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日々の破片

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2003-10-11

_ 歴史から抹消するということ

20年代初頭(10年代末かも)のソ連の映画に、ボルシェビキの国でのウエスト氏の異様な冒険(多分題は不思議の国のアリスのもじりで、ウエスト氏は西側―西洋文明―代表という意味だろう)というのがある。

ボリスバルネットが出演しているというその1点で公開されたと考えれば良いだろう。ちなみに、ボリスバルネットはとっても素晴らしい映画作家で、青い青い海(これは不正確)の耳を押さえて首輪が外れ、宝石がキラキラヒカリながら飛び散るシーン(ゴダールの映画史でも引用されていた)、船の上のシーン(狂った果実じゃないよ)。海辺の小屋とか。は余談。

内容は、革命後のソ連に、いやいやながら、おっかなびっくりやって来たアメリカのビジネスマン(ボリシェビキは人を食らう野蛮人だという妄想で頭の中がいっぱいで、映画的にこの記述方法がおもしろい)が、野蛮なコサックのギャング(=映画的な記憶としては、ツァーリの親衛隊だろう)に襲われるが、勇敢な共産党員(黒い革ジャンのスキンヘッド)のおかげで事なきを得て、ソビエト政府の文化度の高さに得心して帰国するという、読んでのとおりのカスのようなプロパガンダ映画。

で、それはどうでも良い。

この映画が、信じがたいのは、真に驚きなのは、最後に、その勇敢な共産党員が、ウエスト氏に対して、「あなたの認識は誤っている。われわれは野蛮人でもなければ愚かでもない。あなたに、最高のボリシェビキを紹介しよう。彼の知性と勇気がボリシェビキなのだ」と言う(この引用ももちろん不正確)と、突然、舞台がかわり、トロツキーが演説を始めることだ(さらに裏読みするとロシア人ではなくユダヤ人を出すというのも映画的な効果なのかも知れないが)。

それが、20年代初頭(少なくても1917年より後なのは理の当然)の映画だ(排斥が始まったのは24年の党大会じゃなかったっけな)。よく、こんなフィルムが残っていたものだ、それが、驚きの正体である。また、本当に、トロツキーは国家的な主役の1人だったんだ、という確認の驚きでもある。

たとえばも何も、10月革命と言えば、エイゼンシュタインの10月(1928年)だが、この映画では既にトロツキーは日和見主義な発言をしたの一言で片付けられてしまって、ペトログラード革命軍事委員会を率いて冬宮を攻めるのはアントーノフオフセンコ(1938年に粛清)の役回りになっている。10月の実績と手腕を認められて赤軍創設者の役回りを演じた男はどこにいるんだ? そもそも、つい10年程前に、ボリシェビキの代表としてプロパガンダ映画のトリを務めたトロツキーが、ただの臆病者なのか?

これが、ソビエト八分の刑で、映画10月のエピソードを最後に本当に抹消されてしまうことになる。歴史から、党史から、映画から。ちなみに後の二分というのは、息子を暗殺し長女を死に追いやった責任を取って、メキシコまで刺客を放って老後の心配をしなくても良いように生命の面倒をみてやったことだろう。

ここで、永久革命と一国革命のいずれが正しい戦略だったのかとか、レーニンが後継指名したのは誰かとか、10月を指導したのは誰だったのかということは、実際には今となってはどうでも良いことだ。なぜなら、その国そのものが既に抹消されたわけだから。レニングラードという名前も抹消。

で、実際にやろうと思えば、フィルムや紙媒体からだって抹消(無かったことに)できるんだから、磁気媒体から抹消するってことは、コピーが簡単なことの裏返しで、きわめて簡単だろうな。というつまらない感想だったり。

#まあ、ウエスト氏の最後について言及したものを見たことがなかったから、文字通り記録しとくか、ってのはあるが。

追記:(2007/2/12)

十月 [DVD](ワシーリー・ニカンドロフ)

見ている最中、オフセンコのメガネの髭から、ずっとトロツキーのことと勘違いしていた。実にカッコ良く、一人平服で踊るようにして冬宮の中を駆け回って後の赤軍を指揮して行く。オフセンコは、確か、われわれは(トロツキスト粛清に対して見て見ぬふりをした)恥知らずの罪で裁かれるのだ、というような言葉を残して処刑されたはず。

SR(エスエル)の描き方など、いろいろな意味で1928年の視点からの1917年という作品でもある。でも、エイゼンシュテインの技術は素晴らしく、溢れるような高揚感、スピード、爆発力、最高の群集劇となっている。

_ まじっすか?

