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子供が岩波読者が選ぶ岩波文庫100というプリントを学校から持って帰ってきて、どれを読もうかなぁとか言っているので(デイヴィッド・コパフィールドを読んでいたのはこの文脈だったわけだな)、どれどれおれにも見せてみろとチェックしていくと、まったく見知らぬ本が62位にあった。
知らないなぁと、アマゾンチェックを入れると、イギリスの田園地方に隠遁して読書三昧の日々を送る読書人の架空の自伝らしい。
で、アマゾン評でも評価が高い。共感の嵐である。
読書人というのは本当に根っからの読書人だなぁと感じたのだが、その感じはどちらかというと嫌な感じだ。作者の生涯について書いてあるアマゾン評を読んで、その思いは強くなる。
ただ、読者に選ばせた=一家言ある読者が投票したというわけだろうからか、なかなかうまくできていて、確かにこれは教養というものであるなぁと100冊を眺めて思う。
大体自分の読書の記憶と照らし合わせて、へーあれがこんなに高位なのかとか、やっぱり読んでおけば良かったなぁとか、眺めていると楽しい。
1位はこころ、2位坊っちゃんというのは、実に妥当だと思うし(とはいえ、こころは読んだことないし読む気も無いわけだが)、13位が寺田寅彦、35位が北越雪譜、52位がプロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神、74位が方法序説で100位がガリア戦記といったところも興味深いが、何よりへーと妙だなと感じたのが7位。
そんなに高位なら、これは読んでみたいと思った。というか、読む。
(あえて3位の銀の匙と5位の君たちはどう生きるかは見なかったことにしたくもあるが、蛇蝎のごとく嫌う必要は別にないんだけど、読む必要はなかったよなと今になって思うわけだから(と思ったが吉野とは今となっては折り合いがつきそうにも思う)、上位だからどうこうってことはないんだけど、みんなの意見はそれほど大きくは外れない原則に80:20ルールで従っているようには思う)
というよりも着目すべきは、岩波のページには得票数が出ているが、1位のこころは1600票、2位の坊っちゃんが1282票、3位の銀のお匙(やはり嫌いなんだ、おれは)が906票……この数字ってまさに集合知じゃないか? 4位以下の数値は出ていないが、集合知原則にしたがえば、4〜6位が200票より下、7位以下は30票以下で、100位より下には1票獲得した本がずらずらずら並んでいるんだろう。96位のだんごが3票で100位のカエサルが2票とかかも。つまり、みんながお勧めなのは夏目漱石と中勘助ということだ。あとは、みんなではない。
そこで親密さという尺度が生きてくるんだよな、と考えは続く。誰々が選んだ100冊というやつがあり、その誰々と自分の嗜好が一致しているかまたは完全に不一致していれば、そのランキングのほうが、みんなのランキングより意味がある。
逆に、10位より下はばらけているからこそ、濫読するにふさわしい90冊と言えるのだろう。まったく異なる方向の本がばらばらに出てきてるわけだし。
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