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日々の破片

著作一覧

2008-05-26

_ カスピアン王子の角笛

子供と渋谷で観る。初回に行ったら吹き替え版だった。

10:30開演に対して10:00くらいに行ったらすさまじい混雑っぷりで階段の下まで行列している。が、良く見ると客層がなんか違うっぽい。若者でいっぱいで子供連れがいないし。聞いたらシネセゾンのほうだった。で、松竹のほうはがらがら……と思ったら、最終的には満員になってたけど。

原作とは相当異なる。ピーターの冒険主義。プログラムで監督が言い訳をしているのを読んだが、年齢を嵩上げしているのが全体に影響しているようだ。良くもあり悪くもあり。演技がどこまで可能かとか考えると良い選択だったのかも知れないとは思う。おそらくライオンと魔女よりさらにうまい映画に見えるのはそれがあるのかも知れない。

森が動く、この世の終わりだというマクベス的なところもなし。(最初からマクベスにしようとしたわけじゃないだろうけど、どうオチをつけるか構想しているときに、英国人だから当然の教養として持っているだろうマクベスとの類似性にふと気づいて、にやにやしながら書いたのではないかとかいろいろ想像してみる)

しかし、リーピチープの作り方は、瀬田貞二のある種ドンキホーテのような古風な言い回しを使ったおもしろさはないものの、テンポ良いセリフ回しとそれに見合った素早い動きとあいまって、えらくうまい。というか、小学生のころに読んだナルニアの記憶でいちばん印象に残っているのがリーピチープ(あと、確か魔術師のおいだと思ったが、別れのあたりとか)なのだが、やはりこの物語の白眉シンだな。

映画としてはライオンと魔女より物語をいじくったせいも多分にあるだろうが、さらに良い感じで無駄な説明調もなく観ていて楽しかった。ライオンにはうんざりさせられるが、これはしょうがないだろうな。

カスピアン王子のつのぶえ―ナルニア国ものがたり〈2〉 (岩波少年文庫)(C.S. ルイス)

1960〜1970年代の児童文学ではあたりまえの言い回し(リーピチープのせりふ回しは別)が、日本語がヘタ扱いされるのは興味深い。50年もたたないうちに言葉が変わるということだな。なんてことがわかるのも、インターネットのおかげというものだ。

ライオンと魔女―ナルニア国ものがたり〈1〉 (岩波少年文庫)(C.S.ルイス)

_ 軽量

ジェネレーティブプログラミングの6章を読んでいて、おもしろい記述にであった。

その一方で、閉じていない多態は本質的に軽量です。インターフェイスに関する情報は、キーボードから入力する必要も、コピー&ペーストする必要もありません。ともあれ、それは実装されたコードの中に暗黙のうちに表現されています。それに加えて、型チェックを「怠惰(lazy)」に行います。C++のテンプレート(つまり、閉じていないパラメータによる多態)の場合、型チェックはテンプレートをインスタンス化するときにはじめて行われます。Smalltalkのような閉じていない多態の場合には……(後略)

―P.173

この引用の冒頭に出てくる「軽量」は「lightweight」だろうことと、この本の出版年が2000年ということを考えると、lightweight languageという言葉の出所のひとつとして多態の分類からの観点というものもあるのだろう、と思った。

ジェネレーティブプログラミング (IT Architects’Archive CLASSIC MODER)(クシシュトフ・チャルネッキ)

で、もしそうだとすると、少なくともこの本の定義上、lightweight languageというのは「閉じていない多態」を実装した言語ということになる。「閉じていない多態(unbounded polymorphism)」は、上記引用のように「閉じていないパラメータ多態(または制約されない総称性)―unbounded parametric polymorphism / unconstrained genericity」とは明確に区別されているけれど、元の書き方から「軽量」とは、閉じているかどうかによる区別と読めるので、どちらもlightweightと読める。

まあ、それだけだけど、C++も使い方ということでした。

この本の後書きについての言及をNyaRuRuさんがされていたが、当初予定していた出版社からキャンセルされたところを翔泳社の古田島さん(コンピュータ関連本の人なのかな)に救ってもらったとか書いてある。厚いし値段も内容も高いけど、参考文献リストだけで30ページある本が、日本語化されている点にも価値があると思う。

リストはほとんどC++で、ごくまれにSmalltalkも使われている(閉じていない多態の例は、C++では書けないからだろう。それ以外はC++で書ける)。Javaもちょっとあるけど。

インテンショナルプログラミングをインデンショナルプログラミングと空目して、どうしてここでPythonが出てくるのかと不思議に思ったり(出てこない)。

とにかく実装技術のところを読むのがおもしろい。もっとも、「見果てぬ夢」の可能性もあるわけだが。


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