しばらく受信箱を見もしなかったMLが爆発というか暴発していてびっくり。田村さんが書かれてたのってこれのことですかっ!(と、思わず促音+びっくらまーく)。

_ 抹消続き

国家がその気になれば、歴史を変えることができる。歴史を変えることができるのならば、変えられないものなど何もない。だから、分散が重要なのだ。歴史をトウコ(変換できないし正しい漢字を調べるのも面倒なんで片仮名)の筆に委ねるのではなく、一面的で良いから、遍在させること。

完全な象の情報を中央集権的に管理するのではなく、群盲が撫ぜた象の断片的な情報を、群盲の海に散らばらしておくこと。ピンポイントでは破壊不可能なシステム。

で、そのシステムが既に出来たとして、ここで、真に重要となるのが、その遍在した情報を寄せ集める装置だ。

グーグル八分が、真に脅威なのは、まさにこの点にある。遍在した情報というシステムがあるにもかかわらず、たった一人のトウコに管理されてしまうという危険性。そして、それは確かに、最終的には主観的な機関(企業とか国家とか)に委ねてよいものではない。

OSDの何よりの美点は、配布の差別禁止(5.個人やグループに対する差別の禁止)だ。それがテロリストであろうが、独裁国家であろうが。

結論は、まさに、そういうことだ。オープンな検索サービスが必要なのだ。もちろん配布の差別禁止が単に配布先に対して向けられているのではなく、配布元に対しても向けられていること。たとえ検索の結果得られるものが(ネガティブな例を列挙すれば、それが、主観的な機関から排除されるべき情報であることは明白になる)殺人の方法、武器の製造方法、陰謀の暴露(それが電波であろうがなかろうが)、差別文書、クラック手法、児童ポルノ、少年犯罪者の素性……本当に、そうなのかなぁ? と常識の虫が疼くが、その情報をどう利用するかも自由でなければならないのだ、と頭ごなしに決め付ければ、やはりそうなのだ。

でさぁ、誰がそういうサービスを提供するわけ? となるのは当然なことだ。

それが僕じゃないのは、断言できるが、間違いない。別にそれで恩恵を得られるわけじゃないし、そこまで人類の未来に貢献する気もない。

そもそも、人類の未来に貢献なんて使命感を持って始めたら、絶対に、情報を選別したくなるだろう。杞憂ならば素晴らしい。

いずれにしろわかってることは、少ししかない。人類の1部の国に制限されているとはいえ、既に無数の雑多な情報がHTMLのアンカータグを使って遍在していて、それが、途方もない文化遺産を形成しているってことだ。

たとえば、サービスとして中央集権的に提供するという方法自体を否定してみたらどうだろうか?

たとえばスパイダーセットボックスを個人が普通に持つという状況はどうだろうか? 1TB程度のHDから無数のスパイダーを放つ箱だ。トラフィックが馬鹿にならないよねぇ、とか貧乏性なことをつい考えたり。スパイダー箱同士はP2Pで連携すれば、大丈夫かも。

#結論なんか、出ないのよ。だって、理念的には必要だと思っても、現実にはやる気ないし。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
_ たむら (2003-10-11 22:24)

微妙なリンクの張り方にしてますなぁ(~ ~;<br>それはともかく、やはりデンパな反応だし。<br>最近昔のファイルが出てきて読んだりしたのですが、Gembook 以降のある時点から、明らかにヘンになってますね。<br>最近の言動といい、ちょっと現実世界的に何とか出来る人がいるといいんだけど。<br># そういう意味では「今日会う」という結果に期待してたり。

_ arton (2003-10-12 05:52)

>微妙なリンクの張り方<br>ありゃ、意識的じゃなくて天然ボケかましてました(トピック機能使ってないからわかってなかったという)。が、微妙にこのままにしとくか……


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