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日々の破片

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2011-10-23

_ 劇団四季のキャッツ

横浜へキャッツを観に行った。生涯はじめての劇団四季だ。

もちろん、浅利慶太というのは何よりも自民党マーケティングのブレインだし、有名なところだと中曽根-レーガン檜原村会談のちゃんちゃんこ演出家なわけで、30年前ならそんなやつの劇団に金を落とすことなんてありえないわけだが、もう自民党というのはかすのようなデマゴーグ野党になりきっているからどうでもいいやんというわけで、自己規制を解除して観に行った。

で、劇場の雰囲気づくりも良ければ、役者も良く練り込まれていて観ていておもしろく約2時間半の楽しいひと時を過ごせたのであった。日本語化についてはいろいろ思うところもあるが、映画ですら吹き替え版がロードショーにかかるご時勢だからそういうものだろうと思うし、舞台には不満はない。ただ、ミスターミストフェリーズがそれは出ずっぱりで歌いまくりの踊りまくり(しかもバレエ並にくるくる回った後に跳びながら回る)で疲れているとは思うがカーテンコールでいちいち顔をしかめて出てくるのはあまり良い気分ではなかった。それともそういうマジックという演出なのかも知れないけど。

それよりも興味深かったのはプログラムで、冒頭に8000回公演(30年)というのを題材に浅利慶太が、おれさまがミュージカルを日本でビジネスとして成立させたのだ! という自慢話を書いている。

普通は自慢話なんかに興味はないのだが、現実にミュージカルをビジネスに乗せて、常設劇場を持って運営している(唐十郎の太鼓橋ですらパルコ文化が消えたら良くわからないことになったわけだし)、つまり自慢も何も本当にビジネスとして成立させたのだから、その話は傾聴に値する。

ぱっと思い出してみても、寺山修司は家出小僧を集めて仕事を世話してその一方で劇団員をさせていたわけだし(自前の小屋は持っていたがおそらく自分の印税などを投資していたはず)、唐十郎の場合はテントを使うことで入れ物の問題は解決してはいたけれど役者には給料を出していたはずだが恒久的なものとはならず結局根津甚八も小林薫も外に出て役者としてやっていっているわけだし、そもそも季節興業で常設興業ができていたわけではない。(浅利慶太の自慢話を読むと最初の時点ではテントを使えば……というのがあるので、そのあたりは唐十郎という先駆者がいたからだろうけど)

で、とっかかりで重要だったのは次のあたりのようだ。

1) 海外で成功した(かつ日本でも受け入れやすそうな)やつを安価に興行権を入手

キャッツの大当たりを観て、日本でも当たると踏んで(これは正しいと思う。というのはこの作品はTSエリオットの詩が元ネタで、1) 元が詩なので個々のエピソードは細切れでかつ比較的抽象度が高いため文化的背景などが共通でなくとも成立可能 2)実際に荒地とか読んでいなくてもTSエリオット原作と言えば「ほーそれは良いもので」とまでは言える程度に知名度と文化的な雰囲気があることが理解できる程度に知名度があるからだ)、しかもロイドウェーバや演出家と知り合いなのでおれにやらせて、ああいいよという調子で興行権を確保できた。これがジーザスクライストスーパースターやロッキーホラーショーとは違うところだ。

2) カルチャーという不思議なものに金を出す雰囲気が社会に蔓延していた時宜をうまくとらえた

パルコの唐十郎もそうだが、バブルに入っていたのはありそうだ。が、浅利慶太が見事なのは、テレビ局とタイアップし、かつ、CMをがんがん流させたところにある。しかも運営委員をこしらえてテレビ局を委員の1 of themに抑え込んだところ。まあ、自民党マーケティング担当だけのことはあるが、それはやはり頭を使う人というのはきっちりと使いどころと使い方を知っているのだなぁと感心する。

3) 地方の扱い方

……(面倒なので省略)

と、さすがに老境なのか自慢話だし、しかし老獪な男のことだから手の内をすべて見せているわけはありえないのだが、にもかかわらず(ただし、上で挙げた2は今は異なるので、マネはできないだろうと踏んで手の内を見せたのかも知れないけど)読んでいてえらくおもしろい。

いや、すげぇやつだ。(もちろん、最も重要な点は、現実にショーとして見事にできている点を外してはいけない。元ネタがどれだけ良くてもダメな演出、ダメな舞台というのはあり得るのだが、少なくとも今日見た限りは良い演出、良い舞台、確かにこれは体験する価値があるまともなミュージカルで、心から楽しめる)

ところで、1)のロイドウェーバが友達というのは結構おもしろくて、ショービズの世界でもイギリスあたりではそういうコネクションで興行権を確保するとかできるのか、とちょっぴり疑問ではあるけれどとりあえず額面通りに読む(まだエビータ、ファントムとさらにヒットを飛ばしまくる前というのもあるだろうけど)。と同時に、やはり持っておくべきものは同じ専門家の仲間であり、付き合いであるなぁと思う。ああいう世界でも演劇祭とかは一種のカンファレンス兼勉強会みたいなものなのだろう。で、そういうところには手弁当でも出かける意味も意義もあるってことなのだろうな、いずこも同じであるなと感じたのだった。

(もっともこんな本がすでに存在した後だから書きやすいというのはあるのかも)

劇団四季と浅利慶太 (文春新書)(松崎 哲久)

が、本人が書いた自慢話のほうが賛美本よりおもしろいよね。

ミストフェリーズは本物のほうが好きだ。ウェーバ版だと役に立つ重要なネコだけど、エリオットのやつでは単なる気まぐれな手品師(なのでへそ曲がりのランタムタガーと仲が良いのだろう)で、上から下まで黒くてかわいい。

キャッツ―ポッサムおじさんの猫とつき合う法 (ちくま文庫)(T.S. エリオット/ニコラス ベントリー/Thomas Stearns Eliot/池田 雅之)

本日のツッコミ(全4件) [ツッコミを入れる]
_ はら (2011-10-24 06:58)

そういえば、ボク、中学生の時、映画「ジーザス・クライスト・スーパースター」にはまって、とうとう四季の「ジーザス~」まで見に行ってしまった。のを思い出しました。四季をみたのはそれが最初で最後だった。

_ arton (2011-10-24 12:53)

そりゃまたかっこいい中学生ですね。で、どうでした?

_ はら (2011-10-27 08:52)

いやー、覚えてないけど、ロックオペラを日本語にするのは、難しかったんじゃないかなー

_ arton (2011-10-29 22:42)

あー、当時だしそれはありそうですね。


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