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モラージュ菖蒲でライオンキングを観た。3D吹き替えのやつ。事前にチケットシステムで予約をしたのだが、まったく席がふさがっていないというか、ここまでがらがらなこともあるのかと驚くほどで、実際に開場しても土曜の昼というのにがらがらだった。ディズニーとは言え、旧作についてはこんなものなのか。
映画そのものは、以前、DVDを借りて観たことはあるのだが、シネコンの小さなスクリーン(iMAX-3Dではない)であっても、やはり映画館で観るのはちょっとどころかずいぶんと違う。音の違いが特に大きい。
冒頭、シンバの誕生を祝って動物が駆けつけるところで聴こえるネズミの足音。音も良いが、ちょっと驚くほど3D化がうまく行っていて、不自然ではなく奥行が表現されていて不思議なものだ。時期的に元のフィルムはフルアニメーション+CGなのだと思うのだが、フルアニメーションの箇所はどう加工するのだろうか。というようなところを気にするのは最初のあたりで、映画が始まれればそういうことはわりとどうでも良くなる。
とはいっても内容自体はなんともアラが多い(ツッコミどころが多過ぎる)のだが、そのツッコミどころを逆用してヴァリエーション(ミーアキャットとイボイノシシを主役にしたハクマナタタのこと)を作ったりできるのだから、それは計算の範囲内なのかも知れない。
ライオン・キング ブルーレイ・トリロジーセット (期間限定) [Blu-ray](ディズニー)
(全部入りはブルーレイのみ。おそらく、自ら追放された正統派の回帰劇、社会的に追放された傍流の正統性獲得劇、非社会人の社会参画劇という、社会に対する3つの立場から同じ世界を子供が楽しめる娯楽作品として書き分けるというのは、特に2番目の存在から、他に例をみない試みのような気がする)
ライオンキングはもちろんお子様向けなのだが、ディズニーのアニメの中でも異様なほどエロティックなラブシーンが展開されて(たとえば、同時期のアラジンもホールニューワールドの見事な音楽の中でマジックカーペットのワールドツアーデートとかあるわけだが、それを観てもまったくエロティックな雰囲気を感じないわけだ。ムードはあるにしても。ところが、ライオンキングの今夜はちょっとぞくぞくしない? (意訳)はちょっと異質で、それはひとえに猫族特有の首筋の美しさが理由なのだと思うのだが異様だ。当然、バランスはあまり良くない。その直後に老師による「否」攻撃による自己発見だのがあったり、そのラブシーンの合間にミーアキャットとイボイノシシの冷徹な批評が入ったりするわけで。
イボイノシシが実は非常な賢者で(星についての的確な推測とか)ミーアキャットが本当に何も考えていないという設定の妙とか(ハクナマタタではこの設定が極限まで追求されていて、あの愉快な雌ライオンの訴えを2人がそれぞれ別個に解釈するシーンになる)、スカーのナチス風演説が、スラムに住む工場労働者とブルジョアの融合政策(国家社会主義というのは政治的にはそういうものだ)であるとか、細かく練られた脚本も悪くない。
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