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日々の破片

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2024-08-17

_ 化け猫あんずちゃん

家族で化け猫あんずちゃんを観に日比谷TOHO。

僕としてはアニメ側スタッフはまったく知らないが、いましろたかしはタコポン(順序からいけば狩憮麻礼のコンテキストで読んだわけだが)あたりから、妙な絵柄(というのは狩憮麻礼は谷口ジローや松森正のようなやたらと描画能力が高い劇画家と組む印象がやたらと強かったからなので、なんだこれ?と思ったわけだった)の妙な作家というよりも、作家のための作家だろ、この人、という見方をしていたのでむしろそっちに興味が津々(作家のための作家って普通に稼げないから引退したのだと思っていた。最近のらーめん再遊記にでてきた原田みたいな感じ。豚の生姜焼きではなく女の子と猫でポップ化に成功したのかな)。

(怪獣を退治するヒーローになりそこねて新宿をうろつく男が、実は最後の敵が身近な宇宙人だったという(単行本化にあたって無理矢理作ったらしきエピソード)作品がやたらと気に入っているのだが、手元に見つからないし、アマゾンに書影も出てこない。確かデメキングといったような)

で、見始めて、おや父親と娘のパターンなのかとなんとなく電車で神奈川へ行ったりするのでかくしごとを思い出したりしながら見ているし、妙な田舎町に流れ着くので、ちょっとだけ限界集落を思い出したりする。

限界集落(ギリギリ)温泉第一巻(鈴木みそ)

(地方にイオンができたので就職先も生まれて良かったねとは言えないよなぁ。というか、この時代はYoutubeではなくUSTREAMなんだよな)

と、淡々と見ていると、すすーと風景に完全に溶け込んだ日常風景としてあんずちゃんがオートバイに乗って登場してきて、あまりの自然さに笑ってしまった。もう、完全に普通にでっかな顔したでっかなねこがオートバイに乗って普通に出てきて、普通に降りて、普通に立ち去っていく。むちゃくちゃに異化効果だ。

なるほど、これがロトスコープのマジックか(と後になって撮影技法を知る)。

さらに蛙大魔王(鳥獣戯画の蛙っぽい)が出て来るし、蛙大魔王は家出した果林(字が合っているかは知らん)ちゃん(というのが娘のほうで、父親は金策のために娘を田舎の父親(真っ赤になって怒ると後頭部まで赤くなる)に預けて東京に戻っている)が、電車に乗ってそれなりに遠くに行ったのかと思うと工事現場の穴か何かに落ちたところに趣味の地下道作りで出て来るし(近いだろ)、なぜか妖怪の仲間にお地蔵さんがいるしで、解剖台の上になんでもかんでも出合わせたおもしろさに溢れていて実に楽しい。

半世紀近く活動しているが、デメキングのころのいい加減さは変わらずに、最後の収拾の付け方が全然収拾できていなくて(たとえば母親はせっかく楽そうな地獄の掃除婦だったのに、おそらくもっとひどい現場に派遣されるのは間違いなさそうだし、地蔵だけに何か功徳系の技でも使うのかと思ったら、他の妖怪と十把一絡げに鉄棒で叩きのめされるし、貧乏神は地獄に置いてけぼりだし)実に愉快だ。半殺しの可視化には舌を巻いた。

だいたい、あれだけクソ生意気な果林ちゃんが便器の入り口に躊躇いもなく入っていくのも実に良い。なんか日常感覚のままにあらゆるわけのわからない世界が繋がっている感覚にしびれまくる。寺がソーセージだったり町の名前が(忘れた)だったりどうでも良い語呂合わせがばんすか出て来るのも好きだな。

(と考えてみると、この映画作家がロトスコープという人間の動きをアニメ化する手法を選択したのも、この日常の延長ではなく、日常そのものに非日常が組み込まれているいましろたかしの世界にぴったりだと考えたのかも知れない。どう考えたかはともかく完全にはまっている)

良いものを観た。

化け猫あんずちゃん (コミックボンボンコミックス)(いましろたかし)

(コミックボンボン?)


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