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ogijunと渋谷のブックファースト行って、おお、おれの本があるなぁとか団さんの本いい場所占めてんなぁとか思いながら後ろを振り返ると自然科学の本で、また目立つところが動物の本で、そこにさり気なく『動物の値段』という本がある。値段? で、手に取ると帯の惹句が「シャチが一億円! 動物売買の知られざる世界を動物商が初めて明かした。」――それは確かに知らないなぁと、適当に開くとゴリラの話が出ていた。
今、ゴリラの生息数は激減している。
ゴリラの生息地は内戦が頻発しており、難民や武装ゲリラがゴリラを食べたり、仔ゴリラを捕まえるために大人のゴリラを皆殺しにしているというのがその大きな要因。さらに……
嘘くさいような、その一方であり得なくもないような。と、想像したのは、戦いに敗れて山岳根拠地で再起を期す状態(延安状態と呼ぶか)であれば、当然、その根拠地は人里離れてなくてはならないわけで、すると確かにゴリラが棲んでていてもそれほどおかしくはないし、でかさとか料理のしやすさ(腕とか腿とか太いし)とか考えると、なくはなさそうだ。にしても、そういうこた、まったく考えたこともなかっただけに、とりあえず新鮮な情報に刺激を受けた。
で、ちょっとさかのぼるとリスザルを捕獲するために友釣りじゃないけど、小美人で釣るみたいな仕掛けを用意するらしいのだが、その小美人というか囮の雌ザルが無駄になりやすい。というのはフサオマキザルという別のサルがいるからだ。
このサルは、捕獲箱の中のパッションフルーツを食べにきたわけではない。お目当ては囮のリスザルだ。なんとフサオマキザルは囮のリスザルを食べに来たのだ。囮のリスザルは縛ってあるので逃げることができず、簡単に捕まって食い殺されてしまう。
びっくり。シビアな世界というか、なんというか。
なんだかわからないし、どこまで本当なんだか拾い読みでは見当もつかないが、少なくともまったく知らない世界の話だということはわかった。しかも文章はテンポがいいし、興味がない分野というわけでもない。
考えてみたら、飼育員の話は昔、少年ジャンプで西山登志夫のマンガで読んだし、ZOOKEEPERで園長視線も読んでいる。獣医の話はWILD LIFEだ。というように、それなりに動物園を取り巻く世界というのは親しみのあるジャンルなわけだが、そもそもの仕入れ先のことなんて考えたこともなかった。
筆者のどこまで本気なのか良くわからないが、素直に読めば、とても良いことが書いてある序文で、動物園が大好きだった子供ころのことが出てくる。
「動物園はどこからバーバリーシープを連れてくるのだろう?」と素朴な疑問が浮かんだ。インターネットなどない時代だったので、私は全国10ヵ所ほどの動物園に問い合わせの手紙を書いた。今考えれば迷惑な子供だったと思う。そのうち2ヵ所の動物園から返事が届き、「バーバリーシープは動物商から購入する」と書かれていた。金額は書かれていなかったが、動物商という職業があって動物園は動物をそこから買っているんだということがわかってとても嬉しかった。
そして、いつかは動物を買って動物園をやろうと考えた。
ううむ、その発想はなかった。
で、次の段落を読むと、いきなり動物から爬虫類に興味が移ったとか書いてあって、なんじゃこりゃと思うのだが(もっとも小学3年生とか書いてあるから、そんなもんだよな。逆算すると小学2年くらいに、どうやって入手したのか問い合わせたわけで、そういう発想をすべくしてこういう本を書くようになったのだろうなぁとか、いろいろ想像して楽しむおれがいる)、原価計算して、この動物は捕獲するのにいくらかかって、運搬にいくら、維持するのにいくらとか書いてあるので、説得力はいずれにしてもある。その細部の描写が法螺話のようでもあり本当のようでもあり、いずれにしても目新しいことばかりだ。
たとえばラッコ。自然の状態に育てようとすれば、雲丹を食わせたりすることになり、そうすると1日あたりの食費が5万円になるから、動物園ではコストを下げるためにイカを食わせるのだが、それでも5千円になる。なんて書いてある。大喰いだとは聞いていたがイカ5千円というのは相当な分量だ。とりあえずその数字を信用すると、1頭あたりの維持費は、年間、食費だけで180万円か。5頭で900万円ってことは人間1人雇うよりかかるかも知れないなぁとか。確かに動物園ってのは金がかかる施設だわ。
という具合に、読めば読むほど、おもしろいので購入(ogijunも買ったので、少なくともブックファースト渋谷店については店頭に並んでいた分について、本書は絶滅したことになる)。
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