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byflowで、「言語の天才がトルコの知られざる側面を冒険するわくわくする本」みたいに書評されていたので、手に取った。
確かに、その通りだった。いやー、こんなにおもしろい本はなかなかない。筆者はすごいやつだ。ゴム草履を履いてどこにでも歩いて行って、そこの集落の人といつのまにか、その人たちの言葉で会話をして(自分からのお土産として)世界について教えてあげたり、(その集落の人たちからのお土産として)その集落の人たちが住む世界のことを教わったり。
で、なぜ突然、20年前に上梓された本を手に取ったかと言えば、今になって存在を知ったからだというのはあるけれど、元々トルコについては偏った知識しか持っていない(くせに|ゆえに)、興味だけはあったからだ。
・オスマントルコという強大な帝国を作っていた(お鍋軍団のころとか)
・月と星
・インスタンブール
・日露戦争だの紀州沖での船の遭難とかのおかげで親日らしい
その一方で、突然、ギュネイの映画が来てクルド民族問題というのを知らされたり。
映画チラシ 「路」監督 ユルマズ・ギュネイ 出演 タルック・アカン、シェリフ・セゼル(-)
(映画そのものは商品としては存在しないみたいだな)
路は、あまり記憶にないのだが(列車の中でいろいろあったことはかろうじて覚えているが)、淡々と少数民族であることが人生を辛くしているみたいな静かに訴えるタイプの映画だった。で、まあそういう問題があるのだなということは知っていて、それが湾岸戦争のころはイラクのクルド民族問題みたいな取り上げ方をされていて、はてトルコの間違いじゃないのかとか不思議に思ったりしたりした。
・監獄事情はひどいもののようだと、ミッドナイトエクスプレスを観て思ったり(足の裏を棍棒で殴りつける拷問とか生々しくて未だに忘れられない)
ミッドナイト・エクスプレス [DVD](ブラッド・デイビス)
(この映画は、しかしひどいもので、自分が違法行為をしたせいでその国の囚人となったくせに、おれはこんなひどい目にあったと喚きたてているわけで、(思想犯とかならともかく、いくらたかだかハシシといったって麻薬といえば麻薬なわけだし(さらに空港が当時の世界情勢から厳戒態勢にあるのは明らかなのに、見るからに疑われてもしょうがない間抜けな運搬方法を取ろうとするなど、無知もはなはだしい)、しかも最後までおれは悪くないと尊大な態度を取り続けている――逆に言えば、ハシシあたりはヘロインなんかと比べて欧米ではまったく普通の嗜好品程度の感覚なんだなというのが良くわかるけど)、いずれにしてもコンテキストが気分が良いものではないのであまり同調的な観方はできない)
と、あまりにも断片的なわけだ。
で、そのあたりの事情があーなるほど、やっぱりそうなのかと(特にギュネイの映画から仕入れた知識や、ミッドナイトエクスプレスから仕入れた監獄事情と照らし合わせて)納得したりするのだが、実はそんなことは本書を読んで得られるもののごく一部でしかない。
とにかく、日本の名著100選には必ず上位に入るレベル。こういう日本人が存在するということを知っただけで、なんとなくハッピーになれるレベルの本だ。
それにしても、ルワンダ中央銀行総裁日記を読んだときも感じたが、中公新書は実に良い仕事をしている。この出版社と書籍群を救済したのがナベツネなんだなと考えると、いろいろ複雑な思いとなるなぁ。
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