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買った記憶はないのだが、本棚を整理していたら、1巻だけ出てきたので読んだ。古本屋で買ったらしく、裏表紙に150と鉛筆で書いてあるが、ものは昭和50年の8刷。
デューン砂の惑星 (1) (ハヤカワ文庫 SF (76))(フランク・ハーバート)
まあ、1965年の作品ではある。しかし、魅力的な作品でもあって、続きが読みたいがどうにもならんなぁ。
設定は単純で、世界は3つの勢力から成立している。皇帝、豪族、宇宙商人ギルド。豪族は家ごとに分かれて団結したり憎みあったりしていて、主人公のポール君が所属するアトレイデ公爵と、ハルコンネン男爵のところは長い因縁からいつでもお互いを滅亡させようとしている。さらに皇帝も権力を保つために豪族のどちらかに加担して勢力バランスを取ることに汲々としているらしい(が、1巻だけではなんともわからないけど)。で、それとは別に化外の民がいて、領地替えでアトレイデ家が向かった砂の惑星アラキスにはフレーメンという部族が住みついている。勢力バランスを取るには、アトレイデ家はフレーメンを味方につける必要があり、そのために公爵は算段する。
さらに古い文化の担い手として特殊能力を持ったメンタートだのベネゲセリットだのがいる。
賢く治世の要諦を若くして心得たポール君は(まだ生きているけど次巻以降で殺されることが明らかにされている)親父のレト公爵の跡を継いで、無事ハルコンネンを滅ぼして、皇帝の風上に立って世界に平和をもたらすことができるやいなや、という感じ。
翻訳の文章は練達、用語はその世界を描写するに適切、確かに傑作に違いない。1965年ということはまだ公民権が確率していない(キング牧師が暗殺されたのが1968年)ということは、褐色の肌の連中(アトレイデはオリーブ色の肌ということは、アラブあたりということだ)とか、女性とかは、アメリカではパワーマイノリティなのだから、独自文化を持たせて現実とは異なるパワーバランスを世界にもたらすためにいろいろ小説的な工夫が必要だったのだろう。
さて、どうなんだろうか。皇帝と豪族と商人が陰謀をめぐらして争い、そこに化外の民がからんで政策中心の歴史を物語るというのだったら、別に砂の惑星の続きを読む必要もないようにも思う。
たとえば正親町天皇と細川家といった皇帝一派と、織田家、武田家、足利家、朝倉家、浅井家といった豪族群、堺の商人軍団、化外の民としての浄土宗徒や漂泊民が、裏切ったり協力したりしながら歴史を回し、そこに陰のように入り込むイエズス会の神父たち、若き武田勝頼に明日はあるのか? とか、化外の民の首長楠正成を味方に得た後醍醐天皇の陰謀を阻止するために立ち上がった源氏の頭領足利尊氏の前に立ちはだかるは、北条の遺児忘れた丸、我こそは頭領たらんと無い知恵を絞る役立たずの新田義貞、獅子身中の虫として密かに勢力を伸ばす高兄弟、その血で血を洗い、陰謀に次ぐ陰謀、逆転に次ぐ逆転の中を絶妙なバランス感覚で我が道を往く婆沙羅大名佐々木道誉、さらには怪しの呪術で宮中に影響力を駆使する真言立川教の魔導師たち、とか日本の歴史のほうがよっぽど濃くておもしろいかも知れない。
しかしページ数は薄い。
ジェズイットを見習え |
確かにブックオフオンラインあたりにもないですねえ。<br>4分冊された「砂の惑星」と続く「砂漠の救世主」までが、デューンシリーズの面白いところだと思っています。<br>その後息子までが続編を書くにいたっては「いい加減にしろ!」というしかなく。<br>#記憶では「ハルコンネン家」だったかなあ?
ハルコンネンですね。
と、そう書いていたのか。ありがとうございます。