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プロコフィエフのシンデレラはパリオペラ座のヌレエフ版はみたことがあるが、あれは舞台をハリウッドに移して、妖精の代わりにボマージャケットのプロデューサ(多分、RKOのヒューズを念頭に置いたんじゃないかな)がシンデレラをセレブにするという話に変えていたから、そういう意味じゃペローのおとぎ話そのもののシンデレラのバレエとしては初見。
で、相変わらずの舞台装置のうまさもあって、これはこれで実に良い雰囲気だった。
1幕の家の中は、全体が中心に向かって湾曲した空間で、左に炉端がある。母親役が極端に背が高いゲストなので、姉妹もシンデレラも子供に見える。シンデレラはまるで、レミゼラブルの(子供時代の)コゼットみたいだ。が、妖精が出て来ると、中途半端な外界への通路だった奥の壁が開放されて(ちょっと、往年の紅テントの終幕を思わせる)、雰囲気が一変。馬車を牽く馬が地デジカ4人組(これが見事に足並みが揃った良い運転をする)とかちょっと不思議なところはあるが、最後ばっさりと室内が消え去ってゴージャスな馬車が出てきてびっくり仰天する。
3幕の最後では、暗いお城へ入っていくところで、流れ星が一閃尾を引いて、あまりの紋切り型に場内から失笑が漏れて、追い打ちをかけるようにキラキラが降ってくる。が、おれも思わず笑ってしまったが、それも含めて良いおとぎ話っぽい。
熊川哲也はカーテンコールにスーツで出てきた(つまり、若手公演ということなのだろうが、舞台には熊川哲也は出ていない。ところがすっかりそれを忘れていたうえに王子役が髪型を合わせている(し、当然だが振り付けは熊川哲也スタイル)ので、なんか脚が延びたみたいで、そのせいで躍動感がなくなったのかなというか、妙だなぁ、と実に不思議だった。で、幕間に子供になんかそっくりさんみたいで変だなといったら、全然似てないと言われてますます混乱したのだった(というか、同じ人だと思っていたわけだし)。あとでオペラグラスで見ると、確かに別人も良いところで遙かにいい男だった。舞台の上を裸眼で見るといかに髪型と振り付けだけで判断しているのか、ということだなぁ)
席はオーチャードホールの2階の最前列だったのだが、通路が舞台側にある普通の劇場とは違う作りなので、えらく広々して見やすかった。
オーケストラもそれなりで、1幕の前奏はうまかった。ロメオとジュリエットもそうだが、ずっと不協和音できて、いきなり解決するところが実に美しい。不思議な作曲家だな。
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