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知らなかったのはおれだけだが、誰も寝てはならぬはオリンピックで効果的に利用されたらしい。
実際プッチーニの曲はどれもすばらしいからそれは良いのだが、あの歌詞の内容を考えるとまったく釈然としない。
あのおとぼけ王子は北京のどこかの民家の屋根の上によじ上って星を眺めているわけだ。
すると役人の触れが聞こえてくる。「誰も寝てはならぬ」
トゥーランドットが命令したからだ。カラフの名前を明日の夜明けまでに調べられなかったら、北京市民を全員、死刑にする、と。
すると人々の悲嘆の歌が聞こえてくる。明日の夜明けを見ることなくわれらは死ぬのだ、と。
ところが、カラフは妙に都合の良いとこだけしか聞いていない。
で、「誰も寝てはならぬ」と復唱し、そしてそのまま「私は勝利する。勝利する」とつぶやく(が、歌だから朗々と歌い上げる)。
いや、お前の勝利は北京市民に対する虐殺の上に成立するのだが。その無情っぷりは鬼六さんか?
しかし、カラフは耳をいっさい貸さない。
結局、すべての市民の身代わりのように、リュウが自殺する。
予定調和的に、カラフは夜明け前に自身の名を告げる。(自身の名を夜明け前に告げるつもりだったから、市民の嘆きを無視していた、と読み取ることもできなくはないが、あの歌の皮肉な調子に聞こえる歌詞からは、そう受け取るのは難しいように思う)。
Turandot: Dramma Lirico in Tre Atti E Cinque Quadri (Ricordi Opera Full Scores)(Puccini, Giacomo)
スコアはおもしろかった。しかし、ところどころ弾いてみるとやはり違和感がある。スコアから音を拾っていると、ときどき感じるのだが、ピアノの調性と弦の調性にはずれがあるように思う。
プッチーニ:トゥーランドット 全曲(デバルディ(レナータ))
最近はこればかり聴いている。デル・モナコが歌えばそれは素晴らしかろうと思ってはいたが、想像を上回るおもしろさ。しかし、なんといっても、この演奏が素晴らしいのは、テバルディがリュウを歌っていることだ。いや、もうテバルディのリュウは別格だ。
テバルディで聴くと、プッチーニが先を仕上げる気が消えうせたのがわかるように思う。
空耳アワー。26でリュウが「Lasciate-mi pas-sare! Laseiate-mi pas-sare!」と歌うところが「しゃべりなさーれ、しゃべりなさーれ」に聞こえる(ものだから、最初、このパートはトゥーランドットだと思った)。
特にテバルディ(たぶん、オーケストラも良いのだと思うが)が24のLentoのところで、Tanto amore、regretoと歌うところのソロヴァイオリンとからむところの美しさ。
このすぐ後から(ここまではソプラノとソロヴァイオリンを生かすため、低音はヴィオラが受け持つ)チェロも加わり、音の厚みを少しずつ増しながらクレッシェンドして木管が一斉に入る、ここの部分は何度聴いてもすばらしい。
追記:これ、すげぇや。5音音階で作って、ここぞというところで西洋音楽に変えるのか。懐かしいミが最後に出てくるパターンを使って、ここぞというところでミを引っ張って(ここがだからなんともやり切れなく美しく響き、リュウの運命の過酷さを強調する)そしてシフラットで柔らかさを出す。
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