。

はるか前に高橋悠司が原典に対して、東欧人の死骸を前に本国人と植民地人が和解の葬列を組み、その後ろを植民地女が引きずられていく見事なまでに20世紀の世界を表現した映画というような嫌味を書いていたが、ラストはまったく同じで、確かにいやこれは妙だなと思わなくもない。マリアは荷物を再び手に取り、この場に見切りをつけて逆方向へ歩き始めて欲しい。

それはそれとして最初にジェット団とシャーク団を知ったのは002(ジェット)からなのだった。

サイボーグ009(1) (石ノ森章太郎デジタル大全)(石ノ森章太郎)

ジプシーキングって、この作品(の原典)から名前(入所前にトニーに潰されたグループがジプシーキング)を取ったのか?

_ 雨に唄えば

ウエストサイドストーリーの後はシアターオーブで雨に唄えば。

なんとなくMGMでジーンケリーだと巴里のアメリカ人(この日本語訳はおもしろい。なぜパリのアメリカ人でも巴里の亜米利加人でもなく、巴里のアメリカ人にしたのだろう? 異国の異邦人ということを強調するためだろうなぁ)のほうが全然好きなので過去に1度観ただけなのでまったく忘れていたことが多い(ザッツエンターテインメントでシングインザレインとかは幾度となく見てはいるが)。

特にドナルドオコーナーのコズモ(ジーンケリーのドンの学友にして途中からピアニストに転じてのちに音楽監督になる)があんなに重要な役(make em laugh)だということは完全に忘れていたが(show must go onか)、確かに3人組の物語だったのだな。

そういえば巴里のアメリカ人でもオスカーレバント(本職のピアニストで、確かルビンシュタインのピアノ協奏曲のレコードを持っていたので、先にそっちを知った)がルームメイトでピアノを弾いていたがコズモほど重要な役回りというわけではなかった。

make em laughを観ていると、スタージェスのサリヴァンの旅を思い浮かべる。

ともあれ素晴らしい舞台体験だった。

終演後、ドン役のアダムクーパーインタビュー。アダムクーパーってリトルダンサーで白鳥の湖を踊っていた人なのか。

シングインザレインのシーンでは段々服が水を吸って重くなる。が、踊りは後半になるにつれて派手になる。特に水を観客席に振りまくためにばんばん蹴り上げるわけだが、これが大変。なるほど。そういう実情を微塵にも感じさせないのは凄い。プロだ。


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