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なんと驚いたことに、おれは、困りますファインマンさんの、スペースシャトルのところを読んでなかった。
困ります、ファインマンさん (岩波現代文庫)(R.P. ファインマン)
日本のひなびた温泉宿や、ジュネーブの安宿とかは確かに読み返しているという意識があるのだが、O型リングのやつは、全く記憶に無い。どうも分量に気後れして後回しと思ってそのまま忘れてたようだ。
おもしろい。
最初は推理小説のようである。それもヒントがたくさんの。
ところが実はこれはカフカの城のような不条理な官僚社会のカリカチュア(いや実話のはずだ)であった。
重要な示唆がたくさん。ファインマンは、この時、それまでに積んできた人生経験のおかげで、幾つもの危機を脱して目的完遂のためにまいしんできる。たとえば、あえてくだらない書きつけの捜索依頼を無視するとか。あと、味方を嗅ぎ分ける嗅覚。
組織というものが持つ防衛力について考えるに、異人がいかに重要かということと、本人は組織に呑み込まれるとしても、安全弁として異人を導入しておくことの重要性とか。
余りに面白いので味わいながら、やっと全体の半分くらい。
それにしても、アメリカの技術者/科学者の一部とそれ以外との人生観の差は、日本の理系/文系の差より遥かに大きな断絶があるようにみえる。みえるという意味だと、日本の文系には極めて理系的な人間が含まれるが、アメリカの理系には極めて文系(政治的な駆け引きと調整力の発揮にどうやら興味も真価もあるという意味)な人間が含まれるようだ。おそらくどちらが権力を持ちやすいかの差に基づく選択なのだろう。
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