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日々の破片

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2022-04-10

_ アネット

レオスキャラクスの作品ということ以外ほとんど前知識なしに観に行く。

予告編でパルコのスパークス(ラストナイトインソーホーの作家の作品なのか。もちろんスパークスは大好きだし、エドガーライトも良かったので観に行くかも知れない。

始まると、映画が始まるから黙って見てろ。息もするな! とアナウンス。ミキシング室で、あれ? メイル兄弟がいるぞ、とそこまで来てアネットもスパークスの映画だと知った。そうだったのか。で、ミュージカル風に人が少しずつ集まりながらの行進が始まる(そういえばスピルバーグのウエストサイドストーリーでもきちんと押さえていたし、愛と誠もそうだった)。ミュージカルなのか? と思いながら観ていると、アダムドライバーが緑のジャケットを着るところでどうやら本編が始まった。

というか、クレジットでプロデューサーに3人名前が挙がっていて、最後がアダムドライバーだった。

スターウォーズで稼いだ金を投資したのか? それにしてもジャームッシュ(これもだ)の常連でキャラクッスにも出資してまで出る、しかも天下のエンターテインメントのスターウォーズの主役も張るって、アダムドライバーは只者ではなさすぎる。おもしろい人だなぁ。

途中、六本木のディスコ(という設定)で、「どうもおれはモテるみたいだ。イケメン? じゃないよな。でもなんかチャーミングらしい」とか歌うが、そういうことなのだろう。

アドムドライバーはミュージカル大行進の軍勢から分かれてオートバイに乗り疾走する。

その一方、車の後部座席のアン(マリオン・コティヤール。多分初見。so muchの発音がソーモーみたいな妙な音なので英語圏の人ではないのか? と思ったらフランス人だった)は窓にもたれる。ここから長いシーンで夜の光が車の動きに合わせて流れて顔をさまざまに彩る。おお、おれは映画を観ているぞ。

アダムドライバー演じるヘンリーマクヘンリー(この妙な語呂合わせはおもしろい)はスタンダップコメディアンでパンツの上にガウンを羽織った姿でジョークを投げまくる。大しておもしろくない。

全体、この映画の中のジョークで一番おもしろかったのは、「なんてこった。全裸だぞ!」で、ここは爆笑。もう1か所は忘れた。

ジョークの中で、アンと婚約したことを言う。

一方アンは舞台で歌う。

この作品の中の舞台にかかるオペラはおそらくスパークスが作ったものだろうと思うのだが(後幕が開いて荒涼とした森の中をうろつき、また舞台へ戻るシーンはおもしろい)特に前方に突き出した台の上で血まみれで死ぬ舞台はなかなか興味深い。このシーンの直前で、アダムドライバーは劇場の裏口から入り、舞台の袖のモニターの場所まで延々と歩くのだが、この流れも映画だ。

舞台の上のオペラはスパークスかも知れないが、アダムドライバーがバイクで疾走しているときに次々のアンが浮かび上がるシーンは、本物を使っている。特に道路中央に長くうずくまっているときのオテロのアベマリアが印象的だった。

同じ夜にかたほうは舞台で人を笑わせて喝采を受け、かたほうは舞台で死によみがえって喝采を受ける。

何度か芸能ニュースが挟まり、二人の状況を説明する。

妊娠する。アダムドライバーは生まれた子供がピエロの顔で生まれる夢を見る。

子供が生まれる。アネットだ。

アンが不在の夜、ベビーシッティングをしているアダムがアネットの上にシット(メルドのほうではなく座るのほう。そういえばアンの出産シーンではメルドと言っているな)しているというジョークが入る。ここでアネットの足が操り人形の足そのものと良く見えるのでちょっと混乱した。混乱したが、これはジョークシーンなので、アネットが操り人形(というかロボット)なのは、本物の赤ん坊では演技ができないことと、出演者に対する虐待という文句がつく(本物を使ったら大騒ぎだろう)のを回避するためだろう。それにしては、脚はもう少し本物っぽく作れるはずだから、わざと操り人形の可動部を見せることで異化効果を狙ってはいるのだと考える。

アダムはラスベガス公演でブーイングを受けキャンセルされる。

この間、アンの伴奏ピアニストがおれは指揮者になりたいけど、伴奏者なんだという歌をピアノを弾きながら歌う。メイルの兄貴か?

アダムに対する6人の女性の告発が起きる。なぜこのタイミング? アンが心配。

二人とアネットはヨットの旅に出る。嵐が来る。

アネットにアンが乗り移り夜な夜な歌を歌わされる。アダムは歌う赤ん坊ショーを思いついて、我が友指揮者だか我が友伴奏者だかを呼び寄せる(どちらかでえらく違うが、思い出せない)。

アネットは歌うだけではなく外連で空を飛ぶ。(確かに本物の人間を使うのはだめだな)

アダムが遊びに出かけた留守に伴奏者は自分が作ったso muchをアネットに教える。その曲はアンと自分の二人のものだと信じ込んでいたアダムは逆上する。

最後獄中のアダムをアネットが面会に来る。ここでアネットは人間となり、母と父から解放される。いや、母さんは関係ないだろう? とアダムが言う。アネットは答えないが、最後までアダムはなぜアネットが歌うのか理解していなかったのだろう。

元のシーンに戻り映画は終わったから解散。

とてもおもしろかったが、最後の面会のシーケンスはいささか長過ぎると感じた。おそらく、あまりの天才子役っぷりにキャラックスがカットできなかったのだろう。それでも長い。

追記: どこかでブラームスの4番が流れるのだがどこだったかな。


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